昭和歌謡あれこれ Vol.8 チューリップ『心の旅』 | 茶々吉24時 ー着物と歌劇とわんにゃんとー
本日2回目の更新です。
私がパーソナリティを務めさせていただいている
エフエムあまがさきの番組
「昭和通二丁目ラジオ」木曜日。

昭和の歌をお送りする番組です。
今年度から、昭和歌謡のちょっと不思議な歌詞を掘り下げたり、
その曲の思い出を語る時間を設けています。

そのきっかけとなったのが あいざき進也さん。
私の中で突然のあいざき進也ブームが巻き起こったのでした。

『昭和のアイドル あいざき進也リバイバルマイブーム』
(茶々吉24時 2018年4月7日)

当時はよくわかっていなかったけど、
今この歳になって聞くと面白い「昭和の歌詞」を
番組内で深堀りするコーナー。
深堀りを超えて、ときには私の妄想劇場の場合もあります。

8回目の昨日は、チューリップ『心の旅』を取り上げました。


さっそく歌詞を見ましょう。

『心の旅』 (作詞作曲:財津和夫)
ああだから今夜だけは 君を抱いていたい
ああ明日の今頃は 僕は汽車の中

旅立つ僕の心を知っていたのか
遠く離れてしまえば 愛は終わるといった
もしも許されるなら 眠りについた君を
ポケットにつめこんで そのままつれ去りたい

ああだから今夜だけは 君を抱いていたい
ああ明日の今頃は 僕は汽車の中

にぎやかだった街も 今は声を静めて
何を待っているのか 何を待っているのか
いつもいつの時でも 僕は忘れはしない
愛に終わりがあって 心の旅がはじまる

*ああだから今夜だけは 君を抱いていたい
 ああ明日の今頃は 僕は汽車の中

*繰り返し


これまで 面白おかしく深堀りしてきた歌とは
ちょっと違う感じがします。
従来のフォークにビートルズの影響が加わった感じ。
いわゆるニューミュージックの時代が来た、
といった曲です。

歌詞はとてもシンプルでわかりやすい。
ある男性が、愛しい人を抱きしめている。
でも明日には彼女とは別れて、
自分一人で汽車に乗っているだろう……と。
彼女を愛しく思う気持ちに嘘はなく、
できるならポケットに詰め込んで連れて行きたいくらい。
もちろんそんなことができるはずはない。
だから今夜だけは君を抱いていたい、というリフレインです。

どんな事情があって、彼が夜汽車で旅立っていくのか、
そのあたりは聞く人の想像に任されていて、
それぞれなんとなく自分だけの物語をふくらませて、
納得していたのではないかしら。

ちょいと調べてみると、
この曲はチューリップの3枚めのシングルなんですね。
(アマチュア時代を入れると5曲)
1971年に福岡で結成されたチューリップが、
上京したのが1972年。
上京直前に財津さんは、当時憧れていた女性を誘って
一緒に食事をしたそう。
でも、それだけのことで、思いを打ち明けることも、
ましてや「君を抱いて」なんてこともなかったのだけれど、
そこを膨らませてこの曲を作ったそうです。
同時に、この曲が売れなければ、
あきらめて福岡に帰ろうと思っていたのだそう。

ということで、この歌に描かれている別れは、
彼が夢を実現するために上京するためのものでした。

メロディ自体は明るいのに別れの歌、
別れの歌とわかっても、やはりどこか明るい。
とても不思議な感じがする歌だと、
ずっと思っていたのですが、
大きな夢があっての別れかと思うと、
納得できました。

財津さんの経験からの「正解」がわかったところで、
もう一つ、私の心に残っている、別の解釈をご紹介します。

今から約30年前のこと。
何気なく読んでいた朝刊の読者投稿欄に
思わず引き込まれてしまいました。
俳優の吉田栄作さんが『心の旅』をカバーした頃の話なので、
おそらく1990年か、1991年のことだと思います。

投稿者は、二十代の男性で、お仕事は保険関係でした。
ある時、業務の一環で、顧客である中年女性数人と
カラオケに行った時の話を書いていました。
自分の母親や、祖母くらいの年代の女性、
しかも顧客とのカラオケで、
何を歌ったらいいのか迷った投稿者は、
当時吉田栄作が歌って流行っていた『心の旅』をチョイス。
手拍子なんかも起こり、
まずまずの結果にほっとしていたのですが、
ふと見ると隣に座っていた女性が泣いていたんだそう。
自分の歌のどこがいけなかったのか、
なぜ泣いているのか、驚いた投稿者が尋ねると、
その女性は
「(今あなたが歌った歌は)私のことだと思った」
と言うのですって。
詳しく聞いてみたら、
その女性の彼(許婚?)は
第二次世界大戦で兵隊にとられ、戦死。
出征する前の日に会ったこと、
そして次の日に彼は汽車で出発して行ったことが思われて、
泣けたのだと語ったそうです。
投稿者は、そういう時代があったこと、
辛い時代を生き抜いた人たちと、
今自分は関わらせてもらっているのだと気付いた……

というような内容の投稿記事でした。
1990年か、1991年だから、戦後45年経っています。
その女性が終戦時に20歳だったと仮定したら、65歳。
十分あり得る話です。

その女性の体験を重ねてみると、
繰り返し歌われる(*)部分に、
重みや哀しみが加わってきます。
夜汽車に乗っている男性の服装や髪型までも、
最初の解釈での想像とは違ってくるのではないでしょうか。

聞く人の立場や体験によって、
いろいろな物語に変わるのが名曲だと、
しみじみ思います。

それにしても、
どうしてあの新聞の読者投稿記事を
切り抜いておかなかったのか、
とても後悔しています。

それでは、あなたのお好きな物語を重ね合わせて、
お聞きください。
YouTubeからお借りします。
アップ主さま、ありがとうございます。




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これからも一緒に楽しんでいただけるとありがたいです。

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