【技術士対策42】コンポスト化の拡大 | 新見一郎

新見一郎

勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

朝日新聞webの記事で、下水汚泥のコンポスト化について掲載がありました。

以下のとおりです。

 

政府は17日、下水処理の過程で出る汚泥を農業向けの肥料として活用するための官民検討会を開いた。

下水汚泥には人のし尿に由来するリンなど肥料の原料となる成分が豊富に含まれるが、肥料として使われているのは1割にとどまる。

検討会は、岸田文雄首相が9月に「下水汚泥の利用拡大により肥料の国産化・安定供給を図る」よう指示したことを受けて農林水産省と国土交通省が設けた。検討会は農水省と下水道を管轄する国交省の幹部や学者、肥料メーカーの担当者らで構成され、年内をめどに利用拡大に向けた課題を整理する。この日の初会合で、農水省の岩間浩審議官が「官民が一つのテーブルで議論する初めての取り組み。大変よろこばしい」とあいさつ。国交省の松原誠下水道部長は「昔やれていたことを今のシステムのなかでどう実現していくのか。究極の循環型社会の実現だ」と述べた。出席者からは「下水汚泥という名前のイメージが悪い」「コストや安定供給の面で課題がある」などの意見が出たという。

国内の農業で広く使われている化学肥料は、原料のほぼ全てを海外に依存している。中国やロシアなど一部の地域に偏在していることもあり、ウクライナ情勢などを受けて調達価格が高騰。輸入できなくなるおそれも指摘されている。

政府は月内にまとめる総合経済対策に、下水汚泥の利用拡大に向けた事業者の支援策を盛り込む方針だ

https://www.msn.com/ja-jp/money/business/e3-80-8c-e7-a9-b6-e6-a5-b5-e3-81-ae-e5-be-aa-e7-92-b0-e5-9e-8b-e7-a4-be-e4-bc-9a-e3-80-8d-e4-b8-8b-e6-b0-b4-e6-b1-9a-e6-b3-a5-e3-81-ae-e8-82-a5-e6-96-99-e5-88-a9-e7-94-a8-e6-8b-a1-e5-a4-a7-e3-81-b8-e3-80-81-e5-88-9d-e3-81-ae-e5-ae-98-e6-b0-91-e6-a4-9c-e8-a8/ar-AA133c6B

 

国内の肥料は輸入に依存していて、価格が高騰しているのだそうです。

そこで、注目されたのが下水汚泥のコンポスト化です。

 

 

下水汚泥は、下水処理場の水処理工程で発生します。

下水汚泥には、微生物、有機物、リン、窒素が含まれています。

このため、泥土に下水汚泥を混ぜて、発酵させて、乾燥させると肥料を作ることができます。

この工程をコンポスト化と呼びます。

 

多くの下水処理場で採用されている方法ですが、下水汚泥の1割程度しかコンポスト化を実施していません。

最新の下水処理場では、環境負荷低減の観点から、下水汚泥の固形燃料化を実施している場合もあります。

しかしながら、多くの下水処理場内では、下水汚泥を焼却しています。

 

それは、なぜか?

 

下水汚泥が、産業廃棄物だからです。

コンポスト化は、下水汚泥の有効利用する行為ですが、結局のところ、産業廃棄物の処分になります。

つまり、下水処理場は、コンポスト業者に下水汚泥を収集、中間処理を行ってもらうため、処分費を支払っているわけです。

これは相応の費用です。

下水処理場としては、下水汚泥の処分に関するコストを縮減したいところです。

そこで処分するべき下水汚泥を減少させるため、焼却を行っているわけです。

 

新聞記事にある通り、下水汚泥の利用拡大により肥料の国産化を図ることを、首相が打診されました。

下水汚泥のコンポスト化を推進する必要があります。

 

下水汚泥のコンポスト化の割合を増やした場合、現状の仕組みのままでは、2つのことが問題になります。

 

1つ目の問題点は、処分費の増大です。

前述したとおり、下水汚泥のコンポスト化は、下水処理場が処分費を支払っています。

下水汚泥のコンポスト化の割合を増やせば、処分費がアップします。

そして、その処分費は、下水使用料により賄っているため、料金がアップする可能性があるわけです。

 

2つ目は、需要と供給のバランスです。

下水汚泥の肥料を大量に作っても、それが売れなければ残ってしまいます。

業者としても、在庫があるのであれば、下水汚泥のコンポスト化を実施しないです。

そうなると、下水汚泥の安定的な処分を行うことができなくなります。

 

一方、下水汚泥の全量をコンポスト化することによるメリットもあります

焼却施設の維持・修繕・更新が不要になります。

さらに、省資源を推進することができますし、焼却に要するエネルギー、温室効果ガスの排出を削減することができます。

 

以上のことを踏まえると、1つ目の課題、つまり処分費の増大については、全量をコンポスト化すれば焼却施設が不要になるため、もしかしたら、負担増と負担減で相殺することができる可能性があります。それに、下水汚泥で作った肥料の販売が伸びれば、自ずと処分費の価格も低下するはずです。うまくいけば、コスト縮減になります。

そうなると、2つ目の課題、つまり需要と供給のバランスがネックになります。

需給のバランスを確保するためには、作ったら作っただけ肥料を売る必要があります。

つまり、下水汚泥製の肥料の高品質化、それから、農家が下水汚泥製の肥料を使った際のインセンティブを設けることが重要になります。

このため、行政と大手肥料メーカによるプロジェクトの成果が、今後の下水汚泥の方向性を決定付けることになります。

コンポスト化の拡大に注目ですね。

 

なお、 コンポスト化については、以前もブログを作成しています。

これについて、を読みたい方は こちら をどうぞ。

 

※ 【技術士対策】の1つ前を読みたい方は こちら をどうぞ

 

●技術士試験対策

※ 【技術士対策25】「題意」に答えるために何をすればいいのか? を読みたい方は こちら をどうぞ

※ 【技術士対策24】「観点」とは何か? を読みたい方は こちら をどうぞ

※ 【技術士対策20】「DXの推進」 を読みたい方は こちら をどうぞ。

※ 【技術士対策13】「AIによる更新計画」 を読みたい方は こちら をどうぞ。

 

 

●下水道の基礎知識

※「マネジメントサイクル」については こちら をどうぞ。

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