6.3 100%の解答になるよう編集する方法
●編集の重要性
文章には書き手が存在し、読み手が存在します。
記述試験の場合、書き手は受験生で、読み手は採点官です。
受験生は採点官に次のことをやってもらう必要があります。
①書いてあることを理解してもらう
②最後まで読んでもらう
受験生がどんなに一生懸命に解答を作っても、その文章が解りやすいものでなければ、内容を理解してもらえません。
書いてあることを採点官に理解してもらえなければ、その時点で不合格になっていまいます。
また、書いてあることを理解してもらえたとしても、問題と関係ないことが書いてあると、最後まで読んでもらえません。
そうなると、不合格になっていまいます。
このため、受験生は、まずは解りやすい文章を書く必要があります。
解答を最後まで読んでもらえるよう、構成を組み立て、題意に沿った内容に仕上げる必要があります。
ここで重要なことを言っておきます。
自分で作った文章は、それがどんな悪文であっても、自らが読むのであれば、ちゃんと意味が解ります。
これは当たり前の話ですが、解りやすい文章を書く上で支障となります。
文章は、誰が読んでも、同じ意味になる必要があります。
ところが、自分で作った文章は、自分が考えたわけですから、どんな悪文でも意味が通じてしまいます。
このため、まずは、自分で書いた文章を、客観的に読む必要があります。
これをやらなければ、解かりやすい文章を作ることはできません。
客観的に読むためには何をすればいいのか?
最もシンプルな方法は、一定の期間を空けてから文章を読むというものです。
時間がたてば、書いてあることを忘れてしまいます。
自分の文章であっても、他人が書いたもののように読むことができます。
その他に、自分で作った文章を音読するのも有効です。
目で読んだだけでは気がつかない違和感も、耳から情報が入ることで感じ取れるようになれます。
こうした工夫をすることで、客観的に自分の文章を読むことができます。
その上で、解りやすい文章になるよう、ブラッシュアップを行います。
この繰り返しにより、文章は解りやすくなっていきます。
これが編集という作業です。
編集は、70%の解答を書き出す作業より時間がかかります。
この作業は、正直なところ面白くないかもしれません。
しかしながら、編集を行うことにより、読み手に内容を理解してもらい、最後まで読んでもらえるような文章が出来上がります。
有資格者になった際、作成した資料が解りにくいと、コンサルタントとして顧客を満足させることができないです。
試験勉強する過程において、編集という作業を経験することにより、顧客を満足させる能力を身につけることが大切です。
解りやすい文章を作るのは難しいです。
私も含めて技術士の受験生は理系です。
基本的、国語が苦手な人種です。
ある日突然、文章力がアップするものではありません。
このため、地道な努力が必要です。
ここでは、編集に関するコツを少しだけ述べておきます。
具体的には、どうなったら文章が解りにくくなるのを理解して、これを避けるというものです。
例えば、以下の①〜④のことを行うと、文章は解りにくいものになります。
このため、これらに該当しないよう注意して文章を作成すれば、解かりやすいものになるわけです。
①「。」がなかなか出てこない
一文を長くするのは、書き手にとっては楽かもしれません。
しかしながら、読み手にとっては苦痛です。
このため、一文を短く切ってください。
本来、一文には一つの事柄を書くものです。まずは、一文のなかで書き記す事柄を絞り込む必要があります。
ただ、こうした作業が難しいからこそ、一文が長くなってしまうわけです。
一文が長くなる人の特徴として、「ので」、「おり」、「だが」等の語尾を使いがちです。
こうした言葉は、一文に複数の事柄を書き込むために使うわけです。
このため、こうした言葉をできるだけ使わないことが重要になります。
例えば、複数の事柄を列挙する場合は、箇条書きを取り入れると良いでしょう。
それから、長くならないよう強引に「。」を打つと決めるのも良いかです。
一文の長さは2行以内がベストと言われています。
このため、2行を超えそうになったら無理やり「。」を打ちます。
こうしたことを繰り返しているうちに自然と一文が短くなります。
②なかなか改行しない
改行は、段落が変わった時に行います。
段落というのは、話題や論点が変わる際に行います。
このため、話題・論点が変わらないのであれば、10行であろうと20行であろうと、改行する必要はありません。
しかしながら、長い文章というのは読みにくいです。読み手に好まれません。読むのが疲れるからです。
筆記試験の場合、読み手は採点者です。
長い文章は採点の際、心理的な負担になり、マイナス評価につながります。
このため、解答は5~8行を基本に改行することをお勧めします。
5行になったら機械的に改行するのではなく、1つの事柄が5~8行で終わるよう、文章をまとめることが重要になります
③接続詞の使い方が間違っている
「しかし」や「だが」は、前文の内容の逆説を述べるための接続詞です。
否定したことを否定すると、それは意味がなくなります。
そうであるにも関わらず、僕らは、「しかし」と「だが」を組み合わせたり、「だが」を連続して使ったりしてしまいがちです。
例えば、以下のような文章です。
電気自動車は高価だが、しかし、地球温暖化対策の観点から電気自動車を導入するべきだが、大量に購入すると事業運営を圧迫する可能性がある。
上述の例文は、1つの文の中に、「だが」と「しかし」が複数存在します。
否定したことを否定しているため、何を言いたいのか解らない文章になっています。
まずは、「だが」と「しかし」を使う回数を減らす必要があります。
上述の文章は以下のように編集することが求められます。
地球温暖化対策の観点から電気自動車を導入するべきだ。
しかし、電気自動車は高価であるため、大量に購入すると事業運営を圧迫する可能性がある。
これで文法的にはOKです。
ただし、この文章は、電気自動車を購入しない方がいいのか、それとも購入するべきか、書き手の意図が解りません。
そこで、以下のように修正します。
地球温暖化対策の観点から電気自動車の導入は有効である。
しかし、電気自動車は高価である。
このため、事業運営を圧迫しない範囲で購入するべきである。
接続詞は単なる文章のつなぎではありません。
何を主張したいのか明確にした上で、慎重に使う必要があります。
④第一印象がイマイチ
プレゼンテーションにおいて、第一印象は極めて重要です。
メラビアンの法則というものがあります。
これは、私たちが人から提案を聞いて、それを承諾するか拒否するか判定する際、全体の9割の人が、提案者の第一印象で決定するという法則です。
つまり、提案の内容ではなく、提案者の雰囲気によって、可否が決まるわけです。
こうしたことから、文章においても「パッと見」の第一印象を良くする必要があります。
全体的に隙間がなく、字がびっしり書いてあると、読むのが嫌になります。
第一印象が悪いです。
適度な余白が必要です。
余白を作るためには、適度な間隔で句読点を打つ必要がありますし、適度な行数で改行する必要があるわけです。
ただし、改行を連発すると、行数が増えます。
行数が増えると、解答が原稿用紙に収まらなくなります。
文章を削除する必要に迫られます。
当然ですが、重要な部分は削れません。
このため、不必要な文章を削る必要があります。
つまり、文章の第一印象をよくするためには、不必要な文章を削る必要があり、これをやるためには、何が不必要な文章なのか判断する必要があるわけです。
これは大変です。
自分で作った文章の中には、苦労して調査した情報、お気に入りのフレーズがあると思います。
しかしながら、その情報やフレーズがなくても、意味が通じるのであれば、勇気を出して、バッサリと削除しなければならないです。
その方が第一印象は良くなるからです。
不必要なフレーズや情報というのは、往々にして、本文とは別書きで、括弧内に書くことができます。
括弧内に追いやることができるようなフレーズや情報というのは、それが無くても、文章としては意味が通じるはずです。
括弧内の文章はバッサリと削除すればいいわけです。
それから、複数の項目を列記する場合、項目毎に番号をふったり、箇条書きにしたりしても良いです。
これで、文書は読みやすくなります。
●題意を再確認することの重要性
解答を作成していると、問題文を無視して自分の書きたいことを書いている場合があります。
題意に答えていない解答を作った場合、かなりの高い確率で不合格になってしまいます。
このため、まずは、問題文をよく読む必要があります。
特に、リード文は注意が必要です。
こうした問題は、そこ書いてある内容が、後の問いの記述条件になっているからです。
リード文をよく理解した上で、各問いの記述項目の内容を再確認します。
編集の段階ですから、既に解答を作成しているはずです。
しかしながら、その事実はそばに置いて、改めて出題者が何を求めているのか、ゼロベースから考えます。
何を書くべきことを見極めることができたら、自分の作った解答が、題意に答えているか確認します。
題意に答えていれば良いです。
でも、題意に答えていないのであれば、大幅修正をする必要があります。
また、技術士の試験問題は、多くの場合、問題を作成する際に参考元となる文献が存在します。
こうした参考文献は、設計指針、維持管理指針、厚生労働省の通知や手引き等が該当します。
これら参考文献には、重要なキーワードが存在します。
具体的なキーワードが存在する以上、そのキーワードが解答の中に含まれている必要があります。
解答にキーワードが示されていない場合、大幅に減点される可能性があります。
つまり、合格するためには、題意を踏まえて、必要なキーワードを解答に書き記す必要があるわけです。
それから、多くの人に言えることですが、文字数を稼ぐために、題意に答えた内容と、問題とは直接関係ない内容が混在する解答を作ってしまいがちです。
書いてある内容が間違っていなければ、文字数が多くなる分、解答の評価は高くなるように感じるかもしれません。
しかしながら、解答の評価は下がってしまいます。
採点官は問題文と関係のない文章は読みたくないのです。
これは、採点官だけではなく顧客も同じです。
自分に関係ない話は聞きたくないものです。
このため、自らの解答を読んで、題意に答えていない部分があれば、勇気を出して、削り落とすべきです。
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