勇気こそ地の塩なれや
梅真白

(中村草田男)
 

 

中村草田男(1901年 - 1983年)俳人、国文学者。

虚子の守旧派のスタイルを継承しつつ俳句の現代化を推進。加藤楸邨、石田波郷らと共に人の内面心理を詠むことを追求し人間探求派と称された。

 

 

 

香薬のあじわい

 

 

 「梅」「塩」「勇気」には、

 共通イメージがあります。

 

 白梅の白、塩の白色、

 勇気の清さ(白)

 

 「梅」は小花でも香り立ち、

 「塩」は少しでも塩辛く、

 少しの「勇気」が世界を変える。

 

 3つともに、

 わずかながらも存在感を見せ、

 邪念を寄せ付けない力を感じます。

 

 「地の塩」とは、聖書の一文。

 

 『汝らは地の塩なり、塩もし効力を失わば、

 何をもてか之に塩すべき。後は用なし、

 外にすてられて人に道ふまるるのみ』

 

 簡単に訳すと、こんな意味です。

 

 あなたたちは地の塩です。

 塩が、もし効力を失ったとしたら、

 他のなにで、塩の役割を果たせるでしょう。

 用のないものとして、外に捨てられ、

 道行く人に、踏まれていくだけです。

 

 作者は、

 どうして聖書に出てくる「地の塩」

 という言葉を、使ったのでしょう。

 

 中村草田男さんを調べてみると、

 この句には

 背景があることを知りました。

 

 ”第二次世界大戦の学徒出陣”


 それを考えると

 「地の塩」に込めた意味は

 「唯一無二」だったのでは...。

 

 だから、私はこう解釈しています。

 

 <表向きの意>

 あなたが今、ふりしぼる勇気は、

 唯一無二の尊いものです。

 白梅が誇らしげに、凛と咲いています。

 

 ↓ ↓ 

 <込めた意>

 あなたたちは地の塩(唯一無二の存在)

 ”死を選ばない”

 という勇気も持ってくれ!

 

 

 勇気こそ地の塩なれ。

 

 唯一無二の勇気を発動。

 

 もしかしたら...

 勇気」とは

 

 人生の向かい風の中で、

 穿(うが)って行くために、

 人間に備わっているものなのかもしれません。

 

 

 

 

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