足並み揃えて ◇11 | 有限実践組-skipbeat-

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 いつもありがとうございます。一葉です。

 弊宅500記事を記念して、蒼々様からお与かり致しました原作沿い記念リクエストの続きをお届け致します。


 お愉しみ頂けたら嬉しいです。

 前のお話はこちら↓

 足並み揃えて【1 おまけ 10】



■ 足並み揃えて ◇11 ■





 アウトドアスポンサーから提供されている山小屋は2階建て。

 そしてここを利用する社員が男女別に宿泊できるようになっているのだろう、階段を上がると部屋は左右に別れていて、8畳ほどのそれぞれの部屋には2段ベッドが3つずつ設置されていた。


 その左の部屋を俺が、右側の部屋を最上さんが使用している。



 手作り露天風呂を上がってすぐ、俺達は部屋に戻った。服に着替えるためだった。

 それを手早く済ませたにも拘わらず、一階に戻ると外はバケツをひっくり返したような土砂降りになっていて、太鼓を小刻みに連打するような雷の音も聞こえていた。


 夕刻前だというのに空は墨を落としたように真っ黒だった。



「 わああ、すごい雨と風。急いで窓を閉めちゃいますね 」


「 そうしよう。それと念のためにカーテンも 」



 最上さんの動きに合わせて足早に窓に近づく。


 オープンテラスに設置されているテーブルとイスは固定式。だから風で飛ばされることはないはずだ。だが屋根代わりのターフは激しく揺さぶられていて、強い風に煽られ雨が小屋まで吹き込み始めていた。


 山小屋の中に電気を使った照明器具の類は無く、昼間は太陽光が、夜はランタンと月明かりだけが光源だった。


 だからだろう。

 俺の言葉で顎を弾き大きく目を見開いた最上さんが、近づいた俺を見上げた。



「 でも敦賀さん、カーテンまでひいちゃったらただでさえ暗いのに部屋の中が真っ暗になっちゃいますよ? 」


「 風雨対策だから仕方ない。これだけ強い風だと折れた枝が飛ばされてくるかもしれないだろ。もしそうなった時にカーテンが引いてあれば万が一窓ガラスが割れたとしてもある程度はガラスの飛散を防ぐことが出来るんだ。だから… 」


「 なるほど、了解です。……きゃぁあぁっっ!!! 」



 とつぜん雷鳴が轟いた。

 小太鼓から大太鼓に変わった演奏が更に大きく腹を揺さぶる。


 山の天気は変わりやすいと言うけれど、それにしても豹変し過ぎだと思った。



「 よし。次はキッチンで水を汲んでおこう 」


「 え?? 」


「 このままだと水が使えなくなる可能性がある。この小屋の水は川からポンプで引いて来ているんだ。増水しすぎるとポンプが動かなくなるかもしれないから 」


「 うそ?ここって水道が通っている訳じゃないんですか? 」


「 ここは標高が高いからね。街のようになんでも簡単に設置は出来ないんだ。

 ポンプで供給され排水となった汚水はシンクを通り、最終浄化槽でホーラー剤というバクテリアの力を借りて浄化されるシステムを導入している。

 防犯カメラを動かすために電気は通したんだろうけど、それでも必要最低限に抑えている 」


「 つまり、冷蔵庫とシャワーだけ? 」


「 あと2階にコンセントが一つあるだけだ。携帯の充電をそこでしたから、俺 」


「 そうだったんですね。こうやって蛇口から水が出ていたから、てっきり水道が通っているのかと思っていました 」


「 普段使っているものがそこにあると違いに気付きにくいよな 」



 鍋にいくつも水を汲んだ。

 それで思い出したのか、最上さんが、あっ…と大きな声を上げた。



「 あっ、敦賀さん!!カレーを忘れていました。外に置きっぱなしでした! 」


「 え?カレー? 」


「 私、ちょっと行って取って来ます! 」


「 は?ちょっ…待って、キョーコちゃん!!いま?外の状況判ってる?!この土砂降りなんだ。そもそも外に出なくていいよ 」


「 でもすぐそこですよ?!あの壁を隔てた向こう側!大丈夫。オープンテラスから回ってすぐですから 」


「 ダメだって!テラスだって雨でビチャビチャになっていたのをいま見たばかりだろう。屋根があっても意味をなさなくなっている。カレーだってきっと雨晒しになっているよ 」


「 大丈夫です!だって露天に入る前にブロックで壁を作った中に置きましたから 」


「 キョーコちゃん!!せっかく着替えたのに今度は雨でずぶ濡れになる。雷だって真上にいるんだ。もし落雷したらどうする?! 」


「 もう!こんなこと言い争っている時間の方がもったいないです。大丈夫ですよ、敦賀さん。だって落雷に当たるなんて宝くじに当たるより絶対確率低いですから!それに、濡れたらまた着替えればいいんです。いまは食べ物のほうが大事!じゃ、行って来ます!! 」


「 ちょっと待てって!!頑固だな、君は。じゃ、俺が取って来るから君はここで待ってて 」


「 ダメです!!あれは私の仕事ですから! 」


「 ……っっ!! 」



 結局ふたりで外に出た。

 窓を開けると冗談だろ…と呟きたくなる程の豪雨で、打ち付ける雨の冷たさと吹きすさぶ風の凄まじさに俺でも足が取られそうだった。



「 うひゃぁあぁぁっ!!! 」



 容赦なく雷鳴が轟く。

 厚い雨雲に覆われて辺りは真っ暗闇なのに、稲妻が走る時だけ昼間以上の明るさで、繰り返される明滅が危機を暗示しているかのようだった。



 いや、もしかしたら。

 それはハッキリ警告していたのかもしれない。



「 ああぁぁぁっ!!雨を被っちゃってるうぅぅ~~。せっかく取りに来たのにぃぃ!! 」


「 残念だけど仕方ない。それを持って早く戻るよ 」


「 はいぃぃぃ 」



 その時だった。背筋が一瞬、逆立った。

 それを察知できたのは恐らく奇跡に近かった。


 強い風に煽られ折れた枝が、あろうことか彼女に向かって飛んでくる瞬間を俺は確かに目撃していた。



「 キョーコちゃん!!!! 」



 演奏を盛り上げるかの如く、いくつもの大太鼓がこぞって爆音を競い合う。

 吹きすさぶ風と雨。そして腹と鼓膜を何度も揺さぶる雷鳴が響く下、俺は咄嗟に彼女を自分の胸に抱き寄せた。



「 きゃうっ?!!! 」


「 ………っっ!! 」



 左腕に強い痛みを感じて

 もしかしたら守り切れなかったかもしれないと焦った。


 抱き締めた手を少し緩め、彼女の様子を確認すると俺より最上さんの方がずっと慌てた様子だった。



「 キョーコちゃん、平気?!ケガをした?! 」


「 血――――――― っ!!敦賀さん、血!腕!ケガをしたのは敦賀さんですー!!早く、早く小屋に戻りましょう!! 」


「 …君は平気? 」


「 平気です!平気ですから戻りましょう!早く、早く!傷をお水で洗い流さないと 」


「 でも鍋の水が勿体ない… 」


「 まだ蛇口から水が出ていますからっ!! 」



 小屋に戻ってすぐ血を洗い流した。

 幸い、掠り傷程度だった。


 腕の手当てをしてくれている間中、最上さんの顔は真っ青だった。



「 ……ごめんなさい、敦賀さん 」


「 気にしなくていいよ。俺としては君がケガをしなくて良かったと本気で思っているから 」


「 気にします。私がケガすれば良かった 」


「 なんでそんな事を言うんだ。冗談じゃないよ。

 俺の目の前で君がケガをするなんて、そんな不名誉なことが起これば良かった…って、君はそう言うのか? 」


「 だって…… 」



 雨はまるで打ち寄せる潮騒のように地面を激しく叩き続け、雷は伴奏者の如く雷鳴をどよめかせる。

 辺りが一段と明るくなったと同時に容赦のない天の怒りが稲妻を轟かせた一瞬は、俺でさえ肩を揺らしたほどだった。



「 きゃぁあぁっ!!! 」


「 もしかしたらいま雷が落ちたかな 」


「 雷?どこに落ちたんだろう……。どこも何ともなければいいですけど 」


「 そうだね 」



 電気が無い山小屋は文字通り真っ暗で

 優しく俺達の影を作るランタンの明かりが、山小屋に二人きり、雨の要塞に閉じ込められたかのような錯覚を与えていた。



「 くしゅんっ!! 」


「 ごめん。そうだ、俺たち濡れていたんだよな。手当てより先に着替えに行くべきだった。行こうキョーコちゃん。昨夜、星を見に行くときに使ったランタンがあるから一つずつ持って行こう 」


「 はい。びっくりしますね、このランタン。花火をしていた時は気付きませんでしたけど、こんなに明るかったんだ 」



 階段を一歩上がったときに闇夜で携帯が光った。

 発信して来たのは社さんだった。



『 蓮!!そっち大丈夫か?! 』


 もしもし…を言う前に社さんの声が飛び出した。

 社さんの話によると、先ほど突然防犯カメラの映像が途切れたらしい。


 監視室に異常を知らせるアラームが鳴ったことでカメラが映らない事に気付いたスタッフが、社さんに連絡を入れてくれたようだった。



「 実はさっき近くで雷が落ちたみたいなんですよ。それで影響されたのかもしれないですね 」



 再度大丈夫か、と問われたそれには大丈夫ですと答え、変わりないか、と問われたそれには変わりないですと答えた。



「 ……敦賀さん、腕の怪我… 」


「 シ!……平気だから


『 スポンサーと局が協議してくれて、中止にしてもらって構わないってさっき言って来たんだけど 』


「 社さん。どちらにせよこの雨なら動かないで小屋に居た方が得策だと思います。もう本当にすごいんですよ。バケツをひっくり返したなんてもんじゃない。今はまるで滝つぼの中にいるみたいなんですから 」


『 了解。雨は今夜中ずっと続くらしいけど、強い雨はどうやらもうすぐ終わる予報だ。雨脚が弱まってきて、もしそのタイミングで戻って来るのならその前に一度連絡を貰えるか?何時でも構わないから 』


「 ええ。そうする時はそうします。ありがとうございます。じゃ… 」


「 敦賀さん? 」



 通話を切ると最上さんは不安顔。

 もしかしたらこの時分からこの子はいつもの調子をどこかに取り落としていたのかも。



 濡れた服のままだったからだいぶ肌寒さを感じていたに違いない。はっきりそうだと判るほど最上さんの肩は大きく震えていた。



「 社さん情報によると強い雨はもうすぐ終わるらしい。取り敢えず着替えに行こう。ごめんな、寒いよな。濡れたままいつまでも居たら風邪を引く 」


「 はい 」



 大きく響く雨音を聞きながら二人で階段を上がった。

 二手に分かれてそれぞれの部屋のドアを開け、ぱたりと閉じた所で最上さんは再び声を張り上げた。



「 ……う……わぁぁぁぁんっ!!罰が当たったんだ。敦賀さんにやめておけって言われたのに言う事を聞かずに、しかも敦賀さんにケガまでさせちゃったからぁぁぁっ!!! 」



 ドア越しに聞こえた反省文に苦笑を浮かべ、濡れた衣服を水着と一緒の袋に放り込む。

 手早く着替えを済ませた俺は、ドアを開けた瞬間、思いっきり肩を揺らした。


 なぜなら先ほどと全く同じ姿で最上さんがそこに立っていたのだ。



「 キョーコちゃん?!なに、どうした? 」


「 敦賀さん…。こっちの部屋、水浸しなんです。水着を脱いだ時は何ともなかったのに… 」


「 え? 」



 扉を開け、ランタンをかざして確認するまでも無かった。

 雷鳴が秒単位で部屋の様子を見せてくれた。


 中は惨憺たる有様で、もしかしたら先ほどの落雷がこの事態を引き起こしたのかも知れないと思った。

 窓ガラスを割ったのは間違いなく飛び込んで来た大枝のせいで、窓際に置いていたのだろう最上さんの荷物は雨に打ち付けられていた。


 カーテンを引いておかなかったせいでガラスの破片があちらこちらでキラキラ瞬いているのが見えた。



「 あー……ずぶ濡れ 」


「 私、どうしたら…… 」


「 おいで。俺の着替えを貸してあげるから。…じゃなくて、そういえばもう一着、俺、君の服を買っていたな 」


「 え?本当ですか?! 」


「 そう。ただそれ、リゾートワンピースだからいま着ると少し肌寒いかも。…けど、濡れている服よりマシだよな。でも君、もしかしたら下着とかも…… 」


「 替えが無いです。びっちゃり濡れているのに 」


「 ……良ければ俺のを貸すけど… 」


「 うっ!!!男性用の肌着!!!どうしよう…。ある意味究極の選択肢 」


「 俺としては無理強いするつもりはないけど。俺でも確かに迷うところだし。

 でもこの寒さだ。恥はかき捨てた方が良くないか?どうする、キョーコちゃん?男物の下着を身に付けるのと、下半身スーハーのままで過ごすの、どっちにする? 」


「 どっ…どうしてそういう聞き方をするんですか!うっ……うぅぅぅぅぅ……貸、してください… 」


「 OK。分かり易く答えが出て良かっただろ。でもごめんな、キョーコちゃん。そこまで気を回しておくべきだったな 」


「 そんなこと…。もう充分すぎるぐらいですから 」


「 こっちの部屋で着替えていていいよ。その間に俺、あっちの窓を塞いでくるから 」


「 あっ!敦賀さん!! 」



 この子の様子がいつもと少し違うかも。

 俺がそれに気付いたのはたぶん、この時だったと思う。



「 うん? 」


「 いくらランタンがあるからって……こんな時に一人はイヤ。すぐ着替えますからここに居て下さい。そのあと私も一緒に隣の部屋を片付けますから 」


「 ……え? 」



 ほのかなランタンの光が、俯き加減で俺の服の裾を引っ張る最上さんの甘え顔をはっきり俺に見せていた。






 ⇒12話 に続く


スミマセン。こんな長く使ったのに予定の半分も入らなくて…。12話が最終話というのは幻です。



⇒足並み揃えて◇11・拍手

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