「教えるということ」について | 技術士を目指す人の会

技術士を目指す人の会

勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

●おススメの書籍

今回読んだ本は、「教えるということ」という本です。

はじめにの部分に、以下のようなことが書いてありました。

 

現代の本を読んでわからないのは、書き手がアホやから

 

この一文を読んで、この本を衝動買いしました。

とんがったコメントですが、ご自分が作家でもあるわけですから、これは自分に課したハードルでもあります。

この本の内容を説明した後、この内容を、有資格者としてどう活かしていけばいいか言及したいと思います。

 

この本の作者は、出口治明さんです。

ライフネット生命の創業者です。

現在は、立命館アジア太平洋大学の学長です。

この本の目次は以下のとおりです。

 

第1章 後輩たちに「社会を生き抜く武器」を与える
第2章 根拠にもとづいて話す。選択肢を与える
第3章 「尖った人」を生み出すための高等教育
第4章 正しい「人間洞察」を前提にした社会人教育

 

 

●教育の目的

作者曰く、教育基本法の趣旨を考えると、教育の目的は2つあるです。

1つ目は、自分が感じたことや自分の意見を、自分の言葉ではっきりと表現できる力を育てることです。

自分の頭で考える力を身に付ける必要があるのだそうです。

2つ目は、お金、社会保障、選挙等、社会人になるとすぐに直面する世の中の仕組みを教えることです。

つまりは、社会の中で生きていくため、必要最小限の知識を身に付けておく必要があるというわけです。

 

●自分で考えるとは

社会や技術の進歩のスピードが早くなっています。

変化に対応するためには、自分で物事を考える必要があるというわけです。

では、どうすればいいのか?

作者は、「タテ・ヨコ・算数」という言葉を使って表現しています。

「タテ」は、昔の人の考えを方を知ることです。

昔の人が言っていたことが、現在まで残っているということは、それが極めて重要なものだったからです。

だから、昔の人が考え、そして残した言葉は、とても貴重なものです。

特に、ベースになる考え方は、普遍的なものです。参考にするべき考え方です。

と言うわけで、「タテ」が重要になります。

次に、「ヨコ」は、外国の人の考え方を知ることです。

社会や技術の進歩は、グローバル化による影響が大きいです。

このグローバル化は、今後さらに進展します。

自分で物事を考えた際、その価値を客観的な視点で判断する必要がありますが、そんな時、自国だけではなく、世界のことを知った上で、判断する必要があるわけです。

次の「算数」ですが、書籍の中では、ファクト、ロジック、エビデンスに言い換えています。

ファクトは事実。

ロジックは論理。

エビデンスは科学的根拠。

つまり、科学的根拠のある事実に基づいて判断し、それを論理的に説明する必要があると言うわけです。

 

「タテ」と「ヨコ」により、誰かの考え方を参考にしながら、自分で考えるための基礎能力を身に付けます。

こうした基礎能力ができたら、「算数」により、自分で考えて、誰かに説明します。

そして、これを教えることが、教育の基礎になるというわけです。

 

●選挙に行くべき理由

作者が選挙について語っている内容が、なるほどと思えるものでした。

少しアレンジを加えて、選挙について説明します。

 ①立候補者の当選予想を確認する。

 ②その予想に満足なら、投票に行ってその候補者に投票するか、白票を投じるか、投票を棄権すればいい。

  いずれにしても、その立候補者は当選するだろう。

 ③その予想に不満なら、投票に行って、違う候補者に投票するべきだ。

とてもシンプルで、解りやすいです。

 

「ろくな候補者がいなから投票には行かない」、「誰が政治をしても同じだから選挙には行かない」と言っている人は、知らず知らずのうちに、②をチョイスしているわけです。

つまり、その候補者を承認して、投票しているのと変わらないわけです。

それから、「もっと若い人に政治をやって欲しい」、「宗教団体と関係を断ち切って欲しい」と思っているのに、選挙に行かない人は、世の中を変える権利があるにも関わらず、それを放棄していることになるわけです。

昔は選挙権が無かったんだから、ちゃんと選挙には行くべきだとか、説明されても、ピンとこないでよね。

でも、先ほどの説明であれば、選挙とは、自分の意思表示であることを理解することができます。

また、選挙権を有することは、世の中に変化を起こす権利を有することと同義だと感じることもできますね。

 

●教育の限界

作中で、作者の出口さんと、東京大学の岡ノ谷教授が対談しているのですが、岡ノ谷教授のコメントが面白かったので、紹介します。


もしも、ある程度の年月、同じ価値観に沿った政治が続けば、進化が起こるのだそうです。

ところが、同じ価値観の政治体制は長く続かない。せいぜい2世代、つまり50年くらいです。

これでは短すぎて、進化は起こらないのだそうです。

 

政治が進化しないのであれば、教育も進化しません。

なぜなら、近代の教育は、国家に必要な労働力と軍事力を育てるためにあるからなのだそうです。

 

それ故に、教育は、環境変化に適応できるような行動レパートリーを教えるのではなく、その時の政治経済状況に適応できるような短期的な知識を与えているのだそうです。

 

そうすると、何が起こるのでしょうか。

 

例えば、東大生の親は、収入が多いという事実があります。

東大卒ならば十分な収入があり、我が子に高度な教育を受けさせることができるから、子供が東大に合格できるというメカニズムです。

子供が東大に合格し、卒業すれば、自ずと収入も多くなりやすいです。

しかしながら、次の世代、つまり、その子供の子が、東大に合格して、卒業したしても、収入が高くなるとは限らないです。

なぜなら、教育は、今の政治体制が続く2世代、つまり50年くらいしか有効ではないからです。

世の中が変わってしまった場合、その教育で得られたスキルは前世代的なものになります。

つまり、東大に合格して、卒業したからと言って、それが収入に直結するとは限らないわけです。

 

なるほどですね。

東大生だからと言って、それだけでリッチになれるとは限らないわけです。

近代教育には限界があるからです。

東大の教授が語るからこそ、説得力がありますね。

 

環境変化に適応できるような行動レパートリーが重要です。

そして、それを「タテ・ヨコ・算数」によって考えるべきですね。

 

●技術者の教育
技術者の教育は、「OJT」に尽きると思います。

OJTは、実際に仕事をする中で鍛錬するという意味です。

 

OJTは、今必要な専門知識を、その場で教える必要があります。

即座に役に立ちから、記憶に残ります。

OJTの際、将来必要になるかもしれない知識を教えたくなりますが、それは無駄です。

なぜなら、即座に役に立たないため、相手方の記憶に残らないです。

 

OJTは、業務を遂行する上で必要な技能のうち、相手のレベルに合ったものを教える必要があります。

指導者は、その場で実際にやって見せ、生徒は、その場で実際にやります。

そして、指導者は、悪いところを指摘し、コツを教えます。

 

OJTの際、業務に必要のない技能や相手のレベルに合っていない技能を教えたらダメです。

興味のないこと、はなから出来ないようなことを教えても、技術力は向上しないからです。
 

また、OJTをやっても、相手方に当事者意識がなければ、それは徒労に終わります。

このため、まずは自分の頭で考えてもらうことからスタートする必要があるわけです。
 

 

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