退院からしばらく経ちましたが、起こった状況について整理し、考察してみました。
今回の症状はアテローム血栓性脳梗塞というものです。
脳へと向かう動脈の一部がアテローム硬化を起こし、動脈硬化を起こしたことで、
脳への血流が悪くなり、血栓が出来ました。それによって脳梗塞が起こりました。
アテローム硬化の原因は様々ですが、一般的に多いのはコレステロールによるものです。
しかしながら僕はコレステロールが高くはなく、入院当時の検査でも異常はありませんでした。
担当医師にも、コレステロールが高くないのにどうしてだろうと不思議がられました。
ということで、病院では原因は分かりませんでした。
では何が要因と考えられるのか、今まで培った知識を総動員して、僕なりの考察をしてみました。
まずはその前に、アテローム血栓性脳梗塞を患うまでの前兆があったと思われるので、
それを紹介していきます。
前兆
- 昨年の健診で初めて高血圧の経過観察になった
- 歯が脆くなった
- いびきと睡眠時無呼吸症候群が起こっている
- 生活でのストレスが多い
- 頻脈ではないが脈拍は早め
- 胃の調子があんまり良くない日が多かった
- 体重は減ったのにお腹に脂肪がつきやすくなった
これらが前兆として挙げられ、僕の考察通りに関連していました。
考察
大前提として、細胞はストレスを受けると細胞内に細胞外(主に血中)からカルシウムを取り込みます。[1][2][3]
またミトコンドリアによってエネルギーが産生されるときにもカルシウムが使われます。[4]
身体は血中カルシウム濃度の低下、甲状腺機能低下やストレスホルモンの増加で、副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌します。[5]
PTHは、血中のカルシウムイオン濃度の低下[6]、血中リン濃度の増加、エストロゲンまたはエストロゲン作用物質の増加[7]、コルチゾールの増加で分泌が増えます。
PTHは、骨や歯からカルシウムを溶かし、血中カルシウム濃度を安定させます。[8]
PTHはまた、アルドステロンとコルチゾールの分泌を増加させます。[9]
アルドステロンはRAAS系に関わるホルモンで、アルドステロンが分泌される途中の段階に分泌されるアンジオテンシンIIに血圧上昇作用があります。
コルチゾールは骨を溶かす作用があります。
ステロイド剤はコルチゾールを薬にしたものですが、副作用に骨粗鬆症があります。
PTHの過剰な分泌は、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞にカルシウムを沈着させ、動脈硬化を引き起こすことが指摘されています。[10][11][12][13][14]
睡眠時無呼吸症候群でカルシウム沈着性のアテローム性動脈硬化(冠動脈カルシウム:Coronary Artery Calcium)のリスクが増加します。
これによって高血圧となり、脳出血や脳梗塞、心血管疾患などのリスクが増加します。[15][16][17]
(AIで画像を作ってみました)
ちなみにこれは偶然かも知れませんが、同じ病室にいた脳梗塞患者の全員が、いびきをかいて眠っていました。
睡眠時無呼吸症候群で突然死が増えるのはこのためです。
探した限りでは直接的なメカニズムに触れた文献が見つかりませんでしたが、恐らくは酸欠によるストレスに起因していると思います。
日本の医学の教科書では、高血圧のほとんどが原因不明の本態性高血圧症と呼ばれ、85〜90%を占めます。
加齢によるものだとされていますが、おそらくは動脈へのカルシウム沈着による動脈硬化であると考えられます。
骨や歯を削った後に不要になった血中のカルシウムは尿に排泄されますが、排泄しきれなかった分は、
血管壁に沈着したり、結石になったり、肩の石灰化へとつながります。
これを異所性石灰化と言います。
僕は今までに、虫歯をした事が無いほど、歯が丈夫でした。
にもかかわらず、ここ最近になって、急に歯が脆くなりました。
骨密度は不明ですが(現状の骨密度測定はどの方法も精度が悪い)、骨も削っていたのかも知れません。
とても忙しかったり、生活でもストレスが度重なることが多かったです。
それと共に、よくいびきをかいていると言われていたし、自分のいびきで起きてしまうことも度々あったので、
ぐっすり眠った感も少ないことがしばしばありました。
特に年末からは、仕事や生活での疲労と睡眠不足を引きずったまま生活していました。
甲状腺機能低下やストレスホルモンの増加では脈拍が速くなります。
コルチゾールは胃酸の分泌を増加させて、胃にダメージを与えます。
また、コルチゾールが過剰分泌されるとクッシング症候群と呼ばれる症状を起こしますが、
お腹に脂肪がつきやすくなります。
これらのことから、前兆を一つずつ検証していくと、ストレスを契機にして血中カルシウムを消耗していたことが発端となったと考えられます。
そしてたまたま脳梗塞が起こりましたが、もしかしたら心臓だったかも知れないのです。
幸いにも術後の経過で血圧は安定しているため、血圧低下薬は処方されていません。
今後はワークライフバランスを見直してストレスを減らすことや、これからできる対策を続けていきたいと思います。
僕の行なっている対策については、効果を検証してから報告する予定です。
【参考文献】
[1]Alpha- and beta-adrenergic stimulation of parenchymal cell Ca2+ influx. Influence of extracellular pH.
J Biol Chem . 1984 Oct 25;259(20):12322-5.
[2]GPCR-mediated calcium and cAMP signaling determines psychosocial stress susceptibility and resiliency.
Sci Adv . 2023 Apr 5;9(14):eade5397.
[3]Calcium sequestration in the liver.
Cell Calcium . 1990 Nov-Dec;11(10):625-40.
[4]The regulation of OXPHOS by extramitochondrial calcium.
Biochim Biophys Acta . 2010 Jun-Jul;1797(6-7):1018-27.
[5]The role of calcium, calcitriol and their receptors in parathyroid regulation.
Nefrologia . 2009;29(2):103-8.
[6]Calcium regulates parathyroid hormone messenger ribonucleic acid (mRNA), but not calcitonin mRNA in vivo in the rat. Dominant role of 1,25-dihydroxyvitamin D.
Endocrinology . 1989 Jul;125(1):275-80.
[7]Estrogen receptors and biologic response in rat parathyroid tissue and C cells.
J Clin Invest . 1992 Dec;90(6):2434-8.
[8]Parathyroid hormone: chemistry, biosynthesis, and mode of action. Adv Protein Chem. 1982;35:323–396.
[9]PTH and PTH-related peptide enhance steroid secretion from human adrenocortical cells.
Am J Physiol Endocrinol Metab . 2001 Feb;280(2):E209-13.
[10]Parathyroid Hormone Stimulates the Endothelial Nitric Oxide Synthase through Protein Kinase A and C Pathways.
Nephrol. Dial. Transplant. 2007;22:2831–2837.
[11]Parathyroid Hormone Stimulates Endothelial Expression of Atherosclerotic Parameters through Protein Kinase Pathways.
Am. J. Physiol. Renal Physiol. 2007;292:F1215–F1218.
[12]Hypertension Secondary to PHPT: Cause or Coincidence?
Int. J. Endocrinol. 2011;2011:974647.
[13]Association of Serum Vitamin D and Parathyroid Hormone with Subclinical Atherosclerotic Phenotypes: The Dong-Gu Study.
PLoS ONE. 2017;12:e0186421.
[14]Independent Effects of Blood Pressure and Parathyroid Hormone on Aortic Pulse Wave Velocity in Untreated Chinese Patients.
J. Hypertens. 2017;35:1841–1848.
[15]Relation of Obstructive Sleep Apnea to Coronary Artery Calcium in Non-obese versus Obese Men and Women Aged 45 – 75 Years.
Am J Cardiol. 2014 Dec 1; 114(11): 1690–1694.
[16]Association between apnea-hypopnea index and coronary artery calcification: a systematic review and meta-analysis.
Ann Med . 2021 Dec;53(1):302-317.
[17]Relationship Between Sleep Apnea and Coronary Artery Calcium in Patients With Ischemic Stroke.
Front Neurol . 2019 Jul 31:10:819.
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