「本系図」巻頭 *画像はWikiより






◆ 丹後の原像
【85.古代海部氏の系図 ~6】






6回目の記事にして
未だ本題の「系図」に進められていませんが…

もうしばらく…前菜を…。


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■ 丹後の古墳文化と古社 2

前回の記事にて、加佐郡・與謝郡・丹波郡の古墳等を取り上げました。今回は残る竹野郡と熊野郡を。



◎竹野郡の古墳等

*ニゴレ古墳
竹野郡の南端、京丹後市弥栄町鳥取の古墳。
全長20mの不整形墳(円墳か)、埴輪列有り、海人族のものに多くみられる船形木棺、5世紀中葉

注目されるのは3点。
一つ目は船形埴輪。全長約80cmのものですが、実物換算すると数10mの規模。60人乗りとも言われます。
二つ目はほぼ完全形で出土した鉄製甲冑。丹後ではもっとも早い時期に朝鮮半島から導入された金工技術のもの。
三つ目は近接する「遠處遺跡(おんじょいせき)」。製鉄工房を始めとし、木炭窯や須恵器窯なども発見されており、一大コンビナート的な遺跡。

「日本海三大古墳」の一。全長190mの巨大前方後円墳。竪穴式石室。船を漕ぐ人物を描いた線刻の施された埴輪片等が出土。4世紀末~5世紀初頭。

海外交易の中心であった「竹野湖」等のラグーンに横向きに面して築造され、権勢誇示もなされたと思われます。

麓には式内大社 竹野神社・齋宮神社が鎮座。所縁の竹野媛神明山古墳の被葬者ではないかとも。他に初代「丹後国王」とされる由碁理、三代目国王とされる彦坐王、四代目国王とされる丹波道主王などが候補に上がっています。
*黒部銚子山古墳
全長105mの前方後円墳。丹後では「日本海三大古墳」に次ぐ規模。竹野郡南端、京丹後市弥栄町黒部に築かれています。

埴輪列が確認されているも未調査のため埋葬施設は不明、出土品も無し。4世紀末~5世紀初頭。

被葬者は丹波道主王との伝承があるようです。

*産土山古墳
径54mの巨大円墳。「竹野川」河口に築かれています。組合せ式の長持型石棺。
変形四獣鏡、埴製枕、環頭刀子、直刀、ヒスイ・メノウ勾玉等が出土。5世紀中葉。

いわゆる「王者の棺」とされる長持型石棺が発見されたのが出色。「丹後王国」の最後の巨大古墳としても知られます。

産土山古墳 *画像はWikiより


*網野銚子山古墳
全長201mの巨大前方後円墳。周濠有り。「日本海三大古墳」の一であり、日本海最大規模。

丹後型円筒埴輪片が見つかっています。未調査であるため埋葬施設は不明、出土品も無し。4世紀末~5世紀初頭。

神明山古墳と同様に、交易の盛んな浅茂川湖というラグーンに横向きに面して築造され、権勢誇示がなされていたと思われます。

大和国添下郡の日葉酢媛陵(佐紀陵山古墳)と相似形であるとのこと。


被葬者は彦坐王や子の丹波道主王の伝承があるようです。彦坐王(日子坐王)の墓は美濃国の日子坐命御墓とされますが…。

網野銚子山古墳 *画像はWikiより



◎熊野郡の古墳等

この項は本書を無視して、自身が取り上げるべきと思う古墳等を記していくことにします。

*大明神古墳群
久美浜湾内に突き出た半島(大明神岬)の先端に築かれた古墳群。「甲山」(兜山)とともに熊野郡内の信仰の対象となっていた地のようです。

ほぼ未調査の状態。11基の古墳があるとされ、ほとんどが小規模ながら、前方後円墳も存在し、横穴式石室のものも。築造年代はばらばらのようです。うち1基は丹波道主王の古墳と伝わります。

「甲山」(兜山)山頂から大明神岬を(写真の右半分)。


久美浜町橋爪の小山の山頂に築かれた古墳群。全6基とのこと。調査はまったくなされていないようで、詳細は不明。

うち1基が丹波道主王の墓と伝わります。陵神社が鎮座し、丹波道主王が祀られています。個人的には海部直の墓ではないかとも考えています。

久美浜町芦原に築かれた古墳。付近は丹波道主王とその妃、川上摩須郎女の居住地とされ、川上摩須郎女が被葬者ではないかと考えられています。

全長50mほどの前方後円墳。現在は後円部のみが残存し、墳丘頂に芦高神社が鎮座します。



*愛宕山古墳
久美浜町大向の久美浜湾に小さく突き出た半島に築かれた古墳。完全消滅とのこと。船形石棺が出土しています。

*権現山古墳
久美浜町品田(ほんで)に築かれた古墳。Google Mapには記載されていません。熊野若宮三社神社の南東200mほどの丘陵地内。

一辺45~50mの方墳。出雲の四隅突出墳(方形台状墓)に近い墳形とされていましたが、その後の調査で方墳となりました。古墳時代前期後半(4世紀初頭~中葉)とみられます。




今回はここまで。

次回は但馬国の古墳等を紹介し
次々回からいよいよとメインディッシュへと…。


*誤字・脱字・誤記等無きよう努めますが、もし発見されました際はご指摘頂けますとさいわいです。