サルヒツの温泉めぐり♪【第131回】
鎌先温泉 最上屋旅館
℡)0224-26-2131
往訪日:2022年5月6日~7日
所在地:宮城県白石市福岡蔵本字鎌先1-35
源泉名:三宝の湯(自家源泉)
泉質:ナトリウム‐塩化物・硫酸塩温泉
泉温:(湧出地)36.1度(浴槽)たぶん42度
臭味:鉄臭・ほのかな塩味
pH:7.1
その他:加温・無濾過・かけ流し
■営業時間:(IN)14時(OUT)10時
※アーリープランあり
■料金:16,000円(税別)
■支払方法:現金のみ
■アクセス:東北道・白石ICから約15分
■駐車場:(第1)11台(第2)30台
■日帰り利用:10時~16時(一般)500円
※日本秘湯を守る会会員の宿
《人気の船形家族風呂・和光の湯》
ひつぞうです。例年のことですが、いまだにGWの日記を書き続けています。喜多方の極上ラーメンを満喫したところまではよかったのですが、時刻は11時。かたや次なる目的地は宮城県の鎌先温泉・最上屋旅館。このお宿はチェックイン14時開始と早めなのです。まずいなあ。
「なんで?」
だってさ。宿泊者限定の貸切風呂の予約が最初に取れないかもしれないじゃん?
「別にいいじゃんね。入れないことはないにゃ」
バージン湯につかりたいのよ。
「いつものこだわりきゃ」
そう。男女別内風呂《三宝の湯》と《東光の湯》は10時から日帰り利用可能。すでに人肌から滲み出る脂に犯されているのよね。
「なんかイヤな表現だにゃ」
しかし。もっと深刻な過ちに気づきました。
「チェックイン12時からだよ」
えっ?なんで?
「アーリープランで予約したじゃんね」
すっかり忘れていた…。時すでに遅し…。以下往訪録です。
★ ★ ★
ということで東北道・白石ICで降りて県道254号線を蔵王山麓目指してひた走った。この道は蔵王キツネ村を訪ねた際に一度通った記憶がある。
間もなく《鎌先温泉》の看板が目に入ってきた。ここを左に折れる。急げ!
「最後まであがくのう」
バス停があり、その裏が温泉街の共同駐車場になっていた。宿の名前がスペースに記されている。
老舗の風情が漂う。これが本日のお宿。現在、湯主一條、すずきや旅館、最上屋旅館の三軒が営業中。それぞれが自家源泉を持つのも鎌先温泉の魅力のひとつ。
玄関には夥しい数の民具が陳列してあった。フロント真上には岡本一平の弟子にあたる漫画家・宮尾しげをの絵が飾ってある。読んでみる。“今を去ること六百余年。ひとりの樵が水を求めて沢に降り立ち鎌の先で小突いたところ、白い湯気が立ち昇ってきた。”そんなことが書いてある。鎌先温泉の由来だそうな。
「湯治宿なんだよにゃ。ここ」
東北の温泉宿の例に漏れず、当館も自炊部が存在する。
江戸時代創業の最上屋旅館の造りは豪壮。詳しい情報がないので委細は不明だが、おそらく宮大工の手によるものだろう。
楼閣のような踊り場つきの階段が素晴らしい。
吹き抜けになっている。
今宵のお部屋は二階角部屋の《五葉の間》。二間続き都合10畳の贅沢な造り。
広縁がない代わりに手前4畳にはテーブルが設えてある。この日は初夏を思わせる陽気だった。雨の予報だったのだが。いつものジンクス健在なり。
「登山以外の予定を入れると晴れる」
そういうこと。
《見取り図》
配置は御覧のとおり。本館が旅館部。別館が自炊部。別館もなかなか雰囲気がある。建物は三階建て。火災予防の措置だろう。全室禁煙である。そうあるべきだと思う。
網戸を抜ける涼しい風が気持ちいい。しかも往来は静か。これが本当の温泉街。●崎も●津もレジャーランドだもんなあ。
「それでいい客もいるからにゃ」
ま。人ぞれぞれだしね。
ではそろそろ探検開始。
=最上屋旅館の特徴=
●薬効豊かな自家源泉
●湯治場の風情残る老舗建築
●自家菜園でもてなす家族料理
=温泉攻略法=
●浴場
・男女別内風呂《三宝の湯》《東光の湯》、貸切家族風呂《和合の湯》の三箇所
・露天風呂なし
・混浴なし
・男女入替あり
●利用時間
・《三宝の湯》《東光の湯》は清掃時間を除き24時間利用
・《和合の湯》は14時~21時まで
・22時に入替
●貸切風呂
・チェックイン時に予約
・利用時間30分
・宿泊者限定。二回目以降は有料(2200円)
・フロントで鍵と利用札を借りる
何とかギリギリ《和合の湯》を一番に予約できた。そのためにアーリープランにしたのだ。最近はなんでも忘れる。その後はゆっくり内風呂につかることにした。思いのほか(GWにも関わらず)日帰り利用者は少なく(宿泊制限しているのだろうか)泊り客の姿も疎らで閑散としていた。平日ということもあったのだろう。あとは部屋で寛ぐも良し、通りを散策するもよしである。
《五葉の間》以外はトイレ洗面所は別。しかしその洗面スペースが美しい。最近手をいれたのだろうか。部屋の内装もピカピカだし、廊下、湯小屋も真新しい。では内風呂から紹介。
直進して階段を昇れば貸切風呂。突き当りを左に曲がれば男女別内風呂。
左に曲がる。別館と渡り廊下で繋がっていた。老舗ながら随所に和風モダンな意匠替えが。
渡ったところで一階に。
そこが風呂場だった。
暖簾をくぐると清潔な脱衣所。
《三宝の湯》
素晴らしい!浴室の壁の岩は玄武岩の柱状節理を模しているそうな。僕が持っている温泉ムック『まっとうな温泉』(南々社)の写真では天井は漆喰(?)が剥き出しだが、その後手を入れたのだろう。檜で覆われていた。
「流行りを取り入れたのかにゃ」
タイルとモルタルでは時代遅れだものね。
もちろんオーバーフロー。ぬる湯なので加温してある。源泉はすぐ裏から湧いているそうだ。
洗い場はこんな感じ。
《東光の湯》
こちらは初日女湯だった《東光の湯》。すこし小さめ。
効能ありそう。飲んでみる。しっかりした金気。そして仄かな塩味を感じる。肌ざわりはシャキシャキ系。適温なのでいつまでも入っていられる。
お次は貸切風呂。
風呂場まではまず三階に続く階段を登る。
暖簾がかかった次の間が現れる。
そこから更に四階へ。
角を回り込めば入り口。ここに「使用中」の札をかける。
30分はちっとばかり厳しいね(笑)。二人でポンポン脱ぎ捨てて、プールではしゃぐ子供のように飛び込む。
これこれ。これよ。ひたひたのお湯にざぶんと入る。これぞ温泉冥利。
注がれる湯量は意外に少ない。
伊香保温泉の湯に似ているね。ということで互いの背中を流したところで時間切れ。攻め方が難しい。
「やっぱり最初に内風呂で体を洗ってから、ここに来るべきじゃね?」
その方がゆっくり湯舟に浸かれるものね。作戦は失敗だったか。
《成分表》
ということで暫く酒を飲んで横になったり、表の土産物屋をひやかしたりして時間を潰した。
=夕 食=
会場は一階の個室で。
おサル、幾らなんでも演技過剰(笑)。
「茶碗蒸しはマジ好きなんだけど」
料理は田舎風の宿料理だった。
これを蔵王酒造の生貯蔵酒で。火入れの本醸造も家庭料理にはなぜかあうね。
最後は豚肉の鉄板焼きで。
いつものように夜は更けてゆく。
=翌 朝=
翌朝も嘘のように晴れていた。どこかで運を無駄使いしているような気がしてならない。朝は玄関前を掃除するスタッフの姿が散見されるだけ。そぞろ歩きする客の姿もない。ただ、暑くなる予感だけが季節外れの日差しを受けて増す一方だった。少し山手に入ってみた。
そこは有形文化財として有名な宿だった。
=朝 食=
朝食も二人きり。ずっと連休の間は会社も仕事も離れて二人きり。あと数年もすれば、この生活が日常になる。そう思うと、多くのひとがゆきつくことなのに不思議な気がした。梅干しがひどく塩からく感じられた。
「ほんとにからいもん」
ロングステイはいい。ゆっくり部屋で時間を費やしたのち、フロントの大女将に礼を述べた。
やはり、静かな老舗宿は格別だった。派手さはないが、清掃も行き届き、スタッフも礼儀正しい。二人きりなので広い部屋は普段望まない性質なのだが、こうして初夏の風が気持ちよく流れる畳の上に四肢を広げて寝そべると、これもまた捨てたものではないなと思わずにはいられなかった。
このあと、最後の往訪地まで移動する。今度こそは大丈夫。抜かりはない。ゆっくりと駐車場を離れて再び北に進路をとった。
「ぜんぜん終わんないにゃ」
(つづく)
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