趣味の養蜂(飼育から蜂蜜販売まで) 6.飼育用器具
6.飼育用器具
① 巣箱
巣箱は、10枚用標準タイプを最低3個は保有したい。1個目は、最初の導入時に使用する物。4月に種蜂を購入した場合、5月には分割して2群にすることが可能である。その分割群を入れる箱が2個目、更に、予期せぬ分蜂の為にもう一つを予備として保有しておくことが必要である。なお、巣箱の設置は、安定した地面にブロック等を置き、その上に設置する。大雨で水没しないような高さにする。また、巣門の反対側は板切れなどを挟んで前方より高くし、大雨の際、吹込み雨水が中に浸入しないようにする。
巣箱は、突風で倒れても蓋が開かないように紐で縛っておく。たとえ倒れても起こせば済むが、万が一蓋が開いた場合は厄介なことになる。
また、巣箱の上には、波板等を載せ、雨除けをする。巣箱の蓋に亀裂などがある場合、雨が浸み込んで中の巣枠が濡れる。波板の上には、風で飛ばされないようにブロックを2つ置く。トタン板を使用する場合は、夏の暑熱対策としてトタン板の下に発砲スチロールの板を置く。
養蜂を生業としている人は、巣箱の上に何も載せてない。手間暇を省くためである。趣味の養蜂家としては、蜜蜂にとって少しでも快適な環境を整えてやりたいと思うし、巣箱も長持ちさせたい。
巣箱は、出来合いを購入することも出来るが、組み立てキットを購入し自分で組み立てるのは楽しい。価格も一個当たり1500円は安い。注意点としては、色々な業者から購入する場合、標準タイプとは言え、微妙にサイズが違い、蓋を共有出来ないことがある。
① 継箱と隔王板
継箱は、巣箱の上に乗せて、2階、3階と積み上げていく物である。
最初の1群が順調に生育すれば、導入から1ヶ月もすると、巣箱は蜂であふれる。蜜を採る場合、継箱を載せて2段にするが、2階部分の継箱内巣枠には産卵させないように、隔王盤を巣箱と継箱の間に挟む。隔王板は、女王蜂は通過できないが、働き蜂は通過できるスリットになっている。隔王板を有効に使用することで、蜂児がいない巣枠から蜜を採取できる。巣枠に蜂児と蜜が混在している場合、これを遠心分離器にかけると、蜂児も分離器内に放り出される。命を粗末にすることになるし、蜂児の体液等が蜂蜜に混入することも懸念される。
② 巣枠
巣枠は、ホフマン式とラ式の2種類がある。巣枠と巣枠の間隔が理にかなっているのは、ホフマン式であり、安価でもある。
また、巣枠の材料、巣礎を購入して自分で組み立てるのは、楽しいが、数群の飼育数であれば、完成巣枠を購入した方が結果的に安価で都合が良い。
そして、蜜蜂に巣を半分程度盛らせた物、半完成巣ヒ枠という物もあるが、4月・5月であればペラペラの巣礎でも、1~2週間もあれば販売品と同程度の巣は盛る。よほど急ぐ事でもなければ、安価な物を採用し、じっくり完成させてその経過を観察した方が良い。
巣枠と巣枠との間隔は極めて重要である。間隔の広い狭いにより、蜜蜂の行動は異なる。9mmは育児圏の間隔であり、12~15mmは貯蜜圏である。6.4mmより狭い場合、プロポリスで埋め、9.5mmより広い場合は、巣を作る。この巣は、養蜂家にとって望まない物なのでムダ巣と呼ばれる。6.4mm~9.5mmは通路として使い、空けたままの状態になる。
③ 燻煙器と燃やす材料
燻煙器は、フイゴの部分の耐久性が重要である。火の粉が入り込むことがあるので、劣悪品は穴があき空気を送れなくなる。金属部分については、安価でもある程度の耐久性はある。長く使用していると蓋と胴体がタールによって付着し、蓋の開閉が困難になる。定期的にバーナーでタールを燃やして除去する必要がある。バーナーは、寿司職人が、あぶりサーモンなどを調理する際に使用するハンディーな物が便利である。これは、巣箱の清掃・消毒等でも使用できるので1台は常備したい。
燻煙用材料は、最初の火種に最適な新聞紙と麻布、松ボックリ、コーヒーカスなどである。有害物質の発生しない燃える物なら何でも良いが、ペーパーフィルターでコーヒーを淹れた際に出るコーヒーカス(ペーパーごと乾燥)が火持ちがする。
燻煙器の使用では、煙を吹きかけるもので、決して火炎放射をしてはいけない。日中は、炎は見えないが、夜間は見える。どのような状態で炎が出るのか、夜間に確認しておくことを勧める。
④ ハイブツール
ハイブとは巣のことで、巣箱を開けて内検する時に使用するツールをハイブツールという。巣枠は、蜜蜂によりプロポリスや蜜ろうで固定されるので、巣枠を引き抜く時にはハイブツールが役に立つ。また、ムダ巣やプロポリスを取り除く時にも使用するもので必需品である。
⑤ 蜜欠き用ホーク
蜜蜂は巣枠に蜜を貯めてロウで蓋をする。この蓋は冬になると堅くなり蜜蜂も溶かして中の蜜を食べられなくなる。そこで蜜蓋を掻き取ってやる。専用の蜜蓋掻き器もあるが、大きめの食事用ホークが便利である。また、蜜蜂は、産卵スペースの上部隅に蜜を貯める性質がある。この部分の蜜蓋を掻いてやると、働き蜂はその後掃除し、女王はこの部分に産卵する。結果として巣枠一面の額面蜂児が出来る。
① 分割版
分割版は、巣箱の中を育児・生活圏とその他との部分に分ける際に使用する。また、ムダ巣を作らせないために、空間を調整する際にも使用する。巣箱一つに、一枚は用意したい。
② 脱蜂板
蜜枠を巣箱から蜂を騒がせないで取り上げる方法として、脱蜂板を使用すると良い。板に逆止弁のような器具が取り付けてあり、継箱にいる蜂は巣箱に下りて継箱には戻れない。100%ではないが、3日も経つと払い落とすのに気にならない程度になる。特に住宅街における養蜂では、効力を発揮する。ただし、脱蜂板を取り付けるのも、早朝に行わないと、薄い糖度の蜜を採取することになる。
③ 麻布
巣箱の上部、蓋との間に麻布を載せる。これを載せることでムダ巣を作らなくなる。ホームセンターなどで中古の麻袋を購入し、水洗い・乾燥後、巣箱の大きさにカットして使用する。端切れは、燻煙用の材料として使用する。
趣味の養蜂(飼育から蜂蜜販売まで) 5-2 .病気・ダニの被害
5 -2 病気・ダニの被害
a.ダニ
養蜂家にとって一番の脅威は、ダニの被害である。その予防としてダニ剤の投与は欠かせない。日本で許可されているのは、アピスタンとアピバールの2種類のみである。それぞれ6週間使用し、ダニに耐性を与えない為に交互に投与する。
ダニは、成虫に取り付く以外、封印された巣房の中で蜜蜂の幼虫と同居している。この巣房の中にいるダニには薬剤は届かない。そこで、ダニが活発に活動する夏季においては、女王蜂を2ヶ月程度の期間、王籠に閉じ込めて産卵を抑制する。これにより、巣房内は一時的に空になり薬剤の効力が100%発揮される。
ポリネーション専用の養蜂業者は、年間を通してダニ剤を投与しているとのことである。そのくらいダニの被害は深刻である。趣味の養蜂家としても、養成群については、年間の投与を検討したい。
ただし、野菜用のダニ剤など、法定外の薬剤は使用すべきではない。万が一法定外の農薬が蜂蜜に残留した場合、当該者の回収や廃棄のみならず、その地域の養蜂家全体に影響を及ぼすことになる。
b.伝染病
伝染病は種々あるが、最も恐ろしいのはアメリカフソ病と言われている。
年に一回、蜜蜂の飼育者は、プロ・アマに拘らず、家畜保健衛生所の検査を受けることが義務付けられている。検査は、蜜蜂が産卵を精力的に行っている春に行われ、蜂児のいる群に限り、手数料は1群当たり100円である。その際、担当の獣医師から病気の予防方法や、地域の発生状況等について話を聞くことができる。
また、養蜂協会が、県単位及び全国組織として存在している。養蜂協会に加入して養蜂仲間から情報を収集することも役に立つ。
伝染病の病原菌は、土壌細菌が多い。つまり、罹患は、日常的に起こりうると考えるべきである。その予防は、強群を維持することに尽きると言われている。
なお、伝染病の詳細については、専門書を参考にされたい。
趣味の養蜂(飼育から蜂蜜販売まで) 5.内検
5.内検
巣箱の中を調べることを内検というが、内検の前に、まずは外検である。巣門付近が綺麗で、蜂や幼虫の死骸が少なく、蜂の出入りが活発であれば健康的な状態である。働蜂の生命は、人間の皮膚のようなもので、毎日新陳代謝が行われる。そのため中で死んだ蜂は外に排出され、時には幼虫も出される。蜜を盛んに集めている時は、花蜜を濃縮する為に水蒸気が巣門から排出される。そのため巣門前は濡れている。このように、外検である程度のことが判断できる。
3月から11月は、1週間に1回程度の頻度で、原則、巣枠を抜き出して主に次の5点の状況を確認する。セイタカアワダチソウの花が終わり、霜が降りるころになると、冬眠はしないが冬ごもりの態勢になる。この時期は、暖かい日を選んで、2週間に一度程度は、蓋を取って上部の状態と、貯蜜量の確認を行う。巣枠を引き抜くことは巣箱内の温度が下がるので通常は行わない。貯蜜量は巣箱の重さで判断できるが、分からない場合は、蜜枠を引き抜いて確認する。不足している場合は、砂糖水を与える。
なお、分蜂最盛期である4~5月は、4日に一度の内検を行い、分蜂対策を講じる必要がある。
①女王の状態
大きくてゆったりと動いている女王を確認できた時は、安心する。蜂の数が増えると、女王の確認は難しく、時間を浪費する。そのため、女王の確認が容易に出来るようにペイントで背中に印をつける。ペイントは文具店で販売されている水性ペイント(参考:POSCA丸芯・中字・水性)を使用する。なお、同時に分蜂を防止するために羽を1/3ほどカットする。(片方の羽だけを切る方法もある)羽を切ることで、産卵等の面での悪影響は見られない。印付けと羽切りを同時に行うことが可能な、シャッター式の女王隔離器具を使用するのが便利である。また、羽切は、100円ショップで販売している化粧用のハサミが便利である。刃に角度が付いているので女王を傷つけずに羽を切れる。ただし、印付けと羽切は、ペイントの出すぎで女王がショック死したことや、隔離器具での圧着死があるので、扱いは極々慎重に行いたい。
① 産卵・育児の状況
蜜蜂は、卵が孵化すると幼虫・蛹・成虫と変化していき、幼虫の段階で、小部屋に封印される。封印前を無蓋蜂児、封印後を有蓋蜂児という。これらのものが、数多く密集して規則正しく美しく存在すれば問題はない。産卵は巣枠の中心部から始まり周囲へ広げていく。そして、中心部から誕生し、空になった巣房は働蜂が清掃し、次の産卵が行われる。
女王の存在を確認できなくても、卵や無蓋蜂児があれば、女王は隠れて発見できないか、直近まで存在していたと判断できる。
蜂児がバラバラの存在で悪臭を発しているようであれば、伝染病を疑わなければならない。また、花蜜が豊富な時期に蜂児が全くない場合は、女王の産卵能力に問題があるかもしれない。
② 王台の存在
働き蜂は、女王に問題がある場合、次の女王を準備するために王台を作成する。
また、貯蜜量が多くなり、産卵スペースが不足している場合、王台を作って、分蜂の準備を行う。
王台一つは、女王一匹と同レベルと認識すべきである。巣箱の中には、女王は一匹しか存在できない。したがって、内検で女王を確認できれば、王台は全て除去しなければならない。
女王を確認できなければ、立派な王台を一つ残し、新女王の誕生を待つ。ただし、女王が隠れていて発見できない場合は、王台を残すことで分蜂の危険がある。
無蓋蜂児がある場合は、女王がどこかに居るか、いない場合でもごく最近のことで、産卵から3~5日の卵が存在している可能性が高い。この場合、王台を全て除去しても問題はない。本当に女王不在の場合は、次の内検までに再び王台が作成される。
群を増やす場合は、王台付きの巣枠は、他の巣枠2枚程度と一緒に別の箱に移す。2週間もしない内に新女王が誕生する。この場合、働き蜂の数が不足すると考えられるので、砂糖水を与える。
ただ、女王付きの巣枠を別の巣箱に移し、王台付きの巣枠を元の巣箱に残す方法もある。どちらでも構わないが、元の巣箱の位置を変えない限り、元の巣箱に外勤蜂が帰ってくるので、元の巣箱は群の勢いは維持される。そして、女王の居ない巣箱は、1ヶ月程は産卵が行われないので、その分、増勢には時間を要す。
③ 蜜や花粉の量
花蜜が豊富な時期か否か、外勤蜂がたくさんいるか、越冬前かなど、状況に応じて食料としての蜜や花粉の量は適切か否かを判断する。不足していると判断される場合、給餌する。砂糖水や代用花粉をいつ、どのくらい与えるべきか悩むところではあるが、次のような判断で行う。
なお、代用花粉は、砂糖水を与える時に一緒に与えると良い。代用花粉は、ビーハッチャーのように封を切ってそのまま使える物や、ビーブリードのように自分で加工する物がある。自分で加工する方が安価であり、残ったものは冷凍保存できる。
イ.越冬前、巣門の反対側の底を持ち上げて、巣箱が軽いと判断される場合、貯蜜量が不足しているので給餌を行う。この場合、砂糖2熱湯1の濃い目の給餌を行う。
ロ.人工分蜂のために群を分割した場合など、外勤蜂の数が不足していると考えられる巣箱の方に給餌を行う。
ハ.2月初めに砂糖1熱湯1の花蜜と同程度の濃度の砂糖水で給餌を行い、4月採蜜の準備を行う。
ニ.長雨で蜜切れが予想される場合、雨が止むのを待って給餌を行う。
趣味の養蜂(飼育から蜂蜜販売まで) 4、飼育環境
4 飼育環境
住宅街における飼育については、格別な注意が求められる。良し悪しについては、個別に判断するしがない。絶対的条件は隣人と良好な関係にあること。私は、飼育前に養蜂の大御所からアドバイスを頂いた。それは、「まず近隣に蜂蜜を配ること」であった。さすが苦労して名を残した人であり、後日その言葉を実感することになった。
① 巣箱の設置場所
巣箱の設置場所について、大阪府では条例を定めて規制している。
その内容は、次の通りであるが、住民からの苦情に基づき制定されたものと考えられる。
「箱は、住宅地・学校・工場・道路・公園等、人が常時出入り・通行・集合する場所から、20メートル以上離れた場所に置くこと。」
埼玉県では、規則はないが、大阪府の条例を参考にしながら、事故がないように留意したい。
道路や住宅に隣接する場合は、生垣や網フェンスなどで蜜蜂の生活域から遮断し、蜜蜂の飛行経路の妨げにならないように配慮すること。
結局は、できるだけ多くの事例を見学して、飼育の先輩から話を聞き、自分で判断するしかない。
② 水飲み場
私の経験では、隣人が庭に散水した時、蜜蜂が水を求めて群がり、隣人は、あまりの多さに仰天した。今では、自宅庭に数カ所、水飲み場、睡蓮鉢を置いてあるので、その結果、隣家を訪問するのは少なくなった。蜜蜂は、きれいな水より睡蓮を栽培しているような溜まり水を好む。
給水は、蜂児の養育が盛んに行われている時に、普段にも増して多いようである。蜜と花粉を材料にベビーフードを作っていると思われる。
趣味の養蜂(飼育から蜂蜜販売まで) 3.蜜源植物 ②花外蜜腺
②花外蜜腺
桜からは2回、蜜が採れる。1回目は4月初めの花から。2回目は、4月下旬、葉の付け根にあるイボ状の花外蜜腺という部分からである。この蜜腺は、蛾の幼虫などに葉が食べられないように、蟻を甘い蜜でおびき寄せて、葉を守っていると言われている。蜜蜂はこのおこぼれを頂戴している。蜜を放出する時期は、羽音がうるさい程、蜜蜂が訪問しているので、花からの蜜より採れる蜜量は多いのではないかとも思う。また、巣箱の中の蜜蜂の生息数も4月上旬の桜開花時期より、蜜腺から蜜が放出される下旬の方がはるかに多いので、花外蜜腺からの蜜は収穫量が期待できる。
花外蜜腺は、桜の他にも、イタドリやホウセンカ、オクラなどが有しているが、蜜蜂の訪問については、筆者は確認していない。
趣味の養蜂(飼育から蜂蜜販売まで) 3.蜜源植物 ①花
3 蜜源植物
蜜と花粉は、蜜蜂の食料である。蜜蜂を飼育するならば、蜜を出す植物とその開花時期、並びに蜜の味や花粉の色についても調べ、その地域の状況を把握することが大切である。
また、近くに耕作放棄地がある場合は、ヘアリーベッチのように蜜を豊富に出し、かつ、成長が速いために雑草の繁茂を防いでくれる植物の栽培を積極的に働きかけたい。
なお、ヘアリーベッチの種を庭に播いた。その繁殖力の凄さには舌を巻いた。そして、花が次から次へと咲き、かなりの蜜蜂が訪花しているのを確認した。ただ、花を口に入れたが、ブルーベリーの花のように甘さを感じなかった。蜜蜂は、どこから蜜を採取しているのか不思議である。
栗については、栄養価が高いが、味の評価は低い。もう一つの特徴としては、1年経っても固化しないことである。ブドウ糖の含有率が低いようである。友人は、栗蜜を分離器にかけたとき、匂いの凄さに耐えられず、窓を開けたとのことである。そのくらい個性的である。蜜の販売を行うならば、栗の花が咲く前に蜜枠を引き上げるなど、採蜜のタイミングに注意が必要である。
味の評価として高いのは、坂戸市においてはアカシアである。高麗川の河川敷に繁殖している。ニセアカシアが正式な名前であるが、アカシアの名で通っている。5月の連休頃に開花し、近づくと蜜の匂いがするほどである。この蜜は、上品な香りがあり、透明度が高く、固化しにくいのも特徴である。そして、花期こそ短いが、その量は多い。アカシアが終わると、シーズンの8割は終了したかな、という感じである。そのくらい存在感が大きい。
蜜源植物については、書物では、「蜂からみた花の世界」玉川 大学名誉教授. 佐々木 正己、インターネットでは、「花を増やそう!蜜源・花粉源データベース」が参考になる。
花を見ながら、蜂を見ながら近所を散策することは楽しいものである。
趣味の養蜂(飼育から蜂蜜販売まで) 2.蜜蜂の事をよく知る No3
④同蜂産卵
女王に何かのトラブルが発生した時、働き蜂は、新女王を作る為の行動を起こす。孵化から5日目までの幼虫にロイヤルゼリーを与え続けて新女王を作る。これは変性王台と言われる。しかし、女王作りに失敗した場合は、同じ雌である働き蜂が産卵を行う。これが同蜂産卵である。結果、働き蜂が産卵するのは全て未受精卵のため誕生するのは雄蜂であり、群は崩壊に至る。
なお、同蜂産卵が始まった群は合同が困難であるので、同蜂産卵が始まる前に他の群と合同させる必要がある。
⑤排他性
排他性は、花の少ない時、気温の低い時は特に強い。濃蜜期では排他性は少なく、2群の合同は容易である。また、若い蜂、弱い群では排他性は弱い。老いた女王については、2王の共存も可能であり、排他性は弱まる。
⑥女王交換
女王を交換する場合、旧女王を取り除き、ちょうど24時間後に新女王を導入すれば、すんなりことを運ぶと言われている。筆者は、実際確認していないが、旧知の事実とのこと。
趣味の養蜂(飼育から蜂蜜販売まで) 2.蜜蜂の事をよく知る No2
③分蜂
巣箱の中が蜂であふれ、産卵スペースが確保出来ない状況になると分蜂が起きる。通常、女王は、新女王が生まれる1日~2日前になると、働き蜂を半分ほど連れて飛びだす。その飛びだす数は、群が大きいほど多い。中には、群を形成するには困難と思われるような小さな集団もある。2回目、3回目の連続分蜂、または、変性王台を2個以上残しての人工分蜂時にも見られる現象である。
分蜂は、晴れた日の10時頃に始まり、一旦近くの植木などにとまる。2時間から半日ぐらいはそのままでいる。やがて、偵察蜂が見つけた巣に飛んでいく。適当な巣が見つからない場合は、近くの植木などに自然巣を作ることがある。また、近くの植木にとまったものの、突然の降雨に見舞われた場合、その下に巣箱を置いただけで、その巣箱に入り込むこともある。(分蜂群回収方法は後述)
分蜂はさせないことが理想であるが、防止することは至難の業である。特に群数が多い場合は、100%の回避は無理である。
その為の対策としては、王台を除去することに尽きるが、見落としは避けられない。巣枠の隅や、凹んだ部分、雄蜂の巣房の陰に隠れて、更に働き蜂に覆われていると見落とす。それで、関東では3月末から5月中旬までの分蜂最盛期は、4日に一回は内検を行いたい。1週間に1回では、その時に王台を見落とした場合、2週間目の内検にはすでに分蜂していることが計算上あり得る。仮に1回目の内検時に、産卵5日目の卵が女王候補だとすると、それから11日には新女王が誕生する。つまり14日目の内検では遅い計算になる。
また、もう一つの対策としては、女王の羽を切って飛べないようにすることである。(方法は後述)ただし、この場合は、新女王が飛び出すことになるので、少しの時間的猶予はあるものの完全な対策にはならない。また、羽の切り方が少ない場合、巣門から飛び出したものの適当な所に分蜂球を形成できないため、多くの働き蜂は、分蜂を断念して巣に戻る。しかし、女王は巣に戻れず僅かな働き蜂と巣箱の近くで固まっている。この女王は養蜂家に発見されない限り、いずれ天敵の餌食になる。
封印される前の王台でも、王台は女王として認識される。女王蜂は1群に1匹しか存在できないので、王台があればいつ分蜂が起きても不思議ではない。ただ、王台ができるとすぐに分蜂が起きるかと言えば否である。天候など種々の条件が勘案されるようである。また、分蜂熱のようなものがあり、原因が良く解らない場合もある。
結局、究極の分蜂対策は、巣枠の隅や下部に自然王台が出来始めたら、女王を除くことである。方法は、巣箱の隣に空の巣箱を置き、ここに女王付きの巣枠と、蜂が付いている蜜の多い枠を1枚、元の巣箱から抜いて隣の巣箱に入れる。更に新しい巣枠を1枚と給餌用枠を一枚入れる。外勤蜂は元の巣箱に戻るので、女王を移した隣の巣箱の外勤蜂は少ない。したがって、餌として砂糖液を入れて餌切れをカバーする。これで元の巣における分蜂は、すぐには起こらない。また、増群も図れる。群数をそれほど必要としない場合は、いずれ旧女王を淘汰し合同すれば、女王の更新ができる。この場合、古い巣箱の外勤蜂数は殆ど減少しないので、古い巣箱における採蜜量にはあまり影響はない。
もしも、女王が元の巣箱に居て、4月中旬に産卵した場合は、生まれた蜂は5月下旬に外勤蜂になる。この時期はアカシアも終了しており、蜜の収穫はあまり期待出来ない。また、元の巣箱では王台から新女王が誕生し、産卵を開始するまでに約1ヶ月間あるので、一旦巣房が空になる。ダニの増殖は、卵を産み付けられた巣房の中で蜂児と共に成長するので、巣房を一旦空にすることで、ダニの増殖を一時的に抑えることができる。この時期に女王を除くことは、以上の理由により採蜜量の損失より、ダニ対策の効果の方を期待できる。
王台の種類は、おおよそ次の3種類に分けられる。(インターネット情報)
a.分蜂用王台(自然王台)――巣枠の隅、下部に作る。
b.変性王台――緊急で作られるため働き蜂の巣房を利用して色々な場所に作られる。
c.女王蜂交代用王台――巣枠の中心付近に大きな王台を1~3個作る。女王蜂が傷ついたり、老化で産卵ができない場合に作られる。
趣味の養蜂(飼育から蜂蜜販売まで) 2.蜜蜂の事をよく知る No1
趣味の養蜂実務
2 蜜蜂の事をよく知る
①昆虫
一般に蜜蜂と言われている昆虫は、西洋蜜蜂と東洋蜜蜂に分けられる。西洋蜜蜂は家畜であり、長い間、人間に都合の良いように改良され続けてきた。また、東洋蜜蜂は、野生の昆虫のままであり、人間の意のままにはならない。それぞれが集めた蜂蜜も、花の種類が違うためか味も違い、巣蜜も日本蜜蜂の方がプロポリスを含まない分、食べやすい。また、東洋蜜蜂は、キンリョウヘンという東洋ランの花に引き寄せられるが、西洋蜜蜂にはそのような現象は見られない。東洋蜜蜂の中の日本蜜蜂はその神秘性からか人気があるが、飼育は西洋蜜蜂より難しい。今のところ仲間で成功した人はいない。
この実務書は、西洋蜜蜂に絞って記載する。
②超個体
蜜蜂は一つの群を超個体と言われている。当を得た表現だと思う。
女王蜂は雌の生殖機能のみ。雄蜂は雄の生殖機能のみ。そして、手足に相当する部分は働き蜂が担う。その三者で一つの個体を形成していると言える。
女王蜂は、一番大きな巣房である王台から生まれる。王台に産み付けられた卵は、3日で孵化し、8日で封印され、16日で羽化する。20日で成熟し、25日から31日の間に交尾を行う。交尾後一週間ぐらいで産卵を開始する。この発育期間は、養蜂を行う上で極めて重要事項である。「前述のBee Manual」に詳しく記載されているので、メモを自前の養蜂記録と共に常時携帯することを勧める。なお、女王蜂は、多い時で1日に2000個の卵を産む。この数は、巣枠の片側に3000の巣房があるので、その7割に相当する。2年目の女王が一番多く産卵すると言われている。
働き蜂は、成長段階で役割が変化する。巣房に産み落とされた卵は21日で成虫になり、出房する。その後20日間は育児・掃除・防衛などのハウスキーパーを担当して、最後の役割が花蜜・花粉の収集などの外勤を担当する。養蜂家はこの日数を計算してアクションを起こす。例えば、4月初めの桜蜜を採るためには、その40日前に産卵をさせる。花蜜と同じ糖度に調整した砂糖水を与えて産卵を促すことで4月初めに多くの働きバチを外勤バチとして活動させることが可能になる。
雄蜂は無精卵から生まれる。女王蜂は、有精卵と無精卵を働き蜂が用意した巣房の大きさを識別して産み分ける。産卵から24日で成虫になり、交尾だけが役割で、冬越し前に巣から追い出される。春先の雄蜂は、大きくて存在感がある。空中で女王蜂を捉えて交尾をするために目(複眼)も大きい。すべての蜜蜂は5つの目を持っているが、特に大きな二つの目は複眼で、三つの単眼は頭のてっぺんにある。雄蜂は、用を終えたら即死し、壮絶な最期を遂げる。なお、雄蜂は、針で刺すことはない。
女王蜂の寿命は3~6年、働き蜂は、夏場2ヶ月、冬場は6ヶ月で、雄蜂は1~4ヶ月である。
趣味の養蜂(飼育から蜂蜜販売まで) 1.蜜蜂と接する基本
趣味の養蜂(飼育から蜂蜜販売まで)
はじめに
養蜂に関する実務書は意外と少ない。その中でも、角田公次さんの「ミツバチ飼育・生産の実際と蜜源植物」、それに翻訳にやや難はあるものの㈱スタジオ・タック・クリエイテブの「BeeMannual英国流ホビー養蜂のすべて」は、具体的な記載が多く名著である。これらを幹とすれば、本書は枝葉的な位置付けの実務書として読んで頂ければ有り難い。趣味として飼育を始めた1年目程度の養蜂家にとって、一般的な書物からは得られない、蜜蜂の飼育から蜂蜜の販売までの情報を、出来るだけ多く記載したい。
1.蜜蜂と接する基本
①蜜蜂の気持ちを考えて接する。
蜜蜂に接する時は、静かに行動し衝撃を与えない。蜜蜂にとっては、いつの間にか内検され、終わっていたと思わせるようにしたい。手の動きは太極拳のようにゆったりとする。急な動きは刺激を与え、攻撃されると思うようである。
②煙を必ず使用する。
蜜蜂は煙を感知すると、逃げるために餌を食べる。結果的に攻撃性は削がれる。蜜の豊富な時期、アカシアの咲く5月頃は大人しい。しかし、長雨で蜜枯れの6月頃はイライラしているのか、攻撃的になる。煙は決して侮ってはいけない。慣れてくると、煙は使用しなくても問題ないと錯覚しがちである。大人しい時がいつもではないことを肝に銘じるべきである。一度、荒れると、修復までに多くの時間を要する。場合によっては、世代交代が行われる数か月を待たなければならない。
③作業の終了確認
蜂がイラついている時、しつこくまとわりつくことがある。そこから離れても追いかけて来る。近くに人が居る場合、追いかけて来た蜂がその人に害を及ぼす。これは絶対に避けなければいけない。また、面布を脱ぐ時は、周囲に蜂がいないことを確認する。
④服装は、万が一のことを考えて万全を期す。
面布は、網付きの帽子タイプが使い易い。他に帽子に取り付ける簡易的な網、服と一体になっている物など色々あるが、麦わら帽子に網が取り付けてあるようなタイプが使い易い。但し、装着は丁寧にしっかりと行はなければならない。ちょっとした隙間から入り込まれる。蜜蜂は、上に上る習性があるのでいつの間にか頭の中に入り込むことがある。
手袋は、厚手のゴム手袋が安全性では高いが、夏場は蒸れて、汗で臭くなる。安全性では少し劣るとは思うが、豚皮の手袋が使い勝手が良い。薄手の物と厚手の物があるが、ワークマンで購入出来る薄手の物で充分である。刺されることもあるが、深く針が刺さらないので、腫れる程のダメージにはならない。私も仲間もこのタイプを使用している。アレルギーが心配な人は、厚手の物を採用した方が良い。
腕抜き、腕カバーとも言うが、手袋と上着の袖口の間を覆い、蜂の侵入を防止する。
衣服は、長袖と長ズボンで蜜蜂の足が絡みつくような毛羽立った材質は避ける。また、薄手の物は、衣服の上から刺されることがある。黒色は、巣を壊して蜜を盗む熊を連想されるため避けるべきと言われている。但し、実験では、白色との差異は、なかったと言う報告もされている。
靴は、長靴がベスト。短靴の場合は、靴とズボンの隙間を埋めるスパッツのような物を利用すると良い。
