Q5 急速ろ過 1200字
急速ろ過方式の浄水場において、ろ過水濁度の上昇について対策を検討する場合、①調査・検討すべき事項とその内容、②業務を進める手順と留意点,工夫を要する点を述べた上で、③業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
【解答例】
1 ろ過水の濁度上昇対策に関する調査・検討内容
急速ろ過方式の浄水場において、ろ過水濁度が上昇した場合、以下のことについて調査・検討を行う。
(1)基本情報の調査
施設の形状、構造、能力、仕様、建設年度等の情報を整理する。原水、凝集沈澱の処理水及びろ過水について、水質(水温、濁度、pH等)、水量、使用薬品の種類や注入率等のデータを収集する。
(2)原因の究明
ろ過水の濁度が上昇する原因は、ろ過池の異常と凝集沈澱処理不良に大別できる。
ろ過池の異常は、①ろ過障害(砂層厚の減少、マッドボールの発生、負水頭ろ過等)、②ろ層以降の施設の異常(集水施設の劣化、濁度計の故障等)に起因する。
凝集沈澱処理不良は、①薬品注入の異常(薬品の品質不良、注入不足、誤注入、原水の濁度上昇等)、②凝集処理の異常(撹拌・混合の不足等)、③沈澱処理の異常(不適切な表面負荷率、短絡流発生等)に起因する。
これらを踏まえ、ろ過池の運転状況、薬品の注入状況、ジャーテストの実施方法等の調査、各施設の点検を実施し、ろ過水の濁度上昇の原因を特定する。
(3)対策の検討
ろ過池の異常への対策として、洗浄工程において、洗浄時間の見直し、サイフォン、弁栓類、表面洗浄管等の補修・更新等を行う。ろ層において、砂の補充、交換を行う。ろ過水濁度を0.1度以下に維持できない場合、洗浄のスロースタート・スローダウン、ろ過池二次側への紫外線処理の導入を実施する。ろ層以降では、集水施設の補修等を実施する。
凝集沈澱処理不良への対策として、撹拌混合速度や薬品注入量の調整、ジャーテストの実施方法の見直しを行う。施設の清掃、補修、更新を行い、機能回復を図る。こうした対策によっても、効果が不十分な場合、高塩基度PACや凝集補助剤等の導入、沈澱池における沈降装置の整備等を実施する。
2 業務の手順と留意点・工夫点
業務は、上述の(1)〜(3)の手順で実施する。
基本情報の調査の際、図面や資料の確認だけではなく、現場確認を行い、その結果を業務に反映する必要がある。原因の究明の際、浄水場の系列毎に調査を行い、系列間の相違点を確認することが重要である。こうした調査は、ろ過池と凝集沈澱池に限定せず、排水処理施設も含める必要がある。対策の検討の際、水安全計画を策定し、管理基準を遵守できる対策を講じる必要がある。薬品注入に関する実証実験等を行い、最適な対策を選択することが重要である。
3 関係者との調整方策
関係者間での対面協議に加え、メール審議やリモート会議を実施する。成果物への要求事項、追加・削減するべき作業等について明確かつ効果的な意思疎通を行い、関係者の利害を調整しながら業務を進める。
【上述以外で勉強するべき事柄】
・キャリーオーバー対策について
・沈澱池の設計(傾斜管と表面負荷率)
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