物語を書かない人は「そんなバカな」と思うかもしれないが、書いているうちに「キャラが勝手に動き出す」ことがある。
何か事件が起こると、そのキャラらしい反応をする。そのキャラらしいセリフを言い、そのキャラらしく動き回るのである。
ときにはそのせいで、最初に考えていた物語の筋書きが変わっていくこともある。
こうなってくると、そのまま任せた方が話が自然に展開し面白くなっていく、と自分では思っている。
で、こういう現象が起こると、書き手はすごく楽。キャラが勝手に物語を引っ張っていくので、キーボードを打つ手がそれを追っかけて行くだけでいいのだから。
ところが、これが滅多に起きない。
これまで、長編短編小説シナリオなどたくさんの物語を創作してきた。その中で主人公キャラが勝手に動いた実感があるのは、たった1つのシリーズのみ。動いたからこそ自分の中でシリーズに出来たのだと思う。今のところ25話まで書けている。
こういう話にしよう、というポイントだけ決めると、その主人公が勝手にああだこうだやってくれて、面白いサブキャラに出会ったり、埋もれていたエピソードを引っ張り出したりしてくれるのだ。
そういうときの書き手の気分は楽しくてたまらない。読み返してもあまり直しも要らないことが多い。
が、これはごくごくレアなケースで、こういうことを目指してキャラ作りをしているはずなのに、なかなか動いてくれない。
動かないからこちらが適当に「こうしようか」と行動させると、物語が止まったりする。ああでもない、こうでもない、と迷宮に迷い込むことにもなる。
そういうときは、そのキャラはまだ「生きる」ところまで行っていないのだと思う。
こういう風に滞ってしまうときに思い出すのは、物書き講座等でよく教わる「主要人物の履歴書を書け」ということ。
履歴書と言っても、いつどこで生まれてどの学校を卒業し、こういう資格を持っています、とかいう、就活用のとは違う。
もちろん、方言が物語に関係するならどこで生まれたかは大事だし、学歴に関する話が展開するなら卒業したのがどんな学校かというのも重要。
でも結局、その人の信念を決めるような過去の出来事や両親兄妹との関係、どんな人を何故尊敬しているか、逆に何故恨んでいるか等々のことが作れているかどうか。だと解釈している。
で、何か起こった時にこの人どう反応する? と考える。
例えば道で犬に会ったら頭を撫でるのか逃げるのか睨み合うのか。上司に怒られたら言い返すのかしょげるのか黙って成果を見せつけるのか。
などと細かく作り込んではみるのだが、それでもなかなかうまくいかない。
そして今日も四苦八苦しています。
(了)
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