Q4 小水力発電 1200字
水道施設内に小水力発電を導入する場合に、①調査・検討すべき事項とその内容、②業務を進める手順と留意点、工夫を要する点を述べた上で、③業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
【解答例】
1 小水力発電の導入に関する調査・検討内容
(1)基本情報の調査
配水池等の施設間を連絡する管路、減圧弁が設置された管路等、未利用水頭が存在する水道施設を抽出する。当該水道施設の有効水頭と流量を調査し、配水池等の流入弁や流出弁、管路上の減圧弁等の口径、構造、減圧量、弁室のスペース等を確認する。その上で、当該水道施設の設備容量、電力の使用形態等を調査する。
(2)発電出力・電力量の検討
小水力発電に使用できる水量と有効水頭を見極め、水車効率、発電効率を決定し、発電出力を算定する。その上で、発電できる電力量を算定する。
(3)導入効果の検討
小水力発電を導入する目的を明確にした上で、経済性の確認を行う。具体的には、発電した電力を水道施設で自家消費する場合、電力費の削減額、温室効果ガスの抑制量等を確認する。固定価格買取制度を利用して電力会社に売却する場合は、売却益を確認する。
(4)発電設備の検討
小水力発電の水車の種類としては、横軸フランシス水車、ポンプ逆転水車、クロスフロー水車、横軸プロペラ水車等がある。これら水車は、水量と有効水頭について適用範囲があり、それぞれ大きさも異なるため、導入可能なものを選定する。
交流の発電機としては、誘導機と同期機がある。系統連絡の有無、水車の回転速度を考慮して、適切なものを選定する。
小水力発電設備と附属配管のレイアウトを行い、施設整備と維持管理に要する費用を算定する。
2 業務の手順と留意点・工夫点
業務は、上述の(1)〜(4)の手順で実施する。
基本情報の調査に際して、図面や資料の確認だけではなく、現場確認を行い、その結果を業務に反映することに留意する。
発電出力・電力量の検討に際して、小水力発電を導入することにより、既存水道施設の水運用に悪影響を及ぼさないよう注意する。
導入効果の検討に際して、小水力発電を導入できる水道施設が複数存在する場合、発電原価を計算し、各方法の比較検討を行うべきである。効果が高く、施設整備が容易な場所から順次、導入を進める。また、PPAモデルの採用等、総合的な検討を行う必要がある。
発電設備の検討に際して、停電発生に伴い水車が無拘束状態になり故障しないよう、バルブによる流量調整等、安全対策を講じる点に留意する。
3 関係者との調整方策
関係者間で対面協議、リモート会議、メール審議を実施し、業務に対する要求事項、実運用後の留意事項等について、明確かつ効果的な意思疎通を行い、関係者の利害を調整しながら業務を進める。
【出題者の感想】
「そろそろ小水力発電が出題されるかな」と思い、予想問題を作成しました。
設計指針に小水力発電の記載があったので、解答例を作成するにあたっては、これを2枚にまとめればいいと思っていました。
ところが、設計指針の内容は、自家消費をすることが前提になった内容でした。
また、系統連系等、電気設備に関する内容が主でした。
設計指針の内容をそのまま要約して書いたら、この予想問題の題意とは少し趣旨が異なる印象です。
小水力発電の導入計画に関わったことがあったので、その時の経験に基づいて内容を記しています。
参考になれば幸いです。
【上述以外で勉強するべき事柄】
・ポンプ設備(種類と特徴)
・自家発電設備(目的と設置時の留意点)
●予想問題の解答例
※ 1つ前の問題の解答は、 こちら をどうぞ。
●技術士の試験対策のテキスト
※ テキストを最初から見たい方は、 こちら をどうぞ。
●二次試験の過去問と解答例
※ 令和4年度の試験問題(上水道及び工業用水道)と解答例を見たい人は、こちら をクリックしてください。
※ 令和3年度の試験問題(上水道及び工業用水道)と解答例を見たい人は、こちら をクリックしてください。
※ 令和2年度の試験問題(上水道及び工業用水道)と解答例を見たい人は、こちら をクリックしてください。
※ 令和元年度の試験問題(上水道及び工業用水道)と解答例を見たい人は、こちら をクリックしてください。
※ 平成30年度の試験問題(上水道及び工業用水道)と解答例を見たい人は、こちら をクリックしてください。
●二次試験の予想問題
※ 令和4年度の予想問題と解答例を見たい方は こちら をどうぞ。
※ 令和3年度の予想問題と解答例を見たい方は こちら をどうぞ。
※ 令和2年度の予想問題と解答例を見たい方は こちら をどうぞ。
※ 令和元年度の予想問題と解答例を見たい方は こちら をどうぞ。
●口頭試験について
※ 技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)の解説を読みたい方は こちら をどうぞ。
※ 口頭試験対策を見たい方は、 こちら をどうぞ。