くるしさや
恋の下萌えほの緑


(正岡子規)

 

 

 正岡子規(1867年 - 1902年)俳人、歌人、国語学研究家。

俳句、短歌、新体詩、小説、評論、随筆など多方面に亘り創作活動を行い、日本の近代文学に多大な影響を及ぼした、明治時代を代表する文学者の一人であった。死を迎えるまでの約7年間は結核を患っていた。

 

 

 

 

香薬のあじわい

 

 

 かの有名な、正岡子規。

 

 恋の句も、つくってたんですね。

 

 「下萌え」とは、

 長い冬が終わろうとする早春のころ、
 枯れ葉の地面から、新芽が分け出てくる
 様子を、あらわした言葉です。
 
 恋する心は、
 理性で押しとどめようとしても、
 春を待ち望んだ新芽のように、
 勢いよく太陽へ向かって、
 つややかに芽吹いていってしまう・・・。
 
 「せつなさや 恋の下萌え ほの緑」
 という句なら、この解釈でいいのでしょうが、
 
 この句は「くるしさや」がつくわけなので、
 
 下萌えの意味に
 「下燃え」も含んでいるのでしょうか。
 
 「下燃え」とは、
 炎が表に出ないで、燃えていること。
 
 見えないだけで、奥底では、
 かなり勢いよくファイヤーしています。
 
 人知れず恋い焦がれている想いが、
 あふれるばかりで、苦しいほどです。
 
 というところでしょうか。
 
 燃える恋も、また素敵なり。

 

 

『心の香薬』もくじ