昭和歌謡あれこれ Vol.11 フォーリーブス「ブルドッグ」 | 茶々吉24時 ー着物と歌劇とわんにゃんとー
本日2回目の更新です。
私がパーソナリティを務めさせていただいている
エフエムあまがさきの番組
「昭和通二丁目ラジオ」木曜日。

昭和の歌をお送りする番組です。
今年度から、昭和歌謡のちょっと不思議な歌詞を掘り下げたり、
その曲の思い出を語る時間を設けています。

そのきっかけとなったのが あいざき進也さん。
私の中で突然のあいざき進也ブームが巻き起こったのでした。

『昭和のアイドル あいざき進也リバイバルマイブーム』
(茶々吉24時 2018年4月7日)

子ども時代にはよくわかっていなかったけど、
今この歳になって聞くと面白い「昭和の歌詞」を
番組内で深堀りするコーナー。

最近、このコーナーが好きだと、
お声がけいただくことが多くなりました。
ありがとうございます。

昨日は昭和歌謡のちょっと不思議な歌詞の中でも、
群を抜いて訳がわからない
フォーリーブス『ブルドッグ』に注目しました。

では、歌詞を見ていきましょう。


『ブルドッグ』
   (作詞:伊藤アキラ  作曲・編曲:都倉俊一)

 黙れ!うるさいぞお前ら
 泣くな!悲しみにまけるな
 こらえきれずに泣きだすのはヤセ犬だ
 眠れ!戦いは終わった
 傷は夜明けには薄れる
 悔しさだけを胸の奥に刻みこめ


いろいろな歌があるけれど、
いきなり「黙れ!」と上から命令されるのは
めったにないことです。
この数年前に
 ボクから逃げようたって 駄目だョ……
 逃げれば 逃げるほど ボクに近づくってわけ…
 だって地球はまるいんだもん!

(1971年『地球はひとつ』より)
 なんて こそばゆいことを言っていた人たちとは思えません。

どうやら戦いに負けて帰ってきた仲間を
兄貴分が叱責しているもよう。
「負けて泣くんじゃねぇ!馬鹿野郎!」
という感じでしょうか。
泣いている奴はヤセ犬っていうのも面白い。
負け犬じゃなくてヤセ犬ですよ。
みすぼらしいワ。
負った傷は夜明けには薄れるなんて、回復が早い!
私は子どものころ、この歌はもしかして
本当に犬の世界の話なのかと思ったことがありました。
犬が主人公の少年漫画「銀牙」みたいなイメージです。
ところが次の歌詞を聞いて「あれ?違うな」と。

 恋の傷跡なら いつか薄れてゆく
 男と男の戦いは永遠に消えない


いきなり恋が出てきてびっくりです。
犬にも恋はあるのかもしれないけど、
これはやっぱり人間の話だったんだ、と
子どもながらに思い返したのでした。
恋の傷は風化していくけど、
男同士の戦いは終わることがない、と。


 見ろ!俺の目を!
 そらすな!じっと見ろ!
 夜更けの嵐が心を刺す
 ニッチもサッチもどうにも
 ブルドッグ!


兄貴の目をじっと見つめる弟分たち。
先ほどまで泣いていた弟分の目には
涙が光っているのかも。
悔しさを噛み締めながら見つめ合う男たち。
なんだか映画のワンシーンみたいよ。

しかしそのあとの歌詞に唖然。
なんでそこにブルドッグ?!
日本歌謡史上、最も意味不明な展開ではありますが、
今はこの程度にしておき、続きを見ましょう。


 寄るな!女には用はない
 ダメだ!この先はくらやみ
 甘い言葉もバラの花も香らない
 そうさ!俺たちは男だ
 恋を忘れて生きられる
 今夜限りで恋人とはおさらばだ


そもそも、この男性たちは何者だと思います?
私はですね、浅田次郎さんの小説
「きんぴか」「プリズンホテル」などに出てくるような
任侠の世界の人たちじゃないかと思うんですよ。
組同士の小競り合いに負けて、
すごすご組事務所に戻ってきて
兄貴分に「泣くんじゃねぇ!」と喝を入れられている弟分たちなの。
なぜ親分じゃないのかって?
年齢的な問題と、この後の展開からして、
親分ではない、実働部隊じゃないかなと。

さて、そこに姐さん登場。
もちろん叱責している兄貴分の彼女です。
ドラマでも映画でも、姐さんは美人と相場が決まっています。
男同士が悔しさを噛み締めているところに、
ちょっと顔を出してしまった姐さんに向かって、
「寄るんじゃねぇよ!」と凄む兄貴。
今夜限りでおめえとはお別れなんだよ、と。

しかし、そこはそれ。
弟分たちの手前凄んだだけで、
本当は彼女のことを憎からず思っているわけですよ。

 今度めぐりあう日 それは花の咲く日
 俺の面影をだきしめて君は生きろよ


急に優しげになっております。
もしかして、兄貴は夜明けとともにもう一度
敵地に殴り込みをかけてムショ入りする覚悟なんでしょうか。
次に会うのは花の咲くころになると。
それまでは俺の面影を抱きしめて生きろって、
ロマンチックだなぁ。
この部分のハモりがとても綺麗なんですよね。
生歌でここまで歌えたなんて、
もしかしたらフォーリーブスは
ジャニーズ史上最も歌がうまいんじゃないかしら。
(KINKI KIDSもうまいけど)

この歌の作曲は都倉俊一さん。
私は都倉さんのことを勝手に「貴族」だと思っています。
メロディーの綺麗な曲が多いんですもの。
でも「ブルドッグ」はかなり激しいので、
私の中の都倉さんのイメージと違うのだけど、
この部分にくると
「あ、やっぱり都倉俊一さんの曲だな」と思います。


  見ろ!俺の目を!
 信じろ!この俺を!
 夜更けの嵐が心を刺す
 ニッチもサッチもどうにも
 ブルドッグ!


一番の歌詞の「見ろ!俺の目を!」は
弟分に向かって、
二番の歌詞の「見ろ!俺の目を!」は
姐さんに向かって言っているんでしょうね。
花の咲く日にもう一度会える、俺を信じろと。

もう夜更け。
外は嵐。
もしかしたら負け戦かもしれないけど、
兄貴は敵地に乗り込む気満々。

ここまではまるで小説か、ドラマです。
それなのに、それなのに。
いかに物語世界を構築しても、
最後の歌詞ですべて ワヤですやん。
なんなんですか、
ニッチもサッチもどうにもブルドッグってのは。

「ニッチもサッチも」の後ろには「〜ない」という
否定がくるのが正しい文法でしょ。
なのに名詞、それも犬、よりによってブルドッグ!(ワオ!)
作詞者 伊藤アキラさんは天才・奇才ですね。

私が思うには、伊藤アキラさんは
人気アイドルグループに、任侠世界の抗争を歌わせて、
そのまま終わらせちゃいけないと考えたのではないかしらん。
イメージに傷がつくから。
最後の最後に、それ以前の歌詞がすべて破壊されるくらいの
インパクトを与えようとしたんじゃないかなぁ。
知らんけど。
(出た!関西人の必殺「知らんけど」。
 つまり、すべては私の妄想であって、
 責任はよう持ちませんデという意味)

だからって、ニッチもサッチもどうにもブルドッグ……
常人には考えつきませんよ。

私ね、語呂があう他の動物を当てはめてみたんです。
もしよかったら一緒に歌ってみてください。

ニッチもサッチもどうにも キタキツネ!(コーン!)
ニッチもサッチもどうにも マンドリル!(キャッ!)
ニッチもサッチもどうにも フラミンゴ!(鳴き声不明)
ニッチもサッチもどうにも カンガルー!(パンチ一発)

しつこかったですか、すみません。
どれもこれも締まらないですよね。
あえて言うなら、カンガルーはパンチを食らわすイメージがあるので
「男と男の戦い」を表現できている気はしますね。

やっぱり一番の歌詞に「ヤセ犬」が出てくるので
犬である必要があったのかしら?
じゃあ、他の犬種で。

ニッチサッチもどうにも ポメラニアン!(クーン)
妙に可愛いだけ。
やっぱり
ニッチサッチもどうにも ブルドッグ!(ワオ!)
が正解ですね。

本当はブルドッグっておとなしいワンコなのに
この歌のせいでコワモテなイメージが定着しちゃったんじゃない?
誤解されちゃってかわいそう。


伊藤アキラさんの意味不明すぎる歌詞と
偉大な作曲家 都倉俊一さんのメロディーで、
この歌はとても盛り上がります。
ジャニーズでは後輩たちがライブで歌い継いでいるそうな。


YouTubeから画像をおかりしてきました。
アップ主さま、ありがとうございます。

この歌は振り付けも意味不明です。
なんでゴムバンド?
でも、あれなしで普通にリズムを刻んで歌うだけだったら、
ここまで売れていない気がするの。
ようわからんけど、面白い!
そのおかげで、一回見聞きしたら忘れられない歌になっています。

「夜更けの嵐が心を刺す」
のところで、ゴムを足にひっかけねばならず、
そこで下を向くため、
まともにマイクに声が入っていないのはご愛嬌。
そのせいで、口パクじゃないのもわかるしね。



ところでフォーリーブスのメンバーで、
どなたが一番好きでしたか?
私は北公次さんが好きでした。

江木俊夫さんも好きだったのだけど、
子役時代、「マグマ大使〜!!」と叫んで
ピロリローン!と笛を吹いていた、
あのイメージが強すぎて、憧れの対象にはならなかったナ。

この四人の中で、もうコーちゃん、ター坊がいないなんて寂しいワ。



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第1回 あいざき進也「気になる17才」
第2回 郷ひろみ「花とみつばち」
第3回 西城秀樹「情熱の嵐」
第4回 あいざき進也「君のハートに火をつけて」
第5回 沢田研二「追憶」
第6回 追悼の意をこめて西城秀樹「ラスト・シーン」
第7回 郷ひろみ「洪水の前」
第8回 チューリップ「心の旅」
第9回 あいざき進也「シンデレラは6月生まれ」
第10回 沢田研二「ウィンクでさよなら」


次回は学生時代の同級生からリクエストされた曲を
深掘りする予定です。


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