技術士合格法(6.1 解答の基本構成)(R6.4.10更新) | 新見一郎

新見一郎

勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

 解答の作成

 

6.1 解答の基本構成

 

●前文・主文・末文がオススメ

文章の構成は、「起・承・転・結」、「序論・本論・結論」、「前文・主文・末文」等があります。

「起・承・転・結」は、小学校の国語の授業で習う構成で、多くの物語がこの構成を採用しています。

「起」は、物語の導入部分。物語の舞台となっている時代、場所等を説明します。

「承」は、主人公が登場して物語がスタートします。

「転」は、主人公を取り巻く環境が一変します。何らかのトラブルが発生してその対処にあたります。

「結」は、最終的にそのトラブルがどのように解消されたのか、或いはなぜ解消されなかったのかを説明します。

例えば、童話の桃太郎を「起・承・転・結」に当てはめてみます。

 

「起」:昔々、村にお爺さんとお婆さんが住んでいた。

「承」:川で拾った桃から男の子が誕生。桃太郎と名付けて育てた。

「転」:鬼が村を襲う。桃太郎は、犬、猿、雉を仲間にして鬼退治に向かう。

「結」:桃太郎は、鬼退治に成功する。宝を持ち帰り、幸せに暮らした。

 

「起・承・転・結」を使ってストーリーを展開すると、読み手を強く惹きつけることができます。

上手く使いこなせば、メッセージ性の高い文章を作ることができます。

しかしながら、「起・承・転・結」はハードルが高すぎます。

そもそもですが、資格試験の解答を作るために、ストーリー性豊かな文章は必要ありません。

というわけで「起・承・転・結」はお勧めできません。

 

次に、「序論・本論・結論」について説明します。

「序論・本論・結論」はビジネス文書で、一般的に使われている構成です。

「序論」は、問題を提起します。

「本論」は、問題の原因、解決策の内容を提示します。

「結論」は、その解決策を実施するべきことを宣言します。

例えば、桃太郎の話を少しアレンジして「序論・本論・結論」に当てはめてみます。

 

「序論」:鬼が村を襲った。

「本論」:対策が必要である。

               逃げる と 戦う、2つのプランが存在する。

               村を捨てて逃げば安全を確保できる。

               しかし、鬼は必ず追ってくる。戦うべきである。

               ただし、鬼は強い。このため戦力を強化する必要がある。

「結論」:桃太郎は、犬、猿、雉を仲間にして鬼と戦うべきである。

 

このように展開すると、文章に説得力を持たせることができます。

ただし、「序論・本論・結論」という構成は、本論で出した方向性を結論で締めくくります。

主張が強すぎる側面があります。

筆記試験の場合、採点官は模範解答を見ながら、受験生の解答を読む進めることになります。

「序論・本論・結論」で文章を展開すれば、受験生の主張をアピールできますが、模範解答のコンセプトとちょっとしたズレがあった場合、強い主張が仇になります。

採点官の心象を悪くし、マイナス評価目を受ける可能性があります。

また、限られた解答用紙で、本論と結論で同じ内容を繰り返すと、無駄が多い文書に見える可能性があります。

 

次に、「前文・主文・末文」です。

「前文」は、「はじめに(プロローグ)」です。概要、背景、経緯等を述べます。

「主文」は、具体的な取組、対策、結果等について詳述します。

「末文」は、「おわりに(エピローグ)」です。今後の展望等を述べます。

先ほどの桃太郎の話を「前文・主文・末文」に当てはめてみます。

 

「前文」:鬼が村を襲った。

「主文」:対策が必要である。

     「逃げる」と「戦う」2つのプランが存在する。

     村を捨てて逃げれば安全を確保できる。

     しかし、鬼は必ず追ってくる。戦うべきである。

     ただし、鬼は強い。戦力を強化する必要があった。

     そこで、犬、猿、雉を仲間にして戦った。

     その結果、鬼退治に成功した。

「末分」:桃太郎は、宝を持ち帰り、幸せに暮らした。

 

「前文」は、背景を示したもので、過去にスポットをあてたものです。

「主文」は、結果を示したもので、言い換えれば現在のことです。

「末文」は、その結果がもたらした効果を示したもので、その後の未来のことです。

「前文・主文・末文」は、「過去・現在・未来」の時系列になっているわけです。

「前文・主文・末文」は、シンプルな構成です。

文章の構成はいろいろありますが、技術士試験の勉強の際は、「前文・主文・末文」で解答を作るのがおススメです。

それでは、次に、「前文・主文・末文」の使い方について、詳しく説明します。

 

●前文・主文・末文の使い方

従前の技術士試験では、筆記試験に合格した後、受験生は体験論文を作成・提出していました。

体験論文の記述項目は、①概要を述べた上で、②立場と役割、③課題及び問題点、④技術的提案、⑤技術的成果、⑥現時点での技術的評価及び今後の展望を述べることになっていました。

試験官は、体験論文を読んで、受験生が技術士としてふさわしい専門的応用能力を身につけているかどうか判断していたわけです。

このことは、体験論文の記述項目に沿って、特定のテーマについて説明すれば、専門的応用能力を発揮できることを意味します。

また、先程の①~⑥の記述項目は、時系列に並んでいることがわかります。

以下のように、①~⑥を過去、現在、未来に割り当てることができます。

 

過去 = ①概要・②立場と役割

現在 = ③課題及び問題点・④技術的提案・⑤技術的成果

未来 = ⑥技術的評価及び今後の展望

 

実は、この構成は「前文・主文・末文」になっています。

つまり、技術士試験において受験生が技術士としてふさわしいか判断するために作成していた体験論文の構成が「前文・主文・末文」になっているわけです。

 

●情報の体系化で解答を作成することができる

先程の①~⑥をシンプルにして、「前文・主文・末文」に当てはめると、以下のようになります。

 

前文 = 概要

主文 = 問題と対策

末文 = 今後の展望

 

「前文」で概要、「主文」で問題と対策、「末文」で今後の展望、こうした構成をどこかで見たことがありませんか?

5.5 情報の体系化で説明した「現状・問題・対策」というフレームワークです。

つまり、「現状・問題・対策」の内容を文章化すれば、「前文」と「主文」が完成するわけです。

さらにです。5.5 情報の体系化のWHY思想を思い出してください。

5回WHYという自問自答を繰り返した後、最後のHOWに答えるというものです。

最後のHOWの答は、そのテーマの本質的な課題であり、同時に将来展望を述べています。

つまり、WHY思想で導き出した結論を文章化すれば、「末文」が完成するわけです。

 

のように、情報の体系化で整理した情報を用いて「前文・主文・末文」で文章を作れば、技術士記述試験の基本解答が完成するわけです。

同時に、情報の体系化という作業が、技術士の試験対策において重要であることが理解できると思います。

 

 

試験問題の必須科目、選択科目Ⅱ-2、選択科目Ⅲは、下表のとおり、具体的な記述項目が指定されています。

試験では、下表の記述項目に沿って解答することができれば良いわけですが、まずは、「前文・主文・末文」の構成で解答を作成することをお勧めします。  

なぜなら、この練習をすることにより、解答作成の基礎を身に付けることができるからです。

繰り返しになりますが、「前文・主文・末文」が技術士の解答の基本です。

これができるようになったら、何らかの記述項目が指定されても、うまく対応できるようになるはずです。

その上で、下表の記述項目に沿って解答例を作成する練習をすれば良いでしょう。

 

必須Ⅰ

選択Ⅱ-2

選択Ⅲ

①複数の課題と観点

②重要課題と解決策

③解決策のリスクと対策

④倫理と社会持続性

①調査・検討事項

②手順・留意点・工夫点

③関係者との調整方策

①複数の課題と観点

②重要課題と解決策

③解決策のリスクと対策

 

 

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