昭和歌謡あれこれ Vol.21 草食系男子の走りか? 五十嵐浩晃『ペガサスの朝』 | 茶々吉24時 ー着物と歌劇とわんにゃんとー
私がパーソナリティを務めさせていただいている
エフエムあまがさきの番組
「昭和通二丁目ラジオ」木曜日。

昭和の歌をお送りする番組です。
今年度から、昭和歌謡のちょっと不思議な歌詞を掘り下げたり、
その曲の思い出を語る時間を設けています。

子ども時代にはよくわかっていなかったけど、
今この歳になって聞くと面白い「昭和の歌詞」を
番組内で深堀りするコーナー。


昨日は五十嵐浩晃さんの『ペガサスの朝』を深掘りしました。

『ペガサスの朝』は1980年11月リリース、
五十嵐さんにとって3枚目のシングルです。

ご本人の談によると、
20歳の時に男女四人で競技場に遊びに行った時に、
冒頭のフレーズ「熱くもえる♪」が、
不意に降りてきたんだそうです。
その後、この歌が明治チョコレートのCMソングに決まった時、
ちあき哲也さんに歌詞を書きなおしてもらったのだとか。

冒頭のフレーズは残っているので、
五十嵐さんの歌詞の良さを残しつつ、
肉付けされたのかもしれません。

爽やかサウンドのおかげで、
すーっと流してしまいがちですが、
「普通そのシチュエーションだったら、
違う展開になるでしょうに?!」
と突っ込まずにはいられない歌詞です。
二人が別のタイミングで仕上げたからかしら。

見てみましょう。

『ペガサスの朝』
(作詞:ちあき哲也  作曲:五十嵐浩晃)

熱くもえる まるでカゲロウさ
汗のしずくがとてもきれいだよ
めぐり逢いは誰もいない海
旅のはからい感謝したいのさ


主人公は旅先で彼女に出会ったのですね。
早朝だったのでしょうか、周りには誰もいません。
彼女は海辺で汗のしずくを光らせていたと。
状況によっては(満員電車の中とか)
暑苦しいだけの汗のしずくすらとてもきれいだと感じる、
ここまではエエ話です。


そうあの日から時はペガサスの翼
夢を背中にはばたいて
あなたとは恋といえない
友達でいたい


「あの日」とはいつのことでしょうか。
私は旅先で彼女に出会った日だと解釈しました。
時がペガサスの翼、というのは
「光陰矢の如し」ということかな?
彼女と出会った日からあっというまに時が過ぎた、
なぜって?それは恋しているから。
楽しい時間ってすぐにすぎるんだよね……
と、昭和歌謡の定石では、そうなるはず。

南沙織『17才』
サザンオールスターズ『チャコの海岸物語』、
中森明菜『スローモーション』などを聞いてもわかるように、
他に誰もいない海と男女の組み合わせは
恋愛に発展するものなんですよ。
普通は。

なのに、なんなの、この青年は。
友達でいたい?!
二人の時間はペガサスの翼なみに早く過ぎる、
一緒にいて楽しい、だけど友達でいたいの?


ハロー・グッディ・サンライズ
朝も生まれたて
サンキュー・グッディ・サンライズ
そしてあいたくて

混乱する聴き手をよそに、
主人公はとっても爽快な気分みたいです。
「ありがとう、太陽!!今日もいい日になりそうだ!
 そして会いたい!!」

友達やけど、
やっぱり会いたいんかいな。
ようわからんワ。


かけておいでぼくの日記から
愛の素顔をひとつ覚えたね
そうあの日から時はペガサスの翼
過去のいたでを飛びこえて
あなたとは風にふかれて
友達でいたい

ハロー・グッディ・サンライズ
朝も生まれたて
サンキュー・グッディ・サンライズ
そしてあいたくて


二番は、さらに状況が飲み込めない事態になっています。
ぼくの日記から駆けておいで、ということは、
印象的な出会いの後も、
あれこれ思い出を作ってきたのでしょうね。

”愛の素顔”っていったい何なのだろう?
古い昭和歌謡で使われるフレーズ
「夜明けのコーヒーを一緒に飲む」ことかしら?
そんな関係になってもまだ友達でいたいんですか?

それとも”愛の素顔”には別の意味があって
(どんな意味かは知らんけど)
本当は深い仲にはなっておらず、
ひたすら爽やかに
「今日もいい日になりそうだなぁ。
 彼女ともいい友だちのままでいたいナァ」
と思っているだけなのかも。
当時そんな言葉はなかったけど、
もしかしたら元祖 草食系男子なのかもね。

あるいは、恐怖の鈍感男子。
女の子の気持ちも知らず、
海に向かって走る森田健作くんみたいな男子なんだろうか?
朝日に向かって「ありがとー!!」って叫んでいる主人公の後ろで、
彼女は小さく「もう、浩晃くんのバカ」って
つぶやいているのかもしれません。


ハロー・グッディ・サンライズ
光る空の下
サンキュー・グッディ・サンライズ
ぼくら生きている


最後のフレーズはおそらく、
五十嵐さんの元歌詞そのまま使っているのではないかと思います。
というのも、五十嵐さんは
『ぼくらはみんな生きている』が大好きだったんですって。
あの、オケラだってアメンボだって生きているんだっていう歌です。

もしかしたら五十嵐さんの元々の歌詞は
愛だとか恋だとか、
そういうところを素通りした、
「太陽よありがとう、生き物万歳」な歌だったのかもしれませんね。

なんだかんだ言いましたが、
誰が聞いても爽やかで、口ずさみやすかったこの歌は
とてもヒットしましたね。
今聞いても古さを感じない名曲だと思います。

Youtubeにリンクしました。
アップ主さまありがとうございます。
当時の五十嵐さんの歌で聞いてください。

五十嵐浩晃『ペガサスの朝』


余談ですが、五十嵐さんは何かの番組に出演時、
「この歌を聞いた人の多くが
『ペガサスって、ああ、ツノがひとつ生えているやつね』と
 おっしゃるのですが、それはユニコーンです」
と言っているのを聞いて、爆笑してしまいました。
実は私も無意識にユニコーンを連想していました。
ペガサスは、宝塚歌劇の『ベルサイユのばら』のラストシーンで、
ガラスの馬車を引いてオスカルを迎えに来る、あの子ですね。
天馬なので、背中に翼があります。


余談をもう一つ。
シングルレコード『ペガサスの朝』のB面、
いまの言い方だとカップリング曲は『冬子の朝』ですって。
どんな朝なんだろう、そちらも気になるわぁ。



昭和歌謡のちょっと妙な世界観を深堀りした内容のブログは
「昭和あれこれ」というテーマにして投稿します。
これからも一緒に楽しんでいただけるとありがたいです。
まとめて読んでくださる方は、こちらをクリック。

茶々吉24時 テーマ別記事一覧「昭和あれこれ」

個別に読むならこちらをどうぞ。

第1回 あいざき進也「気になる17才」
第2回 郷ひろみ「花とみつばち」
第3回 西城秀樹「情熱の嵐」
第4回 あいざき進也「君のハートに火をつけて」
第5回 沢田研二「追憶」
第6回 追悼の意をこめて西城秀樹「ラスト・シーン」
第7回 郷ひろみ「洪水の前」
第8回 チューリップ「心の旅」
第9回 あいざき進也「シンデレラは6月生まれ」
第10回 沢田研二「ウィンクでさよなら」
第11回 フォーリーブス「ブルドッグ」
第12回 松本ちえこ「恋人試験」
第13回 あいざき進也「恋のペンダント」
第14回 「ハチのムサシは死んだのさ」VS「勇気一つを友にして」
第15回 郷ひろみ「誘われてフラメンコ」
第16回 山口百恵「夏ひらく青春」
第17回 あいざき進也「恋のリクエスト」
第18回 高田みづえ「硝子坂」
第19回 石野真子『私の首領』
第20回 太川陽介『Lui-Lui』


ブログランキングに挑戦しています。
もし記事を気に入っていただけたなら、
ポチッとクリックよろしくお願いします。
   ↓



人気ブログランキング