R5技術士試験解答例Ⅱ-1-3[急速ろ過池の洗浄方式](R6.1.12更新) | 技術士を目指す人の会

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2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

令和5年度 上下水道部門Ⅱ-1-3【急速ろ過池の洗浄方式】

【問題】急速ろ過池の洗浄方式を3種類挙げ、それぞれの特徴や留意点及び洗浄終了時から通水初期において講じる措置を述べよ。

 

 

【解答例】

1 急速ろ過池の洗浄方式

急速ろ過池の洗浄方式は、逆流洗浄、表面洗浄、空気洗浄がある。

逆流洗浄は、ろ層下部から浄水を逆流させることにより、ろ層内に抑留した濁質を、ろ材から剥離して排出する方式である。洗浄時に、ろ層が2~3割膨張するよう十分な流速と均等な水流分布を確保する必要がある。逆流が過大になると、ろ材が流出するため、適切な流量に制御する必要がある。

表面洗浄は、ろ層表面に浄水を噴射することにより、ろ層表面の泥状の堆積物を破砕する方式である。逆流洗浄との併用で実施する。表面洗浄装置のノズル孔が閉塞しないよう、定期点検を実施した上で、適切に補修を行う必要がある。

空気洗浄は、ろ層下部から気泡を吹き込むことにより、ろ材に付着した濁質を剥離する方式である。逆流洗浄との併用で実施する。ろ層が厚く、ろ材が大きい場合に有効である。空気をろ層全面に対して均等に分散させる必要がある。

 

2 洗浄終了時から通水初期までの対策

通水初期は、ろ層内に残留した濁質が流出することにより、ろ過池出口の濁度が上昇する。クリプトスポリジウム等対策の観点から、ろ過池出口の濁度を0.1度以下に維持できるよう、適宜、洗浄終了時のスローダウン、ろ過開始時のスロースタートを実施する。

 

 

【個人的な感想】

2種類の洗浄方式の詳述を求めているのなら、表面洗浄と逆流洗浄について述べれば良いです。

ところが、この問題は、3種類の洗浄方式を挙げて、特徴と留意点を述べる必要があります。

3種類目が空気洗浄であることは分かるのですが、その留意点を示すのが難しいです。

というわけで、僕が受験生なら、この問題は選んでいないですね。

それから、この問題は、洗浄終了時と通水初期の措置を示すことを求めています。

3種類の洗浄方式に言及したわけですから、それぞれについて、洗浄終了時と通水初期の措置を言及しなければならないように見えます。

しかしながら、そもそも表面洗浄と空気洗浄は、単独で実施しないです。

逆流洗浄との組み合わせて行います。

というわけで、全ての洗浄方式に共通の内容として、スローダウンとスロースタートについて詳述すればいいわけです。

この辺の判断も悩ましいので、この問題は難問だったと思います。

 

 

【出題された背景や狙い・解答に繋がるポイント】

 急速ろ過池については、平成24年度、平成26年度、平成30年度等、過去に何度も出題されたことのあるテーマです。令和5年度は、急速ろ過池の洗浄方式がクローズアップされたものです。クリプトスポリジウム等対策のため、ろ過池出口の濁度を0.1度以下に維持する必要があり、多くの水道事業体の課題になっています。このことが当該テーマの頻出される背景になっています。

この問題は、洗浄方式を3種類挙げて、その特徴と洗浄する際の留意点を述べることを求めています。表面洗浄、逆流洗浄及び空気洗浄を列挙した上で、それぞれ内容を示す必要があります。表面洗浄と逆流洗浄は一般的であることから、空気洗浄について言及することが、この問題を正答する上で最大のポイントになります。

また、この問題は、洗浄終了時から通水初期に講じる措置について述べることを求めています。ろ過池を洗浄した後、通水初期は濁度が上昇しやすいです。クリプトスポリジウム等対策のため、系統全体ではなく各ろ過池の出口の濁度を0.1度以下にする必要があります。このため、適宜、スローダウンやスロースタートを実施する必要があり、このことについて説明することが解答を作成する際のポイントになります。

 

【当該テーマについて上記以外で勉強するべき事柄】

急速ろ過池は、技術士試験において頻出テーマです。引き続き、勉強するべきです。令和5年度は、ろ過池の洗浄がクローズアップされましたが、このテーマについて勉強する場合は、ろ過池出口の濁度管理について勉強しておくべきです。具体的には、ろ過池出口の濁度が上昇する原因は、①洗浄不足、②ろ過速度上昇、③凝集沈澱池からのキャリーオーバー等あり、これら事象が発生する原因とその対策を説明できるよう、内容を整理しておけば良いでしょう。

また、今後の試験対策として、紫外線処理について勉強することをお勧めします。令和元年5月の施設基準省令の改正により、地下水だけではなく河川表流水についても、クリプトスポリジウム等対策として紫外線処理を導入できるようになりました。このことを踏まえ、急速ろ過方式の浄水場において紫外線処理を導入する際の技術的な要件について内容を整理しておくと良いでしょう。

 

 

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