コンビニのおにぎりをかじったら歯が割れた。というあまり例を見ない不幸に見舞われたのは2年近く前。
驚いて元凶のおにぎりを確認せずに捨ててしまったせいで証拠がなく、コンビニに文句を言うも菓子折り一つで終わってしまった。
かなりの痛みがあったから歯医者に行ったのに、「レントゲンに細かいところが写らないのでもっと酷くならないとわからない」と、「だから何の処置もできない」と言われた。そんなビックリな医院が存在するのだな、とこのとき初めて知って、そこはきれいさっぱり見切った。
別の医院へ駈け込んだら、しっかり小さなヒビを見つけてくれた。とりあえずの応急処置として虫歯のように詰め物をして固定してもらい、その後定期的なクリーニングと共に経過観察を続けてきた。
が、それももう限界を迎えた。
そもそもこの2年弱の間、歯茎に膿が溜まったり嚙み合わせが不調になったりと不安要素はあり、いずれ抜歯しましょうとは言われ続けてきて。
それでもヤダヤダと言い続けたが、ぐらつき感が最近ひどいな、と思ったら詰め物が取れかけている、と指摘された。
そして……鏡で見せてもらったが、ヒビだったものは、ものの見事にパックリ割れに進化していた。
抜歯……怖い怖い。
確か、親知らずを一回抜いたことがあったけれど、遠い記憶を掘り起こしてみれば、出血がひどく帰りに貧血を起こして電車でしゃがみ込んだっけ。
それに、あまり上手くない歯医者さんだったのだろう、処置の手が滑って口腔内の別の箇所をグッサリ傷つけた。口内炎になりやすい体質の私、しばらく辛い日々を送った。
あとは、子どもの頃に前歯を折った経験があるのだが、太古の昔過ぎてどんな処置だったか全く記憶に残っていない。
ってことで今回、何度も歯医者さんに尋ねる。
「どのくらい痛いものなんですか?」「すごく血が出ますか?」「時間は相当かかりますか?」「腫れるんでしょうか?」「当日や翌日に休みを取った方がいいですか?」等々。
「歯を引っ張る感じがちょっと強いくらいですよ」「休みは取らなくても大丈夫です」と軽くいなされ、ドキドキしながらその日を迎える。
結果的に言うと、痛くもショックもなくて、「はい1つ抜けました」「はい取れました!」(2つに割れてたので)と二言のうちに、5分もかからずに終わった。事前の麻酔の注射の方が痛かったくらい。
思わず拍子抜け、「え、……こんなもんなんですか?」とつぶやいて笑われた。
抜けた歯は、潔いほどに真っ二つだった。「よくこれで今まで痛くなかったですね」と不思議がられるほどに。
私って、人より痛みに鈍いのか? と自問している。
出血は1日で止まり、痛み止めは1つ飲んだだけ、抗生物質も全部飲み終わった。
何が辛かったって、ここ数年あれやこれやをすぐ口にするのが習慣化していたテレワーク人間、抜歯当日は麻酔が切れるまで物が食べられなかったこと。
意外と楽に抜歯が終わり、その後の義歯については3通りあるそうな。でもその処置は3か月後だそうなので、それまで歯抜けおばちゃんです。
(了)
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