足並み揃えて ◇1 | 有限実践組-skipbeat-

有限実践組-skipbeat-

こちらは蓮キョ中心、スキビの二次創作ブログです。


※出版社様、著作者様とは一切関係がありません。
※無断での転載、二次加工、二次利用は拒断致します。
※二次創作に嫌悪感がある方はご遠慮ください。

 いつも本当にありがとうございます。一葉です。

 弊宅500記事を記念して、蒼々様からお与かり致しました記念リクエストをお届け致します。


 こちらは原作沿いです。コミックス42巻に準じた設定をベースにしておりますことをご承知おきください。


 一年以上も続けて来た500記事記念リクエストもとうとうラストです。

 お愉しみ頂けたら嬉しいです。




■ 足並み揃えて ◇1 ■





「 最上さん 」


「 はい 」


「 からの、キョーコさん 」


「 ……それは嫌です 」



 敦賀さんが運転する、敦賀さん所有の車の助手席。

 もうすぐ午前が終わろうとしているまだ明るい時間だというのに景色を楽しむ余裕もなく、私はシートベルトにがっちり守られながら俯いた状態を維持していた。



「 じゃあ……スタンダードにキョーコちゃん? 」


「 ……っ…… 」



 二人きりの車内だから逃げる訳にもいかず、全身むずがゆくなるのを必死にこらえる。



 敦賀さんからのキョーコちゃん呼びはこの上もない破壊力。

 ちょっとでも力を抜いたら顔がダダ緩みになってしまう。



 だから私はこの羞恥プレイをひたすら懸命に耐えていた。




「 いっそこうするか、最上さん 」


「 はい? 」


「 俺が先輩風をふかせてキョーコ…って呼ぶことに 」


「 ……っっっ!!!!最上さん呼びがいいですぅぅぅぅ!!!! 」



 だらしなく緩む顔を見られたくなくて両手で顔を覆った所で受け入れられるはずも無い。

 自分の願いが却下されるのは判っていたけど、それでも言わずにはいられなかった。



 だって、敦賀さんからのキョーコ呼びなんて既に死滅レベルですから!




「 しつこいな、君も。それは社さんからダメだ…って言われただろ 」


「 だって、だって、だってぇぇぇ~~~~~~っっっ!! 」


「 だから。君が決められないならもう面倒だから俺が決めるでいいじゃないか。キョーコでいいね? 」


「 ううう……いやですぅぅぅ~~~~ 」


「 じゃあ自分で選ぶ。君は俺になんて呼ばれたい? 」


「 うううううう~~~~っ……敦賀さぁぁぁん…… 」


「 ……照れくさいな 」


「 え? 」


「 いくら君の芸名に名字がないからって俺と同じ名前で呼び合ったりしたら俺の方が照れそうだ 」


「 違う!こんな時にふざけないで下さいっっ 」


「 その言葉、そっくり君にお返しするよ 」



 さっき敦賀さんが言ったように、この問答が始まったきっかけは私たち二人のマネージャーをしてくれている社さんからの指示。


 苦笑を浮かべた敦賀さんはハンドルを握ったまま前を向いた。



「 それにしても先が思いやられるな、君は。

 着替えをラブミーツナギしか持ってきてないって聞いて俺がどれだけ驚いたか…。思わず寄り道しちゃったじゃないか 」


「 だって、キャンプ場では動きやすいスタイルで…って敦賀さん側のスポンサー担当者さんが言ってたんですよ。パンツスタイルが基本ですのでよろしくお願いしますって 」


「 だからってラブミー部として受けた仕事ならともかく、ラブミーツナギだけなんて冗談が過ぎる。

 この仕事は京子として受けた仕事だろ。君側のスポンサー担当者から指示は何もなかった? 」


「 それ、エプロンさえしていれば下は何でもいいですよって言われたんです。だってそもそも私、自分が持っている夏服はスカートばかりだからキャンプ場で着られるパンツ服を持っていなかったんです。買いに行けたら良かったんですけどそんな余裕だってなかったじゃないですか 」


「 まあ、確かに突然だったことは否定しない 」



 そう。これはれっきとした仕事で、いま私たちは現場へ向かっている最中なのだ。


 目的地は敦賀さんをイメージキャラクターに起用したアウトドアメーカーが所有しているキャンプ場。


 それになぜ私が絡んでいるのかというと、話はひと月ほど前に遡る。





 社さん情報によると、ちょうどその頃、敦賀さんにアウトドアメーカーから仕事依頼があったらしく、さほどの日を待たずして私の方にも某食品メーカーからCMの出演依頼があった。


 敦賀さんに来た仕事はバーベキューやキャンプの際に使える便利グッズや新商品のPRで、メーカーが所持しているキャンプ場の宣伝も兼ね、現地でそれらの道具を使った撮影を行い、編集したそれを30分程度の番組で深夜時間帯に週一放送するというものだった。



 一方、私に来た食品メーカーからの依頼はメーカーが手掛けている冷凍食品やレトルト食品にひと手間を加え、美味しくご飯を作ろう…をコンセプトとしたコマーシャル。


 けれど実はこれ、私が料理しなさそうなイメージ…で話を持ち掛けて来たという。



 普段料理をしない人でもこんなに美味しく作れるんですよ…をCM内で披露するのが食品スポンサーの目的だったみたいだけど、依頼を受けた社さんが、京子は料理が出来ると弁明したらしいのだ。




 …で、そこからどういう流れになったかというと……。



「 だから、どっちのスポンサーとも一度に話をしたかったから同じ席についてもらって、それ以外のグッズはともかく料理に関してだけは、キャンプ場で蓮が料理をしながら道具紹介をするのは無理があり過ぎるって担当者に言ったんだ 」


「 否めません 」


「 …で、キョーコちゃんサイドの食品メーカーには既に用意されているアレンジレシピを作るだけって言われたから、それだとキョーコちゃんの良さが全然アピールできないからその内容では受けられないって言った上で、代替案を提示した 」


「 ひぇ~。そうなんですか? 」


「 そう。蓮側スポンサーの目的は料理を作ることではなく道具を使ってもらうこと。一方キョーコちゃん側スポンサーの目的は食材を使ってもらうこと。

 だったら、いっそ食材をキャンプ場に持ち込んでキョーコちゃんが料理をするのはどうでしょう…ってね 」




 外で出来る事は家の中でもほぼ出来る。


 だから、私がキャンプ場で様々なアレンジ料理を作ることでアウトドアの時だけでなく、日常メニューとしての提案にもつながると思う…と社さんは熱弁をふるったらしい。



 その結果、敦賀さん側スポンサーと私側のスポンサーが互いの相乗効果を狙ってタイアップに賛同。


 そうなれば必然的に敦賀さんが出演する番組に私も出ることになる訳で、その際、敦賀さんが普段通りに私のことを最上さんと呼ぶのはNGだからと社さんに言われた、ここまでの話をおととい聞いたばかりだった。


 その仕事に向かっている真っ最中で、その間はなんて呼ぼうか…という問答に。



 けど、私の芸名が京子である限り、敦賀さんから呼ばれる選択肢は、さん呼び、ちゃん呼び、呼び捨ての3種類しか存在していない訳で、つまり私の顔がどうしたって緩んでしまう理由をこれで察して頂けたと思う。


 そんなこと、敦賀さんは気付いていないと思うけど。



「 最上さん。そんな事を言っていたら目的地に着いちゃったじゃないか 」


「 え?ここがそうなんですか? 」


「 そ。いいよ、降りてキョーコ 」


「 …っっっ!!!……つ……敦賀さん!いっそあだ名を作ってそれで呼ぶとかはどうですか? 」


「 あだ名?いいけど。………じゃあ、セツ…って呼ぼうか? 」


「 いやぁぁぁっっっ!!そんなのあだ名でも何でもないじゃないですか! 」


「 いや、理由を説明すれば誰でも納得…… 」


「 しないで下さい!!もういいです。じゃあ社さんと同じ呼び方でお願いします 」


「 ほら。だから初めから素直にそう言えばいいのに 」



 クスクス笑いながら車を降りた敦賀さんをジト目で睨み、遅れて大地を踏みしめる。

 ドアが開いた途端に肌に触れた熱気で覚悟はしたけど、車外に出たと同時に降り注がれた太陽光に辟易しながら右手でおでこにひさしを作った。



「 暑っ…。山の上だって聞いていたから少しは涼しいかなって思っていたのに… 」


「 だね。標高1600mでもこれってことは今年は相当暑いってことだろうね。

 さて、食材から運ぼうか。クーラーボックスは重いから俺が運ぶ。それと野菜なんかも重いから俺が運ぶかな 」


「 敦賀さん。この駐車場から小屋までどのぐらいなんですか? 」


「 聞いた話によると10分はかからないってことだったけど、実際にはどうだろう。この道をまっすぐらしいから取り敢えず行ってみようか。小屋の鍵もちゃんとあるな。よし 」


「 こっちの常温食材は私が持ちますね。あとカメラと、敦賀さんの荷物も私が持ちます 」


「 ありがとう。助かるけどそんなに持てる?機材と食材だけ先に持って行って俺達の着替えはもう一度戻ってくればいいと思うけど 」


「 これぐらい平気ですよ。着替えは軽いですし、機材って言ったってこのハンディカメラだけですから 」



 ハンディカメラはもちろん撮影に使うもので、基本的にはアウトドア道具を使う時に使用する。

 私が料理をしている時は敦賀さんが、敦賀さんがアウトドア道具を使っている時には私が撮ることになっているのだ。




「 所で敦賀さん。こっちの袋は…… 」


「 もちろん持っていく。寄り道してまで買った君の着替えだからね 」


「 ……やっぱりですか… 」



 出発してすぐ、忘れ物はない?と聞いてきた敦賀さんは、運転しているのにまるでリストを見ているかの如く私を質問攻めにした。


 雨具、帽子、日焼け止め、そして防寒具…と来て、私の着替えがラブミーツナギだけだと知ったこの人は、あり得ない…と呟いたあと、どこかの駐車場に車を停め、少しだけ待っているようにと指示を出して少しのあいだ姿を消した。


 戻って来た敦賀さんの手にあったのがこの袋。ひょっとしたら服じゃないだろうかと私は秘かに思っていた。

 セツのときに経験済みだったからすぐに判った。




 ちなみに…だけど、いま私が着用しているのはスカートで、唯一持っていたスパッツを穿いていた。


 キャンプ場は虫がいることも考慮して、オシャレよりも動きやすいパンツルック、またはスカートの下にレギンスがいいと言われたからで、これしか持っていなかった。



「 行くよ、キョーコちゃん。4日間、二人きりのキャンプ生活。よろしく 」



 社さんが提案して決定した仕事だから、スケジュールの都合で受けられない…と断ることなどもちろん出来ない。調整に調整を重ねてやっと確保できたという敦賀さんの4日間。



 スポンサー側には、どうせなら視聴者がよりリアルに感じられるような映像にしませんか…と社さんは提案していたけれど。


 撮影時間以外は完璧なプライベートに出来るよう、敢えてスタッフを現地に入れない形にしたいと社さんから耳打ちされたとき、互いに撮影すればいいだけですから平気ですと言ったのは私だった。



 忙しい敦賀さんのために、仕事の合間に得られるわずかなオフを確保しようと考えた社さんはやっぱりスーパーマネージャーだと思う。

 そして、キョーコちゃんも休みたい時は蓮に構う必要なんてないからね…と言われたとき、社さんは私のことも考えてくれたのだと知って嬉しくなった。



「 はい、よろしくお願いします 」



 大好きな人と4日間。二人きりの山小屋生活が始まる。

 その間、私はこの人の前で顔面を崩さず過ごすことが出来るだろうか…。



 期待と不安に胸を躍らせながら、私は歩みを進めた敦賀さんの後に続いた。






 ⇒2話 に続く


実はこの連載、何話でラストにたどり着けるのかが未知数です(笑)


プロット組みは勿論してあるのですが、二人の会話がメインとなるので、そうすると執筆してみないとどれほどのボリュームになるのか見当が付けられないのです。

4日間しかないのにね~。


気長にお付き合い頂けたら嬉しいです!



⇒足並み揃えて◇1・拍手

Please do not redistribute without my permission.無断転載禁止



◇有限実践組・主要リンク◇


有限実践組・総目次案内   

有限実践組アメンバー申請要項