◆ 大和国の山口社



大和国には3種の特徴的な神社があります。

「御縣社」「水分社」そして「山口社」。全国的にもあるものの特に大和国には多く点在。朝廷により計画的に造られた式内大社であり、祈年祭により祈りが捧げられていました。

「山口社」とは、皇居など舎殿造営のための用材を伐り出す山に坐す神霊を祀る社のこと。通常「山の口」に鎮座しています。

山口社は大和国内に14社、いずれも式内大社で幣帛は祈年 月次 新嘗。延喜式 祈年祭祝詞で称えられる6社と、別に8社がありました。「六所山口神社」や「十四所山口神社」などとも言われています。

延書式祝詞の祈年祭・月次祭に、「山口に坐す皇神等の前に白さく、飛鳥・石村・忍坂・長谷・畝火・耳無と御名をば白して…皇御孫の命の瑞の御舎を仕え奉りて…四方の国を安国と平らけく知ろし食すが故に、皇御孫の命のうづの幣帛を称へ辞竟へ奉らくと宣ふ」とあり、広瀬大忌祭に「倭国の六御県の山口に坐す皇神等の前にも、皇御孫の命のうづの幣帛を…奉る。かく奉らば、皇神等の敷き坐す山々の口より、さくなだりに下し賜う水を…」とあります。

これがいわゆる「六所山口神社」のこと。これにより山口の水を司る神として、また祈雨神として奉斎されていたことも分かります。

また延喜式四時祭には「甘樫、飛鳥、石村(石寸)、忍坂、長谷、吉野、巨勢、賀茂、当麻、大坂、膽駒(生駒)、都祁、養生(夜支布)」などの山口には馬を一匹加へよ」と記されており、甘樫にも山口神社があったことになります。現在は存在しませんが、後継社として板蓋神社を考えています。

*「延喜式四時祭」とは四季にわたり定期的に行われる祭儀のこと。「定例祭」とも。巻1・2に掲載されています。これに対するのは「臨時祭(四角祭とも)」。

なお神名帳では長谷、忍坂、飛鳥、畝火の4社のみ「山口坐神社」、他は「山口神社」となっています。区分があるのかどうかまでは分かっていません。


【祈年祭山口社6社】

【その他山口社8社】
逢坂山口神社(穴虫逢坂)

*「逢坂」と「都祁」は論社が2社ずつ有り