昭和歌謡あれこれ Vol.19 相手はいったいどんな人? 石野真子『わたしの首領(ドン)』 | 茶々吉24時 ー着物と歌劇とわんにゃんとー
本日2回目の更新です。
私がパーソナリティを務めさせていただいている
エフエムあまがさきの番組
「昭和通二丁目ラジオ」木曜日。

昭和の歌をお送りする番組です。
今年度から、昭和歌謡のちょっと不思議な歌詞を掘り下げたり、
その曲の思い出を語る時間を設けています。

子ども時代にはよくわかっていなかったけど、
今この歳になって聞くと面白い「昭和の歌詞」を
番組内で深堀りするコーナー。


昨日は石野真子さんの曲を深掘りしました。

石野真子さんはお好きですか?
私は好きです。
力みがなくとても良い感じのかただなと。

と言っても、それは現在の石野真子さんのこと。
1970年代、アイドルとして活躍されているときは、
そうでもなかったです。
言葉を飾らずに言うと、そんなに好きではなかった。
というのも、デビュー後しばらくは、
明らかに男性のみにターゲットを絞った曲ばかり
歌っていたので。
「100万ドルの微笑み」というキャッチコピーがぴったり、
笑顔が可愛く、男性陣は目論見通りメロメロなようで、
それを横目で見ながら「ふーん」と思っていたんですよ。
「ふーん」には「面白くない」という気持ちがこもっています。
そこに僻みがないかと言われると、大いにありました。

石野真子さんのデビューは1978年。
作詞が阿久悠さん、作曲が吉田拓郎さんという
素晴らしいコンビによる『狼なんか怖くない』は、
タイトルのインパクトもあり、
オリコン17位、ご自身の楽曲で三番目のヒットだそう。
ちなみに1位は『春ラ!ラ!ラ』、2位は『ジュリーがライバル』。
(『春ラ!ラ!ラ』はまた改めて深掘りしたいものです)

今回は『狼なんか怖くない』で順調に滑りだしたあと、
シングル2曲目として発表された『わたしの首領』を深掘りしました。


『わたしの首領』
(作詞:阿久悠  作曲:吉田拓郎)

わたしの首領と呼ばせて下さい
わたしの わたしの首領と呼ばせてください

いたずらで口にした ビールのように
出会いのあなたは にがかった にがかった
はじめての香水も 迷惑そうに
自然がいいよと 横向いた 横向いた
野蛮な人だと 思ったけれど
あなたは一味 違ってた
わたしの首領と 呼ばせてください
わたしの首領と 呼ばせてください


まずは首領と書いて「ドン」と読ませる。
なんなのよ、ドンってのはと、
当時のわたしは思っていましたし、
今も思っています。
阿久悠さんは、当時広島でおこっていた
暴力団の抗争にヒントを得て、
「首領」と書いて「ドン」と読ませたそう。
アイドルからは最も遠いイメージの単語を持ってくる、
天才は常人の発想からは解き放たれていますね。

この主人公がドンと呼びたいお相手は、
これまで出会ったことがないタイプだったんですね。
気を引こうとしてもダメ。
おそらく香水だけではなく、
背伸びしてお化粧を濃くしたり、
派手なお洋服を着てみたりしたのではないでしょうか。

しかし「ドン」はそういうのがお嫌いなのね。
しかも丁寧に説明したり、やんわり諭してなんかくれない。
ひとことボソッと言って、プイと横向いちゃう。

これまで男子にモテてちやほやされ慣れているもんだから、
逆にこういうタイプに惹かれるっていうのは、
少女漫画の王道ですワ。
それは理解出来る。
だけどなんで わたしの「ドン」なのだ?!

本来ドンは、スペイン語の男子の敬称。
ということはミスターとか、ムッシュと同じなのでしょう。
けれど日本で「ドン」といえば、
ちょっと怖い集団のトップだと思っちゃいますよ。


竜巻がこの胸で 吹き荒れるよう
夢みる恋など こわされた こわされた
人生という言葉 考えながら
私は両手を あげました あげました
変わった奴だと いわれるけれど
あなたが一人と きめました
わたしの首領と 呼ばせて下さい
わたしの首領と 呼ばせて下さい

わたしの首領と呼ばせて下さい
わたしの わたしの首領と呼ばせて下さい


これまで男子にちやほやされ、
優しくされることに慣れているので、
ぶっきらぼうな対応に、心がかき乱されるんですね。
だからって「人生」にまで飛躍するとは、
思い込みが激しい性格の女の子かもしれません。
「まいりましたー」と両手をあげております。

男性の方はいたって冷静。
ボソッと「お前って変わってるな」。
そういう態度も彼女にとって、きっと新鮮なんでしょうねぇ。
ところで、あなたが一人と きめましたは、
日本語として、少し足りない気がします。
「あなたは私にとって、かけがえのない人」
「たった一人、想いを寄せる人」
という意味なんでしょうけど。
しかし音数との兼ね合いで、そんなに文字数を使えない。
考え抜いての「あなたが一人と きめました」
すっきりしている。
やっぱり阿久悠さんやわ。

しかしこの歌の最後まで聞いても、
二人が恋人になっていないことがわかります。
あくまでも女の子が一人熱を上げている感じ。

100万ドルの微笑みの石野真子を
そんなにも夢中にさせる「わたしのドン」って
どんな人だと思いますか?
当時の私はそんなことに全く興味がなかったんですが、
今はとても気になります。
その後の経緯からいうと、長渕剛さんなんでしょうか。

今の私は「首領=ドン」という字面から、
連想するのはただ一人、松方弘樹さんです。
子分の前ではドスをきかせているのに、
石野真子ちゃんに
「私のドンと呼ばせてくださいぃ〜い〜い〜」と言われ、
汗を拭き拭き当惑している兄貴・松方。

だめ!!
全然歌の世界にマッチしない!
だから余計に気になる、お相手はどんな人?
そんなことを考えながら聞くと面白いかもしれません。

クリックするとYoutubeの動画に飛びます。
埋め込み禁止の動画なので、リンクだけさせていただきますね。
  ↓
Youtube「石野真子 わたしのドン 1978」

ほぼスッピンでこの可愛さ。
そりゃ、男子はみんな「ドンと呼ばれたい」と思ったことでしょう。
しかし女子はどう思っていたのでしょう。
わたしは最初に書いたように「フーン(横目)」でしたけどねぇ。
「わたしも彼のことドンって呼ぼうかなぁ」って
思っていた人はいらしたのかしら?
私が思うに『狼なんか怖くない』にしても
『わたしの首領』にしても、
狙いはあくまでも男子のハート、
同性の共感なんか全然期待せずに作られた曲のように思います。
誰にでも好かれたい、なんてムシのいいことは捨てた、
潔い作戦じゃないですか。

余談ですが『わたしの首領』の次に出された
3作目のシングルのタイトルは『失恋記念日』。
どうやらドンに想いは通じなかったもよう。

石野真子さんのご結婚や恋愛事情は、
ワイドショーなどで存じ上げております。
良い悪いは別として、喜び悲しみを幾つも乗り越えて、
今の石野真子さんがいらっしゃる。
今の石野真子さんの雰囲気の良さは、
人生において無駄なことは何一つないと、
教えてくれているように思います。


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