イヤミスというジャンルが認知されてからどのくらいになるだろう。
読み終わって全く爽快さがなく、イヤな読後感だけが残る。そんなミステリー、つまりは救いがなく、悪意や自己中などで真っ暗な結末を迎える物語、と私は思っている。
こういう話、なぜかページを繰る手が止まらなくなって最後まで一気に行ってしまうことが多い。ラストが最悪でも、それまでの経緯に共感や身近さがあって、ついつい気になるように書かれているのだろう。それには高度な技が要るのかもしれない。
自分はそんな高い技術があるとも思えないし、基本、ハッピーエンドを書きたい気持ちが強い。
悲しい事件や辛い状況を設定しても、何かしらの救いや希望を最後には持たせたいと思って書いている。
……あくまでも基本は。
なのに、なぜかときどき無性に「救われない話」を書きたくなるのである。
去年から2年の間に書いた中で、それがどのくらいの割合かと数えてみたら、38本のうち8本が全く救いのない話だった。
え……ほぼ1/5にもなるの……?
ちょっと自分で驚いた。
困難があっても、理不尽や悔しさを感じても、周りの誰かや何かの巡り合わせで埋められたり進んで行けたりする。そんな話を書くのが好きなのだけど、……ときどきそういう「ちょっといい話」から離れたくなるときがあるのだ。
例えば、登場人物が全て性悪説の権化のような人ばかり。主人公は最初はいい人なのにそれに感化されて最後はやられた分をやり返す悪人になってしまう、とか。
例えば、本人は「善行」のつもりでも、それが全て裏目に出て、気付かないうちに回り回ってカウンターパンチを喰らってしまう、とか。
つい最近書いた新作は、何の落ち度もない心のきれいな親友を裏切る女の話。そうまでしたのにその女も幸せになれない、といった1ミリも救いのない話。(→「100年の友」)
作者の中に、黒く醜い部分が確実にあって、デトックス的に吐き出したがっているのかな、という気がする。
ただ、そんな作品も公開してはいるが、「こういうのが私の代表作」と知り合いに紹介できるものでもない。こんな暗~いこと考えているのか。この人危なくない? いやな性格だな。とか絶対思われそうだから。
要は、自浄作用として書いているんじゃないかと思う。自分の中のモヤモヤをスッキリさせたい、という。
さて、一つそういうのを書いて心が軽くなったところで、次はやっぱり楽しくて元気の出る話を書きたい。
キラキラ青春ラブコメディとか、アホみたいに前進まっしぐらの現代ファンタジーとか。
白と黒、どっちが書きやすいとか書きたいとかじゃなく、両方でバランスを取っているみたい。
だから、また8作くらい書いたら「暗っら~!」という黒い話を書くんだろうと思う。
(了)
↓「もう少しだけ」がお題の新作短編書きました。救いの全くない話。12分で読めます!