いつも本当にありがとうございます。一葉です。
弊宅500記事を記念して、蒼々様からお与かり致しました原作沿い、記念リクエストの続きをお届けです。
前のお話はこちらです↓
■ 足並み揃えて ◇7 ■
テントがごそごそと揺れ始めて、あの子が着替え始めたのだと分かって微笑が浮かんだ。
タガが外れない程度に…と思っていても、久遠気分でいるとどうしたって蓮のときより口調が砕ける。
「 そうじゃないとね、キョーコちゃん。あの頃みたいにせっかくこんな山の中で二人っきりなんだ。気楽に行こうよ 」
たとえそれが敦賀蓮らしくなくても、そういう設定だから…と言えばそのたびにあの子は納得してくれるだろう。
スポンサーから萌えシーンを入れてくれ…と言われるなんて予想もしていなかったけど、決して悪い状況ではなかった。
社さんが送ってくれたリストをもとに女性が萌えキュンしてくれるという仕草をあの子にすることで、少しでも最上さんの気持ちが自分に向いてくれればと俺は願っていた。
「 けど油断は禁物。さらに言えば高望みはもっと禁物。これで少しでも俺を男として認識してくれれば…って程度で覚悟をしておいた方がいい 」
とはいえ、全然意識されないのはやっぱり悔しいから、恋人設定…なんてことを言ってみた訳だけど。
あの子の反応を見ている限り、自分が講じた作戦はそれなりに功を奏しているような気がして正直、気分はよかった。
「 ……つ…るが、さん…… 」
「 ん? 」
呼ばれて振り向く。
力弱くテントの入り口をめくっていた最上さんの顔は何となく嬉し照れ。その表情にはどこか甘えた感じがあった。
「 どうした?着替えたんだろう、出ておいで? 」
「 着ました。着替えましたけどっっっ!!これ、本当に大丈夫でしょうか?! 」
「 なにが 」
「 だって、私のようなものがこんなビキニを着るなんて、ある意味犯罪かとっ 」
「 なに言ってるんだ。いいから着替えたのなら出ておいで。いくら標高が高くて平地より涼しいからっていつまでもテントの中にいるのは良くないよ 」
「 う……はいぃぃぃ…… 」
「 ……っっ!!!! 」
おずおずと出て来た白い肌。
ビキニ姿のこの子はもう本気で可愛くて!!
嬉しさのあまり全身で笑い出しそうになってしまった。
「 ……確かに犯罪的だ。ベッドがあったら今すぐ押し倒したいレベル 」
「 はい? 」
「 いや、なんでもないよ。……うん、似合うね、キョーコちゃん。まぶしいぐらいかわいい 」
「 ……っっ…ありがとうございます…って、やだ、敦賀さん、ズルイ!! 」
「 なにが? 」
「 炭の用意です。お昼は私にやらせてくれるって言ったじゃないですか 」
「 なんだ、そんなことか。大丈夫。コンロを用意しただけで着火はしてないよ 」
「 ほんとですか? 」
「 ホントだって。じゃ、テント交代してここで少しだけ待っててもらえる?俺も着替えて来るから 」
「 はい、行ってらっしゃい 」
すれ違いざま、すぐ脱げるようにと前をはだけさせておいたシャツを手早く脱ぎ、後ろから抱きかかえるように最上さんに羽織らせて少し強引に彼女を自分に引き寄せる。
直に触れた肌の熱は想像以上に心地よかった。
「 きゃううぅぅぅっ?!! 」
「 キョーコちゃん 」
「 はいっ、はい?! 」
「 調理の時は肌が露出しているのは危ないから、俺のシャツ着る? 」
「 え?……いいんですか? 」
「 いいよ。このまま着る? 」
「 はい、ありがとうございます。助かります 」
「 ん…… 」
ビキニの上にエプロン…もある意味、見たかった気もするけど。
でも調理の様子は録画しないといけないから、それは次の機会ということで。
目的通りに彼氏シャツをクリアして秘かに喜んでいる俺とか、この子のビキニ姿を見られるのをさりげなく俺限定にしているのとか、きっと少しも分かっていないのだろうな、と思う。
ちなみに、俺自身は下に水着を穿いていたのでズボンを脱ぐだけだった。
テントに入って出てくるまで恐らく10秒もかからなかったと思うけど、俺がテントから出たと同時に視線がぶつかった最上さんはなぜかカメラを構えていた。
「 敦賀さん、はやっ 」
「 こら、何を撮ろうとしているんだ 」
「 もちろん敦賀さんの水着姿に決まっています。その鍛え抜かれた肉体美を披露するのが私の仕事ですから 」
「 仕事?出たなその口癖。そんな義務感持たなくていいから! 」
「 どうしてですか。敦賀さん、私に相談して下さったじゃないですか。ですからその気持ちに答えるべく、ついでにスポンサーさんの意向にも沿って一つでも多くの敦賀さん萌えシーンを提供しなければと思ったのに 」
「 冗談じゃない。完璧プライベートな時間に仕事優先なんてやめてくれ 」
「 ……プライベート? 」
「 プライベートだろ。ここの防犯カメラは全く作動していないんだ。だから俺達のこの姿を見られるのは俺達以外にいないだろ 」
「 でも、撮影…… 」
「 だから、俺が道具を紹介するときと、君が料理をする時だけが仕事で、それ以外のすべての時間はプライベートだろ。違う? 」
これでどう納得してくれたのかは分からないけど、最上さんはその瞬間、肩の力を抜いてほわりと微笑んだ。
「 はい、分かりました。じゃあ私もさっさと自分の仕事をしちゃいましょう 」
「 ん。じゃ、カメラ交代。キョーコちゃん、炭の準備、するんだろ。それとついでにコンロの紹介も入れて。込みで撮影するから 」
「 了解です。では手早く炭に着火しまーす。あ、点いた! 」
「 OK。君が言った通り、コンロは折り畳み式の小さいのを一個しか持って来なかったけどこれで本当に平気? 」
「 平気です!それよりこの折り畳みコンロ、いいですね。35×27cmの、収納サイズ6cmが足を立てると20cmの高さになって使いやすいです 」
「 だね。少人数で使う場合はこれでも十分間に合うと思うし、荷物を軽くしたいときとか折り畳みのコンロはひとつあると便利だと思う 」
「 はい!…ということですので、この小さなコンロひとつで満足できちゃうお昼にしました。どっちもホイル焼きですから目新しさとかもう無いですけどね 」
「 別に俺はこだわらないけど 」
クーラーボックスの中から出てきたのはアルミホイルに包まれた4つの包み。
最上さん談によると、二つは夏野菜のホイル焼きで、もう二つは鶏むね肉のホイル焼きらしい。
昼食は、炭を入れたコンロの網の上にそれを置くだけで終わってしまった。
「 敦賀さん、この中身の紹介は食べる時でいいですよね? 」
「 いいと思う。ちなみにこれ、どのぐらいで出来る?30分ぐらい? 」
「 そのぐらいで出来ると思います 」
「 よし、じゃあ川で遊ぼう。はい、キョーコちゃん、シャツ脱いで! 」
「 きゃあぁぁっ!敦賀さん、破廉恥ですぅぅ!!それにカメラ!カメラ止めて下さいっ!! 」
「 とっくに止まってるよ。ほら、行くよ。ここは上流域で尖った石が多いから靴は水際で脱いだ方がいい。足場が悪いから特に足元には気を付けて 」
「 はい、了解です。……うわうっ!水が冷たーい! 」
「 キョーコちゃん、手遊び水鉄砲!! 」
「 ふぶっ!!!何をするんですか、いきなり! 」
「 見事命中。見たか、俺の腕前を 」
「 見たかじゃないですよ!そう来るなら必殺、手遊び水鉄砲返し!! 」
「 うわっ!なんだ、君も出来るんだ 」
「 へへーん。実は子供の頃、やり方をコーンに教わったんですぅ。参ったか! 」
「 それぐらいで参るか 」
「 きゃあ~!!!あはははは 」
それから約30分間、俺達は川の中で互いに水をかけ合う遊びに興じ、いい香りが漂って来たところで川から上がった。
彼女が用意してくれた昼食にありつく。
「 キョーコちゃん。俺のシャツ着ていいよ 」
「 でも、濡れちゃいますよ? 」
「 ……君が、全国ネットで自分のビキニ姿を世間の皆様に見て欲しいっていう願望があるなら俺は止めないけど。…あ、その姿のままエプロンを付けると裸エプロンみたいでちょっと照れるかも 」
「 ふぐっ?! 」
「 どうする、キョーコちゃん。ビキニのまま裸エプロンみたいな恰好の君を俺がこのカメラで撮っちゃっていいのかな?それとも俺のシャツを着て普通の恰好で全国ネットに?君はどっちが好み? 」
「 むきぃぃぃっ!!この水着、用意したのは敦賀さんのくせに意地悪です!シャツが濡れちゃっても許して下さいね! 」
「 構わないよ。あー、良かった、着てくれて。目のやりどころに困る所だった 」
「 嘘ばっかり。思いっきり真顔で言ってたじゃないですか。……あ、良かった。出来てる。
はい、お昼は焼きおにぎり入り夏野菜のホイル焼きと、鶏むね肉のオレンジ風味ホイル焼きです 」
「 オレンジ風味?! 」
「 そうですよ。夏ですからさっぱり爽やかに食べられた方が食欲増しそうじゃないですか?敦賀さんでも美味しく食べて頂けると思います!どうぞ 」
「 いただきます。……ん!爽やかだね、本当に 」
「 お家で食べる時はオーブンで焼くのがおすすめですけど、グリルでも焼けるんですよ 」
「 すごいな。あれ?この焼きおにぎりって… 」
「 はい、それ冷凍食品の焼きおにぎりです。プチトマトやズッキーニとかの夏野菜と一緒にホイルで焼きましたけど、もしこれで食欲がいまいち湧かない場合はこのままこの具材でお茶漬けにして食べるのがおすすめです。大人仕様になっちゃいますけどね 」
「 いいね、それも。俺はこのまま頂くけど 」
「 それで、敦賀さん! 」
「 うん? 」
「 今のうちにもう一つ作りたいのがあるんです! 」
「 え?これから? 」
「 はい!食べている間に出来ちゃう楽ちんで美味しいデザートなんです。いいですか? 」
「 バーベキューでデザートって新しいな。いいよ、どうぞ? 」
「 はーい。では、10分程度で出来ちゃう簡単デザートをご紹介です。
用意する物はこれ、使い捨てのバーベキュー用アルミ鍋。四角いものでも丸いものでもOKです。これ、最近は100円均一なんかにも置いてあって便利ですよね。
ここに、マシュマロを敷き詰めてからオレンジやベリーなど酸味があるフルーツや、冷凍のいちご、マンゴー、パイナップルなんかを入れちゃいます 」
最上さんは言葉通り、アルミ鍋の中にマシュマロを敷き詰め、その上にひと口大にカットしておいたのだろうフルーツを乗せて行った。
アルミホイルできっちりと蓋をすると鍋ごと火にかける。
「 実はこのレシピ、この炭の使用時間が一時間ぐらいって敦賀さんが言ったときに思いついたんです。炭を無駄なく使えるかもって 」
「 え?俺の説明を聞いてから思いついたの?これ 」
「 そうですよ。メインの料理を食べながらデザートが出来上がるのを待つのって一石二鳥でイイかなって思って。あ、ほら!ホイルが段々と膨らんできました 」
「 ほんとだ 」
「 膨らんできたらもう出来ていますからこの時点で火からおろしちゃいましょう。…で、ホイルは熱くなっていますから蓋にしたホイルをナイフとかでカットして開けちゃえば火傷の心配もないかと 」
「 あ、それ。バーベキューっぽくていいかも 」
「 でしょう?!盛り上がっていいかなって思って 」
彼女の希望通り、蓋にしたアルミホイルをざっくりとカットすると、マシュマロが熱で蕩けていてまるでフルーツが白い海で泳いでいるようだった。
「 じゃーん!マシュマロの甘さとフルーツの酸味が一度で楽しめるデザートです。凍っているフルーツを使った場合はまだ溶けていないのもあると思いますけど、熱々なのに冷たいっていうのも意外と美味しいと思うんですよね 」
「 …っ!!ん、確かに!酸味がさっぱりしてていいよ。それにこれ、色々なフルーツがあって女性が特に喜びそうだし、たとえばこれを男が作ったら一目置かれる存在になれそう。簡単なのに派手さもあっていいよな 」
「 えへへ 」
このあとすぐにカメラを止めて、二人でお昼を満喫した。
食べ終わったあとは二人で火元を片付け、また川で遊んだ。
夏の陽射しはかなり強く川面を照り付けていたけど、俺達はそれを物ともせず、二人でともに笑い転げた。
「 あっ、あーやった!!敦賀さん、捕まえたっ!!! 」
「 あー捕まっちゃったか。容赦ないな、君は 」
「 当たり前です!! 」
川の中で鬼ごっこ、なんて古典的な遊びだったけど
こんなに楽しいとは予想していなくて
そして捕まえたと言ってビキニ姿のまま俺の腰元に抱きついてきた彼女を俺も思いっきり抱きしめた。
「 捕まえた 」
「 違います。捕まえたのは私です!……っ?……敦賀さ…… 」
出来る事なら唇にしたかったけど、寸前で思い止まった。
彼女の額にキスを落とした自分を我ながら偉いと思った。
「 ……っ…敦賀さん、甘々すぎる…… 」
その嬉し照れ、演技じゃないなら嬉しいけど。
「 キョーコちゃん。もうそろそろ帰ろうか 」
「 ……はい… 」
キャンプ二日目、午後二時頃。
川辺のバーベキューを終えた俺達は二人で小屋に戻った。
⇒8話 に続く
お、お、お、お察しかも知れませんが、10話前後で終わる見通しだったのがすっかり消え失せています。あと何話~~?それが判るなら苦労はしません!!
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