夜、息子に読む本用に前から気になっていた「かないくん」をアマゾンで購入しました。



絵本だけど子供向けでない、むしろ大人向けという点では「百万回生きた猫」と同じカテゴリで出て来るようです。

老いてますます、と言っては失礼だが教科書に載るような詩作だけでなく活動領域を広げている谷川俊太郎が一晩で書き、漫画家の松本大洋が2年かけて絵を描いたという、書評などにも取り上げられている作品です。この2人のコラボというだけでもかなり目を引く。


松本大洋がメジャーになったのは90年代だったか。歯茎をむき出しにして笑う劇画調の少年の絵に特徴があり、当時好きだったすごく年上の男性が「なんか鉄コン筋クリート(松本大洋作)は、読んでしまう」と言っていたのが記憶にあります。同期の男子は吉田戦車の「伝染るんです」に夢中なのに比べると大人だなあと。ま、両方とも名作ですが。


その松本大洋が、日本画のようなタッチで丁寧に描いた少年少女たちは格調高いともいえる佇まいです。2年もかかったのは、2つの時代にわたる少年少女の服装や生活シーンなどのリサーチをふまえてのことでしょうか。
親友といえるほどではないクラスメイトの死を、どう受け止めたらよいかという小学4年生の戸惑いが感じられる第一部。“老い”としての死を考えさせられる第二部。



最終の「死は何かの終わりでなく、何かの始まり」というフレーズは妙に腑に落ちました。上杉さんが亡くなった時、

(こんなふうに、向こうで待っている人がだんだん増えていって、死は怖いものではなくなるんだなあ)と感じたことと似ていたので。



息子の感想「これだけ?字が少ないねえ」

ふだん長文読解に悩まされているので拍子抜けしたようです。そのうちこういう文章出され「あなたが考える『死』について200字で書け」なんて小論文の試験問題が出てくるだよ。

行間を読むということを教えてくれる、高学年向けの本とも言えるかもしれません。