春泥のそのごちゃごちゃを
恋と呼ぶ


(櫂 未知子)

 

 

 

櫂 未知子(1960年 - )俳人。「群青」共同代表、「銀化」同人。俳人協会理事。
口語表現を生かしつつ、男女の性愛や、強さとエレガンスを持つ女性像を描き出した作品で知られる。代表句に「シャワー浴ぶくちびる汚れたる昼は」「春は曙そろそろ帰つてくれないか」「佐渡ヶ島ほどに布団を離しけり」などがある。

 

 

 

香薬のあじわい

 

 

 恋というと、

 

 うきうき、キラキラ、ドキドキ・・・

 なんて言葉が、浮かびますが、

 

 恋 ≒ 春泥 

 

 ですからね。(笑)

 

 インパクトあります。

 

 

 雪解けが進んで、

 一歩一歩、春に近づくのは嬉しいのですが、

 

 そそ、そそ、

 と、静かに歩いたつもりでも、

 スカートまでドロが跳ね上がってたりする春泥。

 

 「もう心が傷つくのはいや。」

 

 「うまくいくわけない。」

 

 という思いから、

 

 予防線をはりめぐらせたり、

 あらかじめ負傷するシミュレーション

 をしてみたり。

 

 でも、

 泥ははねるんです(笑)

 

 恋のドキドキ感、高揚感を感じながら、

 自分の内面と格闘する。

 

 自制心を無視するかのように、

 気付くと考えてばかりいて、

 期待が膨らんで。

 

 そんな、ごちゃごちゃ感が、

 恋なんですかね。

 

 

 とはいえ、

 総じて「春」なわけですから、

 人生の青春は、謳歌せねば。

 

 

 

『心の香薬』もくじ