日本ではやせ型の人が比較的多い国ではありますが、
一方で、2019年の国民健康・栄養調査では、
肥満の人は男性が33%、女性が22.3%いると推定されています。
今回は肥満について、極端な事例を文献から紹介します。
肥満大国と言われるアメリカの実験研究の調査で、興味深い結果が出ています。
高カロリー食を続けるとどうなる
アメリカの健康な男性6人の被験者に、1日平均6000キロカロリーもの食事を一週間与えた実験です。[1]
この量は、一般的な食事の2〜2.5倍のカロリーに相当します。
この時のタンパク質:脂質:糖質の三大栄養素のバランス(PFCバランス)は、
15%:35%:50%となっています。
そして、検査期間中はベッドで安静にさせました。
つまり、俗にいうカウチポテト族と呼ばれるような生活を再現しました。
その結果、全員に平均3.5kgの体重増加と
2〜3日後に全身の脂肪組織でのインシュリン抵抗性と酸化ストレスが急激に増加しました。
カロリー消費量は、安静時のもので16%増加したものの、
三大栄養素における消費率は、タンパク質25%、脂質2%、糖質8%と計測されました。
この実験で興味深いのは、抗酸化酵素が増加したのと、
酸化した脂肪やALEs(終末脂質過酸化産物)が観測されたことにあります。
以前より、高脂肪食では活性酸素種(ROS)が増加することが知られています。[2]
抗酸化酵素が増加するのは、活性酸素種を打ち消すために身体が反応しているからです。
脂肪組織タンパク質解析では153個の異常タンパク質が同定され、
そのうちの130個が酸化、19個がカルボニル化(ALEs)、
17個がプーファによる過酸化脂質(オメガ6系:4-HNE)で変質したタンパク質(ALEs)でした。
そして酸化ストレスは細胞のブドウ糖取り込み口(GLUT4)を酸化させ、機能不全にさせていました。
GLUT4にはタンパク質のカルボニル化と4-HNEとアルデヒドによる変質が広範囲にわたりみられました。(ALEs)
血中の遊離脂肪酸濃度にはあまり影響がなかったことから、
酸化ストレスよってインシュリン抵抗性が発現したものと考えられます。
29人の健康な男女に8週間40%増加したカロリーを与えた実験では、[3]
全員に体重増加とインシュリン抵抗性が認められました。
なお、PFCバランスはタンパク質15%:脂質44%:糖質41%の典型的な高脂肪食です。
脂質が健康の鍵を握る
これらの実験から見られるように、現代的な食生活による問題がポイントになります。
それは高脂肪食(高プーファ食)です。(当然、オーバーカロリーも問題です)
[1]の実験から分かるように、脂肪の消費カロリーが2%ということは、
ほとんどが身体に蓄積されているということになります。
(糖質も8%なのでほとんどが脂肪に変換されていると考えられる)
それに続く酸化ストレスの増加とインシュリン抵抗性は、高脂肪食の結果であると考えられます。
PFCバランスで脂肪が多いというのは、こういったリスクを伴います。
現代食では特に、揚げ物、炒め物、ジャンクフードなどオメガ6というプーファ(多価不飽和脂肪酸)を多用しています。
実験でもプーファの過酸化脂質やALEsが観測されていることからも、それを如実に反映していると考えられます。
これまでたくさんの記事でお伝えしたように、健康の鍵を握るのは脂質です。
特に脂肪の量と質を見直すかが重要なポイントになります。
来月開催のオンライン講座では、理想のPFCバランスをお伝えします。
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【参考文献】
[1] Excessive caloric intake acutely causes oxidative stress, GLUT4 carbonylation, and insulin resistance in healthy men
Sci Transl Med . 2015 Sep 9;7(304):304re7.
[2] Mitochondrial H2O2 emission and cellular redox state link excess fat intake to insulin resistance in both rodents and humans
J Clin Invest. 2009 Mar 2; 119(3): 573–581.
[3]Effect of 8 Weeks of Overfeeding on Ectopic Fat Deposition and Insulin Sensitivity: Testing the “Adipose Tissue Expandability” Hypothesis
Diabetes Care. 2014 Oct; 37(10): 2789–2797.
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