サルヒツの温泉めぐり♪【第152回】
有馬温泉 ホテル花小宿
℡)078-904-0281
往訪日:2023年1月28日~1月29日
所在地:兵庫県神戸市北区有馬町1007
源泉名:御所泉・妬泉混合泉
泉質:含鉄-ナトリウム‐塩化物温泉
泉温:(源泉)42℃(浴槽)100.5℃
匂味:無臭・強い塩味
色調:濃い茶褐色
pH:6.7
湧出量:120㍑/分
その他:掘削自噴・無濾過・かけ流し
■営業時間:(IN)15時(OUT)12時
■料金:24,727円(税別)
■客室:9室
■アクセス:阪高・西宮山口南ICから約15分
■駐車場:(有馬里駐車場)30台ほど
■日帰り利用:不可
《羽釜の五右衛門風呂で日頃を憂さを晴らす》
ひつぞうです。今回の旅の目的は有馬温泉。投宿したのは、有馬で一番の歴史を誇る御所坊グループの《ホテル花小宿》です。昭和20年代に建てられた日本旅館に、最小限の手入れを施して、大人の隠れ家として平成11年(1999年)に開業しました。食事も美味しく、お風呂は二箇所とも貸切風呂。家族や夫婦でゆっくりするには最高の宿なのです。以下、滞在記です。
★ ★ ★
西宮市内から夙川、そして甲山の山麓を抜けていった。かつて通勤に使った阪急電車の沈んだ小豆色の車輛が無闇に懐かしい。まだ二十代だった僕は、上司に誘われて仁川から六甲山に幾たびも登った。登山の記憶は殆ど失ったが、ロープウェイで降りた有馬温泉の金湯で汗を流したことはよく覚えている。油断するとタオルは簡単に鉄錆色に染まった。まさか、その有馬温泉におサルと二人で投宿するとは夢にも思わなかった。
まず、眼が飛び出るほどの高級旅館ばかりであるし、着物を着た仲居さんが常に眼の端に入るような、所謂グランド系の旅館は僕らの趣味ではない。そのうえ、狭い路地が網の目のように広がる温泉街は車で往訪するには不便すぎた。
「いい宿があるのち」ヒツも絶対気に入るよ
おサル曰く、食事が美味い。完全貸切風呂。小さな和風旅館。静か。いいかも♪
★ ★ ★
温泉街の最奥、つまり、ロープウェイの下駅まで遡ると、御所坊グループ共通の有馬里駐車場がある。午後六時までスタッフが常駐し、宿まで送迎してくれる仕組みだ。
ついたよ。なんかいい雰囲気♪小雪が舞い散る天気だったが、これもまた良し。
あれ。この書体。どこかで見たような。
《アルガブランカ》で有名な勝沼醸造のレタリングデザイナー、綿貫宏介先生の意匠ではないか。スタッフに伺ったところ、先代の14代目社長・金井四郎兵衛氏が西宮在住の綿貫先生と懇意で、その関係でお願いできたのだそうだ。
かつてこの地所には、大谷崎の小説『細雪』に登場する《花の坊旅館》があった。昭和二十年代に建て替えられたのが今の建物。空襲警報がなっても推敲中の『細雪』の原稿だけは肌身離さなかった。その畢生の大作完成直後に、この建物は完成したことになる。それが今の花小宿の原型だ。
手入れは最小限。そしてスタッフも三人くらいしかいない。全九室だし、それで十分なのだろう。
グループ筆頭の陶泉御所坊は文豪ゆかりの宿だが、小説や芸術に関する本はなかった(笑)。
二階の部屋は洋室ホテルの造りらしい。
配置はこんな感じ。
僕らの部屋は角部屋の和室。部屋によってデザインと間取りが異なる。
紅冬至は花梅の仲間。どの部屋にも植物の名前がつけられている。
「花小宿だからにゃ」
ドアロックはタッチ式。解除する際は予めセットされた暗証番号で開錠する仕組み(チェックインの際にナンバーを教えてくれる)。なので鍵を持ち歩く必要がない。しかもバリアフリー。靴脱ぎから八畳間へは段差がない。最近空間把握能力が頓に衰えた僕らには実にありがたい。
こんな感じだ。ベッドはフカフカ。
奥に広縁があり、低い座椅子が据えられている。
「かなり低いにゃ」おサルはいいけどヒツはつらいかも
いいよ。座高高いし。
とてもシンブルでしょ。装飾とサービスから無駄を排した花小宿の経営(だからウェルカムスーツもない)。おかげで高額な有馬の宿にあってはリーズナブルな価格設定が可能になった。それでも至れり尽くせり感満載なのだからすごい。
「スイーツなくても平気」もともとお菓子食べないし
その一方で化粧室はかなり広い。なんだが愉しくなってきた♪
さっそく温泉探険だ!
=花小宿の特徴=
■温泉
・こじんまりした貸切専用の内風呂ふたつ
・含鉄・塩化物泉の金泉と無色透明の銀泉
・グループ宿の陶泉御所坊の風呂も利用可(20時まで)
■部屋
・和洋それぞれ個性的な部屋9室
・至る処に綿貫宏介氏の作品あり
■料理
・羽釜と炉端で造る高級山家料理
・〆のチキンカレーが絶品!
・日本酒は地元消費系地酒が主体
■もてなし
・スタッフ少数対応ながら最高のもてなし
・夜21時以降はスタッフ不在に
=当館の温泉攻略法=
■浴場
・金泉、銀泉を配した内風呂二箇所あり
・完全貸切制
・男女別なし
・時間制限なし(常識的に40分くらいか)
・露天風呂なし
■泉質
・含鉄食塩泉と無色塩化物泉
・掘削自噴/足許湧出/かけ流し
■利用時間
・15時~翌日11時
・夜間利用OK
日帰り客もなく、客の数も九組のみ。多くの宿泊客は御所坊の御殿風呂を目指すため、花小宿の内風呂の競争率は総じて低いと云える。泉質も変わらない。ならば《蔦葉子》《楓爐》のいずれでバージン湯を狙うか。それに尽きる。前者は疑似ローマ風呂、後者は五右衛門風呂。あとは好みの問題である。
貸切風呂が使用中ならばフクロウの左右の眼が赤く灯る仕組み。現在左の「蔦葉子」が利用中。
「おサルが入っているのち」いちばん風呂ゲット!
では僕も。
ところで蔦葉子ってどういう意味?
昔の造りにしては脱衣場も割りに広い。
では風呂へ!(この一瞬だけドアを開けてます。すぐ閉めました)
やあ!一段下に金泉と銀泉が並んでいるね。
手摺はあとからつけたのだろう。完全バリアフリー。
「おう!金泉はかなり濃厚だの💦」これはたまらん
塩からいね。プレートの沈み込みの際に一緒に取り込まれた古代の海水が、断層から熱水となって湧き出していると言われているよ。
「それってブラタモリでやってたヤツじゃん」パクっとるし
30年前に入った《金の湯》は猛烈に濃厚不透明だった記憶があるけど。これまで含鉄泉はたくさん入ったから他の温泉と記憶がこんがらがっているかも。
「この程度じゃタオルは茶色にはならないにゃ」
でも御所坊よりも泉質は濃いめなんでしょ?
「そう書いてあった」詳しいことは知らん
源泉は同じだからね。ブレンド比が違うのかな。
(※《妬泉》と《御所泉》というふたつの源泉の混合泉です)
そうそう。花小宿の宿泊者は午後8時までは御所坊の風呂も無料で利用できる。日帰り利用だと1,650円(税込)かかるからお得なんだよ。でも、僕らはこの小さな湯船に一緒に入るのが目的で投宿したのだし、御所坊は(かなりお高いけど)別の機会に譲って、今回はここでゆっくりしよう。
「行くのが面倒なんだにゃ」コイツはそういう男だ
違うって。損得勘定だけで齷齪するのが厭なのよ。
いかん。なんかクラッときた💦
「オサルも」マズい
久しぶりに湯あたりしかけた。危ない。危ない。
銀泉は無味無臭。足許から湧いているので一番風呂はマスト(自己責任で。推奨しません)。
バカなヒツジがいるわ~(人魚)
(成分表)妬泉
ナトリウムイオン(10,690㎎)、塩化物イオン(21,980㎎)。見たことない数値💦
ということで、しばらく部屋で寛ぐことにした。
寛ぐといっても、こういうことなんだけどね。(アイスボックスは貸してくれます)
コースターも綿貫先生の作品。左は《心閑意適》。右は難しい…。
神戸ということで。普段は絶対飲まないカップ酒だけど。
「どーよ」味は?
むー。生酛とはちょっと違うかな。単純にアル添樽酒だね。檜の香りは確かに強烈。
これ以上飲むとヤバそうなので寝酒に取って置こう。
★ ★ ★
それでは夕食前に《楓爐》に。しかしどういう意味だろうね。こんな熟語ないよね。
「風呂を充てた言葉遊びじゃないのち」
なるほど。
この二つのお部屋。以前の経営までは男女専用風呂だったのかもね。
これはこれで、また違った趣き。
表面張力で湯船いっぱい!
丸型蛍光灯かよ。
「むきょ?」
湯気で曇る湯船も風情があるね。
逆上せない程度に温泉を愉しんだ。
クラシックな閂。
さて、そろそろ夕食だ。少し散歩して時間を潰すことにした。
「いい感じで腹減ってきた!」
(関西湯けむり旅・次は食事篇)
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