こんにちは。
ドバイワールドカップデー展望の中編をお送りします。前編はこちらから↓
それではスタート。
3/30 23:25 GⅠドバイゴールデンシャヒーン(D1200)
※日本馬の重賞勝利数は交流重賞を含んでいます。
上半期のダートスプリント頂上決戦です。国際色豊かな他レースと対照的に、三か国の英傑たちが激突します。地元UAEから5頭、ダートでは負けられないアメリカから5頭、そして日本から4頭の、14頭立てです。
UAE調教馬は実績的に一枚劣る印象ですので、日米の争いになのではと思います。
日本の大将格は「温故知新」リメイク(川田将雅騎手)でしょう。中央・地方・韓国・サウジで重賞4勝と馬場不問で遠征も全く問題なし。前年の中東遠征では昨年のエクリプス賞最優秀短距離馬である「強大な権力者」エリートパワーをはじめとした強力なアメリカ勢の前に膝をつきましたが、それでも健闘をみせました。今年初戦のGⅢリヤドダートスプリントは余力すら感じるほどの快勝を収め、いよいよ馬体は完成の域に近づいてきています。サウジより層を厚くしたアメリカ勢すら横綱相撲で打破できる期待感をもてます。
そんなリメイクを昨年のJBCスプリントで封じたのが2年連続でNAR年度代表馬に輝いている「園田の英雄」イグナイター(笹川翼騎手)。好位追走から先行勢を競り落とし、後方勢の末脚を完封する綺麗な競馬で、中央馬の壁すら打ち破りました。今回は最内枠に入り、迷いなく自分の得意な競馬ができるでしょう。「大井の無敗三冠馬」ミックファイアともども、ダート新時代の第零章はあまりに鮮烈で、このタイミングでこういった馬が出てくるのは、競馬の神様も面白いことをするなあと思わざるを得ない。前走の敗因は距離で片付けられます。園田から中央へ、そして一足跳びに世界へ。しかも笹川騎手で。こんな挑戦ワクワクせずにはいられない。
日本から参戦する個性派はまだまだいます。「巨躯の首領」ドンフランキー(クリスチャン・デムーロ騎手)。最高体重は598キロを記録する巨体が目を引きますが、それでいて強い。先頭に躍りだしたかと思うと大迫力で粘り込む競馬で15戦7勝、重賞2勝。惜しむらくは昨年のJBCスプリント回避でしょう。なまじ大きいだけに脚への負担も大きいのだろうなと思うのですが、今年はフェブラリー9着から大きな問題なくドバイ遠征へとこぎつけることが出来ました。世界中にあの巨体が逃げる様子を見せつけることができるなんて、これまたワクワクせずにはいられない。……なんで池添騎手じゃないん?
日本馬ラストの紹介は「長閑な釣り人」ケイアイドリー(クリストフ・ルメール騎手)。門別で重賞1勝で、GⅠ初挑戦となった昨年のJBCスプリントは9着。前走は海外に初挑戦してリヤドダートスプリント6着でした。スプリント能力は水準以上のものを有していますが、正直この舞台は格上ばかり。どこまで通用するかという見立てとなります。
推定1番人気はリメイクでしょうが、サウジにいなかったアメリカ勢2頭がとりあえずの対抗馬。
ノットディスタイム産駒の6歳騙馬、「湖沼の音楽家」シベリウス(ライアン・ムーア騎手)。前年の覇者です。前年のドバイゴールデンシャヒーンは非常に熱いレースで、エクリプス賞短距離部門2位のガナイトとホプキンスの競り合いを最内からシベリウス、大外から22年の覇者スイッツァランドが強襲し、決着はハナ差でした。シベリウスはその後3連敗を喫してダートスプリント王争いからは脱落しましたが、12月から去年と全く同じローテーションで2連勝と復調。去年は最内枠の妙もありましたが、今年は6番枠。先行する位置取りにつけたいところです。
続いて、ファイアリングライン産駒の5歳牡馬、「望月の始祖」ナカトミ(ジェイミー・スペンサー騎手)。エリートパワーとガナイトという23年のダートスプリント2強に食い下がったBCスプリント3着が評価できますが、叩き仕上げとはいえ前走のリステッドでシベリウスに敗れていることと、初の海外遠征であることが気になります。なんでこの名前になったのかはよく分かりません。
その他、
アメリカ代表/クオリティロード産駒の6歳牡馬/昨年は僅差の4着、ドンフランキーとハナ争いをするであろうホプキンス(ルイス・サエス騎手)
アメリカ代表/ハードスパン産駒の5歳牡馬/前年エクリプス賞最優秀調教師に輝いたモット師が送り出す前走リヤドDS3着馬ボールドジャーニー(ランフランコ・デットーリ騎手)。
UAE代表/オックスボウ産駒の7歳騙馬/ロシアでデビューしドバイWCデー4年連続出走の重賞3勝馬タズ(タドホグ・オシェイ騎手)。
UAE代表/フラッター産駒の6歳牡馬/長期休養明けの前走首GⅢアルシンダガスプリントを6 3/4馬身差で圧勝した重賞2勝馬ムーヒーブ(ベン・コーエン騎手)。
こんなところです。
3/30 24:10 GⅠドバイターフ(T1800)
日本4頭、UAE3頭、イギリス3頭、アイルランド2頭、香港2頭、フランス1頭、アメリカ1頭、以上16頭立てのレースです。一度出走メンバーをオリジナル二つ名と共にさらってみます。
1「巨河の盟主」カイロ
2「桜の果」カリフ
3「鼠神の牙」キャットニップ
4「遠洋の光」ダノンベルーガ
5「日本総大将」ドウデュース
6「勝利の郵便」ファクトゥールシュヴァル
7「不屈の愛国王」ルクセンブルク
8「北の旅人」ロードノース
9「大都会の眼差し」マテンロウスカイ
10「堅物な弟」メジャードタイム
11「群青の顕界」リアルワールド
12「砲塔の冠」サンドナート
13「望夜の帝」ストレートアロン
14「逆さ船の航海士」ヴォイッジバブル
15「真珠の鐘楼」ナミュール
16「陶酔の香」ナシュワ
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推定1番人気は「日本総大将」ドウデュース(武豊騎手)。GⅠ3勝、昨年は有馬記念を勝利し、イクイノックス後の日本競馬において、牡馬の横綱に君臨しています。その視線はすでに10月のフランスへと向けられているはずで、調教でもハーパーを子ども扱いしながら猛時計を記録しました。レジェンドの精神的支えでもあったという特別な馬が、昨年は出走する事さえ叶わなかった舞台へと歩を進めます。獣医師検査も一発クリアでひとまずは安心です。改めて、武豊騎手の勝利というのは、全ての競馬ファンの活力になるということを感じます。日本競馬の希望となるような走りを期待しましょう。
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推定2番人気は地元UAEの最有力「堅物な弟」メジャードタイム(ウィリアム・ビュイック騎手)。ゴドルフィン×アップルビー師が兄レベルスロマンス(ドバイシーマクラシックに出走)とともに自信をもって送り出す、6戦5勝2着1回の天才ホースです。勝利したレースではすべて1 3/4馬身差以上の差をつけています。
ジェベルハッタの振り返り記事で書いたように、日本馬の壁となって立ちはだかってきました。競馬スタイルは好位抜出しの横綱競馬。真横の枠のドウデュースよりは前にいると思われます。
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推定3番人気はイギリス馬最有力の「北の旅人」ロードノース(ランフランコ・デットーリ騎手)。前人未到のドバイターフ四連覇がかかっています(二回目の優勝は誰かさんのおかげで同着でしたが)。去年にダノンベルーガを封じて三連覇を達成してからは長期休養を取り、復帰は11か月後。地元英国のGⅢで2着でしたが、勝利した馬はアダイヤーの半弟というんだからかなりの素質馬なんでしょう。それまでの臨戦過程がどんなものであってもドバイターフの1着だけは譲らない、そんな馬なので日本にとってはかなり厄介な相手です。
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推定4番人気は日本馬の副将といっていいでしょう。「遠洋の光」ダノンベルーガ(ジョアン・モレイラ騎手)。モレイラ騎手は継続騎乗5戦目となります。去年の2着馬はGⅠタイトルに手が届かないもどかしさを抱えたまま再びドバイの舞台に帰ってきました。瞬間的な加速は現役場の中でも随一とは思うのですが、反応が若干悪かったり、馬体が理想的な状態でなかったりと、能力とパフォーマンスがなかなかかみ合わないなという印象です。ジャパンカップ6着も、掲示板組の豪華さを考えると健闘と思っていいのですが、どうにも惜しい印象がつきまといます。2年前の共同通信杯以来の勝利は一体いつになるのか。あるいはここか。
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推定5番人気はアイルランド馬の最有力、「不屈の愛国王」ルクセンブルク(ライアン・ムーア騎手)。12ハロンもこなせる馬だと思うので、邪推ですがなんとなくオーギュストロダンとの使い分けといった感じもあります。GⅠ3勝ながら、去年はタタソールズ金杯制覇以降にGⅠ2着3回。大崩れもしなければ突き抜けもしない競馬が続いています。昨年における名レースの一つ、アイリッシュチャンピオンステークスでの4頭大激戦や香港カップで「浪漫の闘士」ロマンチックウォリアーに肉薄するなど、自分の力をレースですべて出し切るすべは心得ているように思います。前走は大外枠+サウジの気分屋な芝に足を取られた感もあり、むしろ良い叩きになっているかもしれません。叩き2戦目で無敗を誇っているという実績もあります。
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推定6番人気は香港馬の最有力、「逆さ船の航海士」ヴォイッジバブル(ミカエル・バルザローナ騎手)。最内枠に入りました。香港競馬の二強と言えば「現在進行形の伝説」ゴールデンシックスティと「浪漫の闘士」ロマンチックウォリアーですが、その二強に次ぐ位置にいます。12月の香港マイルでゴールデンシックスティの2着、1月のスチュワーズカップでは二強不在の中完勝でGⅠ初制覇を達成し、2月の香港ゴールドカップではロマンチックウォリアーにただ1頭追いすがり2着。イウ調教師は海外遠征にかなり積極的な姿勢をみせており、将来的には日本遠征も視野に入るのではないでしょうか。香港の新時代を担う馬として注目です。
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推定7番人気は欧州牝馬の代表、「陶酔の香」ナシュワ(ホリー・ドイル騎手)。カルティエ賞最優秀古馬にもノミネートされた名牝は、僚馬ロードノースとともに初の中東遠征へと挑みます。GⅠ3勝はいずれも牝馬限定戦ですが、昨年の下半期には積極的に牡馬混合戦にも挑んで、インターナショナルSは「シャドウェルのスナイパー」モスターダフに真っ向勝負を挑んで2着、愛チャンピオンSは大外強襲で4頭大激戦を演出し微差の3着、クイーンエリザベス2世Sは重馬場と状態の悪さに苦しみ6着敗戦。後方待機からの豪脚は牡馬に少しも見劣りしません。フランスクラシックを女性騎手として初めて制するという偉業を共に成し遂げた心の相棒ホリー・ドイル騎手とともに、大外枠という不運を乗り越えて牡馬を蹴散らす用意は整っています。
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推定8番人気はフランスからただ1頭の参戦となる「勝利の郵便」ファクトゥールシュヴァル(マキシム・ギュイヨン騎手)。成績見たら面白すぎて笑えて来るのですが、去年の6戦は3着2着3着2着3着2着。マイルのGⅠ戦線に初めて乗ったにもかかわらずこんな調子なので、強いのは間違いないのですが重賞1勝馬に甘んじています。「紳士な主人公」パディントンや「テンからかませ」ビッグロックの被害者ポジションとして定着してしまいましたが、地味にGⅠ初挑戦でもイギリスへの初遠征でも崩れないあたり、本当に堅実という表現があてはまる。善戦マンはドバイの地で父リブチェスターに産駒初のGⅠを届けることができるか。
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推定9番人気は日本のマイル女王、「真珠の鐘楼」ナミュール(クリスチャン・デムーロ騎手)。上半期はフォームを崩しましたが、下半期はマイル界を見事統一。香港マイルでも日本馬最先着の3着で、「府中の歌姫」ソングライン以後のマイル戦線において女王として君臨しています。1ハロンの距離延長ではありますが、オークス3着・秋華賞2着の実績が非常に心強い。外枠に入れられてしまいましたが、この馬が逆境になるほど強いのはマイルCSで思い知りました。初の海外遠征となりますが、馬群を叩き割る末脚を見せてくれることを期待しましょう。
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推定10番人気は日本馬最後の紹介となる「大都会の眼差し」マテンロウスカイ(横山典弘騎手)。マテンロウ冠で有名に寺田千代乃さんはアート引越センターの創業者です。魑魅魍魎が跋扈した中山記念において、好位追走からただ1頭ドーブネを捉え切り突き放す完勝を収めました。3着「二色の地上絵」ジオグリフ、4着「朝日は昇る」ソールオリエンス、その他エルトンバローズやヒシイグアス、ソーヴァリアントという相手関係を考えてもとても価値ある1勝でした。そもそも中山記念自体が海外の前哨戦としては非常にちょうどいい1戦(近年だけ見てもウインブライトやパンサラッサがいますし)なので、重賞実績のなさでいくら軽視されてようと侮ることはできません。しかしまあ、ユタカさんとノリさんがそろってドバイ行くとは。ノリさんなんか今年は息子たちより重賞勝ってるし。
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以上有力10頭をグダグダと紹介しました。
香港の王道路線を歩んできた「望之夜の帝」ストレートアロン(ブレントン・アヴドゥラ騎手)、
アメリカ芝路線を歩んできたペガサスWCT3着馬「鼠神の牙」キャットニップ(クリストフ・ルメール騎手)、
ドバイに移籍したのち8~9ハロンで安定した成績を見せる「砲塔の冠」サンドナート(パット・ドッブス騎手)、
中東を渡り歩いているゴドルフィンのベテランホース「群青の顕界」リアルワールド(ケヴィン・ストット騎手)、
愛2000ギニー2着馬「巨河の盟主」カイロ(ウェイン・ローダン騎手)、
ドイツからバーレーンに移籍して前走ネオムターフカップ3着の「桜の果」カリフ(アドリー・デフリース騎手)、
以上16頭となります。
OUTRO
後編(ドバイシーマクラシック・ドバイワールドカップ)も続けて書きます。ギリギリでの投稿になったらごめんなさい。
それではまた。