足並み揃えて ◇3 | 有限実践組-skipbeat-

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 いつもありがとうです。一葉です。

 弊宅500記事を記念して、蒼々様からお与かり致しました記念リクエストをお届け致します。


 例によって今回も長いです。

 お愉しみ頂けたら嬉しいです。



 前のお話はこちらです⇒足並み揃えて【12】



■ 足並み揃えて ◇3 ■





 試作した昼食を食べたあと、敦賀さんの勧めに従いシャワーを浴びることになった。



「 キョーコちゃん。先に入って来ていいよ。その間に俺は夜の打ち合わせをしておくから 」


「 …っ……は、い……っ… 」



 撮影は一旦終わったというのに名前で呼ばれて返事に詰まる。


 そんな私の戸惑いに気付いたのか、敦賀さんは軽い笑みを浮かべてから小さな荷物を差し出した。



「 はい、これ 」


「 はい? 」


「 君の着替え。シャワー後はこれを着ればいいよ 」


「 ……はい。ありがとうございます 」



 もちろん受け取りましたとも。

 だって敦賀さんが寄り道してまで買って下さったものですから。



「 敦賀さんは私の後に入りますか? 」


「 そうするつもりだけど……。なに?一緒に入って欲しいならそうするけど? 」


「 ちっ!!違います!そういう意味で聞いてません!! 」


「 ははは、分かってるよ。うん、そう。俺は君のあとで入るから 」


「 はい、了解です 」



 自然な仕草で私の頭をクシャリ…と撫でた敦賀さんが、いつもよりずいぶん近くに感じた。

 短く笑い声を漏らしたそれが、まるでコーンと話しているみたいだと思った。



 敦賀さんが着替えと称して渡してくれたのはゆったりしたセットアップ。

 素材がトロンと柔らかく、ウエストがゴム仕様で足首まであるパンツだったのでバーベキュー場でも着られるもの。


 上はポンチョのような裾広がりデザインで、物凄く涼しく感じられた。



「 そっか。薄地でふわふわしているから、お風呂上りなのに肌に全然くっつかなくて涼しく感じるんだ 」



 ペタペタペタ…と小屋の中を素足で歩き、敦賀さんの所に戻る。

 敦賀さんはまだ誰かと通話中だったけど、言葉遣いから社さんかな、と思った。



「 ……っ…はぁっ?なんですか、それ?!……っ……はいはい、仕事、分かりました。じゃああとは夜に、またお願いします 」



 さすがに聞こえた会話がこれだけだと何を話していたのかは判らなかった。



「 敦賀さん。お先にありがとうございました。あとこの着替えも… 」


「 あ、うん。似合う。どう?涼しく感じる? 」


「 はい、涼しいです!それにとっても着心地が良い… 」


「 それなら良かった。俺もシャワー浴びて来るから、そのあと夜の打ち合わせをしようか 」


「 はい!私、アイスコーヒーの準備をして待ってますね 」


「 ありがとう 」




 ――――――― うん、ただね。


 シャワーを浴びて来た敦賀さんも、私と同じ素材の服を着て来たときは正直、割とびっくりしちゃった。


 柄が全く違うからまさかそれに気付く人はいないと思うけど。

 それにさすが敦賀さん。何を着てもお似合いでした。




 試作した昼食は私サイドのスポンサーさん要望をメインに叶えたので、夜は敦賀さんサイドのスポンサーさんの希望を多く取り入れるメニューにした。


 今回、使って欲しいと言われた道具の中に、飯ごうなどの調理道具はなかったので、割と自由にメニューを考えることが出来て楽だった。




「 はい、じゃあ夜の部、スタート!! 」


 スタッフさんと約束していた時間が来た。

 夜の撮影と言っても私か敦賀さんのどちらかが撮るだけなのだ。



 暗くなりかけていたので敦賀さんが明かりを用意して、番組向けに新製品だと言って紹介をした電池不要の水と塩で光るランタンの存在を知った時、私はメチャクチャ驚いた。



「 ウソっ?!本当に水とお塩を入れたら光った!! 」


「 これ、すごく便利だと思うよ。海に行ったら海水を入れればいいだけだし、海が無い場所でも川があるなら川の水を入れて、塩を入れればそれだけで光ってくれるんだから 」


「 凄いですね!一体どんな仕組み? 」


「 ああ、これ、ランタンの中にマグネシウム合金が入っていて、塩を入れることで電子が発生する仕組みなんだ。水に浮遊した電子がプラス極に流れることでランプが点く仕組み。スゴイよな 」

※Nacl(塩化ナトリウム)は水に溶けるとNa(プラス電極)とCl(マイナス電極)に分かれます。


「 本当に凄いです~ 」


「 さて、明かりはOKになったから今度はコンロの準備だね 」


「 はい、お願いします!! 」


「 今夜は優秀なコックさんの意向により、大と小のバーベキューコンロを用意します 」


「 はい、ありがとうございますー!! 」


「 キョーコちゃん。俺の右手のコレ、アップで撮って 」


「 はい!!……それ、炭? 」


「 炭だけどただの炭じゃないよ。これは着火剤がいらない、いわゆる火おこし不要の炭なんだ。ライターの火を炭に直接当てると……ほら、すぐ点く 」


「 わあっ!本当にもう煙が出て来た、びっくり。でも便利ですね! 」


「 だよな。バーベキューの火おこしって点くまで時間がかかるから段取りが取りにくいこともあるけど、これならすぐ使えるから時間を無駄にしないで済む。ちなみにこれで一時間ぐらい保つから、一緒に炭を置いておけば炭の着火剤にもなって本当に便利だと思う 」


「 一時間あればお料理するには充分ですね! 」


「 そうだね。…よし、大、小、どちらのコンロにも炭の用意が出来ました。網をセットしたら、キョーコちゃんにバトンタッチ 」


「 敦賀さん、ありがとうございました。では早速、作っていきますね 」


「 今夜は何を作ってくれるの? 」


「 やっぱりバーベキューと言えば焼肉じゃないですか。でもお肉は焼いちゃえばいいだけなので、お肉を食べている間に出来ちゃうものを2品、用意しようと思います。まず炊き込みご飯! 」


「 バーベキューコンロなのに? 」


「 バーベキューコンロなのに(笑) 大丈夫。案外、簡単に出来るんですよ。

 まず、お料理の下準備の時に良く使うバットを用意します。22cm×15cmぐらいの一般的なサイズの物で大丈夫。この上に40cmほど引き出したアルミホイルを乗せて、バットの形に合わせます 」


 バッドの上にホイルを乗せて、手際よく準備を進める。

 用意してあったお米、しめじ、ニンジンの順に平らに置き、さらにお醤油、お酒、だし汁を加えて最後に刻んだもずくを乗せた。

 食材については敦賀さんにも内緒にしていたので敦賀さんはびっくりしていた。



「 もずく?! 」


「 そう。もずくです。バーベキューはお肉をメインで食べがちになってしまって食物繊維が不足しやすいので、炊き込みご飯のキノコともずくでそれを補おう作戦です! 」


「 なるほど 」


 すべてを入れたらアルミホイルの三辺を貝の口を閉じる様に折り包み、テーブルの端に置いておく。続いてもう一品に取り掛かる。


「 はい、もう一品に行きます! 」


 次に用意してあったのは丸々一個のキャベツ。

 口で説明しながら手を動かしていく。


 キャベツの芯とは逆の方…葉の柔らかい部分の上1/3をカットして、大きなキャベツの真ん中をスプーンでくり抜く。

 こっちは器になる方なので底が抜けないようにする。


 半分ぐらい取り除いたら取ったキャベツはざく切りにして、フライパンでひき肉と一緒に炒めるのだ。


「 はい、フライパン 」


「 ありがとうございます!ひき肉を入れて、だいたい火が通ったらキャベツを加えて、しんなりしてきたらケチャップで味付けをします。そしたらこれをキャベツに戻します 」


「 戻すんだ 」


「 そうです。全部入れたらこの上にピザ用のとろけるチーズを乗せて、カットしたキャベツを蓋として乗せます 」


 蓋をしたらキャベツの下からアルミホイルでまるまる包み、ミニコンロに預け入れる。

 その場合の置き場所は網の上じゃなく直接、炭の上。良く火が通りやすいようにするためだ。



「 なるべく平らになるように置いて下さいね。そしたらコンロに網を乗せて、この網の上に先ほど用意した炊き込みご飯を乗せます。一応、言っておきますけどトレーは火にかけたらダメですよ 」


「 まさかの小さいコンロで2品 」


「 ある意味、贅沢ですよね。キャベツの大きさにもよると思いますけど、キャベツも炊き込みご飯も20~30分ほどで出来ると思いますのでこのまま放置です。ちなみに、アルミホイルに包むまでを前日にやっておいて、冷蔵庫保存。バーベキュー当日は持って行くだけにしておけば、コンロに投じるだけなのでかなり楽だと思いますよ 」


「 なるほど、いいテかも。取り敢えずひと段落お疲れ様。キョーコちゃん、喉乾かない?冷たい物でも飲む? 」


「 冷たい物? 」


「 そう。これ、知ってる?瓶用アイスロッドって言って、凍らせておいたロッドを瓶に差し込んで、瓶口にはめ込んで飲むんだ。飲んでみて? 」



 打ち合わせ通りに口をつけ、聞いていたよりずっと美味しいのど越しに目を丸くする。本当に驚いた。


「 うわっ!なんですか、これ?すっごく冷たい!! 」


「 そう。このロッドが瓶の中の飲みものをずーっと冷やしてくれるから火のそばでも温くならずに飲める優れもの 」


「 すごい。バーベキュー商品って色々あるんですね 」


「 本当にね。洗えば何度でも使える優れものだよ。でもま、瓶が空になっちゃったら、氷水を張ったクーラーボックスにドリンク缶があるからそっちを飲んで 」


「 はい、無くなったらそうします。じゃ、お肉に行きましょう~♪ 」


「 大コンロ、準備万端だよ 」


「 ありがとうございます。網でお肉を焼くと焼き過ぎて焦げちゃうってことありますよね。それを解決してくれるのがこれ!!岩塩プレート 」


「 あ…凄いものを持ってきた 」


「 これを網の上に置いて、この上でお肉を焼くと、岩塩プレートがお肉の余分な脂を吸収してくれるので網が必要以上に汚れないし、お肉が焦げて食べられない…なんてこともありません。それからこれで一番お勧めなのは…実際に食べてもらえれば分かります。いまちょっと焼いちゃいましょうか。ジュー…。ん、いい香り。

 敦賀さん、岩塩プレートに乗っているお肉を食べてみてください 」


「 いただきます。…ん?!塩味が付いていて美味しい!! 」



 このやり取りをしているあいだ、私はちょっと通販番組みたいだな、と思っていた。


「 でしょう?岩塩プレートはこの上で焼くと食材に塩分が付くからタレ要らずなんです!お肉だけじゃなくて、海老やホタテ、イカなどもお勧め具材ですよー 」


「 美味しい。キョーコちゃん、これ、本当に美味しいよ 」


「 はい、どんどん食べちゃいましょう~。…待っているだけって退屈ですからね 」


「 …ふっ。いま、電話の向こう側で自分達も食べたいって言ってる声が聞こえるよ 」


「 え?本当ですか? 」


「 そう。ほら…… 」



 導かれるまま敦賀さんのそばに寄り、差し出されたハンズフリーイヤホンに耳を傾けると悶絶中の声が聞こえた。



「 ……プッ!!岩塩プレートはスタッフさん達が紹介して下さいって言ったものなのに… 」


「 でも分かる気がする。実際、人が楽しそうに、美味しそうに食べているものって食欲をそそるから 」


「 確かにそうですね。羨ましがられているんだって思うと一段と美味しいですね、敦賀さん 」


「 うん、ほんと。君が作るものは本当に何もかもが旨いしね 」


「 ……っっ……てへへ…… 」



 それからしばらくの間はコンロのそばにイスを置き、二人でお肉をつつきながら雑談を交わした。

 食べている間はこれが仕事だってことを忘れそうなほど笑い転げて、社さんはなんて贅沢な仕事を組んでくれたのだろう…と思った。



「 あ、もうそろそろミニコンロの2品も出来たかも… 」


「 そう?じゃあ一緒に見に行ってみよう 」


「 熱いと思いますから素手では無理ですよ? 」


「 言われなくても分かってるよ。行ってみよう 」



 ツン…と額をつつかれて、頭をポンと撫でられる。

 敦賀さんからのさり気ないスキンシップが嬉しくて、つい照れてしまう私がいる。



 本当に、楽しくて仕方がないです!!!



「 キョーコちゃん、網の上のご飯から取るよ 」


「 はい、どうぞ!! 」



 テーブルの上に置かれたアルミホイルを開けてみる。

 ホカホカご飯の上で、もずくは今にも蕩けそうな感じだった。


 潮の香りがふわりと漂う。



「 うわ、美味しそうだな。意外な組み合わせだと思ったけど、こうしてみると美味しそうにしか見えない 」


「 ふふふっ。確かにそうですね 」


「 キャベツも出来ているかな? 」


「 触ってみて柔らかくなっていたら出来ていると思いますよ 」


「 うわ。ふにゃっとして柔らかい。たぶん、出来てるよ 」


「 開けてみましょう。早く!早く! 」



 ご飯の時と同じように、キャベツのアルミホイルを開いてみると、ふわりと湯気が舞い上がる。

 包丁で半分に切るとチーズがとろりと雪崩れた。


 時間をかけて火を通したおかげでキャベツの香りが甘かった。



「 わー!!これ、絶対に旨いやつだ!! 」


「 あー!!たまんねぇ、食いてぇぇ!!! 」


 ……と、敦賀さんのイヤホンからスタッフさん達の声が漏れ聞こえ、思わず二人で顔を見合わせ同じタイミングでクスッと笑った。



「 これ、美味しくなきゃ嘘だよな、キョーコちゃん 」


「 そうです!これ、絶対おいしいやつですから、敦賀さん!! 」


「 ありがとう。こんな豪華な料理と見事な腕前を披露してくれた君に感謝。……チュ…… 」


「 …っっっ!!?!!!頬チュ???!!! 」




 完璧なる意表をついた敦賀さんからのご褒美頬チューのおかげで


 おいしいはずの炊き込みご飯や蒸しロールキャベツもどきを食べるのにちょっとばかり苦労したけど一応二人で全部食べきって


 初日夜のバーベキュー撮影は無事終わり、全てが片付いたのは月がぽっかり浮いてから。



 辺りに何もないせいかランタンの明かりがやけに頼もしく見えて、そして私たちはすっかり涼しくなった夜のテラスで二人きり、しばしの花火を楽しんだ。



「 あー……。今日はキョーコちゃんと二人っきりで信じられないぐらい羽を伸ばした気分だ… 」


「 あははは。実は私もです!仕事なのに危険なぐらい楽しいですね 」


「 ……だね。でももうこんな時間だ。明日の朝は早いからもう寝ようか 」


「 はい、寝ましょうか 」


「 今ごろさ… 」


「 はい? 」


「 スタッフのみんな、今ごろ俺が送ったデータ映像を再生しながら君が作った今夜のメニューを再現して舌鼓でも打っているかもな 」


「 ふふっ。どうなんでしょうね~。でも、もしそうだとしたら、美味しいって思ってもらえてたらそれだけで嬉しいです 」



 一日目の夜は、優しく穏やかに更けて行った。





 ⇒4話 に続く


まだ一日目なのにもう3話!!結局何話になるのかはまだ見通しつかず!

そしてレシピネタばかりですみません。


※岩塩プレート、美味しいのですけど、お手入れが面倒なので一葉は使わんです(笑)



⇒足並み揃えて◇3・拍手

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