その①はこちら
その①で紹介した現象は、約60年前に発見されていました。
それは、僕のブログでも何度も紹介しているフィリップ・ランドルが発見した
ランドルサイクル(糖ー脂肪酸サイクル)です。[1]
ランドルは、
『脂肪組織や筋肉中の中性脂肪が分解され、血漿中の遊離脂肪酸濃度が高くなると、
インシュリン感受性が低下し、しばしば耐糖能異常を伴う』
これを正しいとすると、やせ型の人に起こっている耐糖能異常が説明できます。
前編でやせ型の人は、ATPというエネルギー総量が少ないと書きました。
エネルギー総量が少ないということは、
身体の直接的なエネルギー源である糖を切らしてしまうこと、
また、ストレスなどのたくさんエネルギーを使う仕事に遭遇した時など。
身体に蓄えられた中性脂肪やタンパク質などを分解し、
それらを直接エネルギーにしたり、糖に変換することによって、
エネルギー不足を乗り切ろうとします。
中性脂肪の分解をリポリシス。
タンパク質の分解をプロテオリシスといいます。
脂肪やタンパク質を糖に変換することを糖新生といいます。
これらは主に低血糖を起因とし、血糖値を上げるために行われます。
理由は、糖は脳や赤血球などの直接的なエネルギー源になるからです。
また糖の方が素早く効率の良いエネルギー源になることから、
身体の中で利用できる糖が少ないと、糖の確保のためにこのようなことが起こります。
中性脂肪が分解されると血中の遊離脂肪酸の濃度が高くなります。
タンパク質が分解されるということは、筋肉やコラーゲン組織などを分解するため、
必然的にシワが出来やすくなったり、筋肉量も減少していきます。
このように女性に限らず、やせ型の人は、
糖質を切らしてしまうことで、リポリシスやプロテオリシスが起こることによって、
筋肉量が減少しやすく、遊離脂肪酸濃度が高くなり、食後の血糖値が高くなりやすくなります。
2020年のII型糖尿病におけるレビュー論文では、
血中の遊離脂肪酸濃度が高いほど、
インシュリン抵抗性が起こることや膵臓β細胞が破壊されることが指摘されています。[2]
つまり、まずはリポリシスやプロテオリシスを止めることが先決です。
なお、日本では統計によると、やせ型の男女の割合は、
男性3.9%に対し、女性が11.5%となっており、[3]
女性の方がおおよそ3倍となっていることから、
女性の方が糖尿病になりやすいという、この文献ができたのではないかと想像されます。
(男性の方がやせ型でも筋肉量が多いということもあるかも知れません)
元記事には参考論文が掲載されていましたが、
ランドルの論文が引用されていなかったのが不思議に思いました。
ちなみにランドルの論文は、今現在6500以上もの論文に引用されています。
(Google Scholar による引用数)
やせ型の人は、エネルギー総量の少なさゆえ、
運動にエネルギーを使う余裕は無いと思います。
ですので、記事では運動を勧めていますが、
筋トレや有酸素運動をしようと思っても中々できないと思われます。
しかも、筋トレや有酸素運動は、さらにリポリシスとプロテオリシスを促進しますので、
無理をせずに、やめておいた方が無難です。
ランドルが発見した高血糖になる仕組みを理解して、
糖のエネルギー代謝を回すことが一番の解決法になります。
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【参考文献】
[1] The glucose fatty-acid cycle. Its role in insulin sensitivity and the metabolic disturbances of diabetes mellitus
Lancet . 1963 Apr 13;1(7285):785-9.
[2]Recent insights into mechanisms of β-cell lipo- and glucolipotoxicity in type 2 diabetes
J Mol Biol. 2020 Mar 6;432(5):1514-1534.
[3] 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要:厚生労働省
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