もう、資格取得に役立つ民法わかりやすく教えちゃうよ!(351)(相続法その9/特別受益者など)
パラリンの伊藤(智也)選手(58歳/車いす400M)、宮路選手(63歳、馬術)の存在に、H&T係長は、大いに勇気づけられています。難病や大きなハンディを抱えつつ挑戦する姿にはパワーを頂きました(試合の結果は二の次、人に勇気を与えてくれたことでメダル物だとH&T係長は思います)さて、演習で相続分に慣れたところで、今回は、どうしても基本形では対応できないケース、相続分の指定、特別受益者(とくべつじゅえきしゃ)、そして、寄与分(きよぶん)を見ておきましょう。ポイントとなる民法の考え方は「公平性」です。判断に迷ったら「何が公平か」に立ち返ってくださいね。念のため、例によって基本形の表を再掲しておきます。 相続順位 相続人(配偶者以外) 相続が発生する条件 配偶者がいる時の相続分 配偶者の相続分 1 子供(代襲相続人、生まれることを条件として胎児も含む) 子供あり 1/2 1/2 2 直系尊属(父母、祖父さん、祖母さんなど) 子供なし 1/3 2/3 3 兄弟姉妹(代襲相続は甥・姪まで) 子供も直系尊属もなし 1/4 3/4 4 上記の人がいない 全て 【相続分の指定】相続分は法定相続分によらず、遺言で定めたり、定めることを誰かにゆだねることもできます。しかし、一定の法定相続人には、最低限遺産を残す必要があり、これを遺留分(いりゅうぶん)と呼びます。その目的はご遺族の生活保障です。遺留分を侵害することになる場合は、遺留分を持つ、兄弟姉妹以外の法定相続人たちから、遺留分相当額のお金を請求(=遺留分侵害請求)される可能性はあります。(民§1046)「ご主人様の死後、奥様が遺言書を読んでみたら、一切相続できないことになっていた」みたいな事態にならぬようできているのですね。それぞれの遺留分は下図を参考にしてください。 遺留分を請求できる相続人 遺留分 備考 直系尊属のみが相続人の場合の直系尊属 被相続人の財産の3分の1 民§1042(1号) 上記以外の場合の法定相続人(配偶者や子供) 被相続人の財産の2分の1 民§1042(2号) ※10年以内(相続人)または1年以内(相続人以外)の生前の贈与、遺贈(遺言による贈与)どちらであっても、遺留分侵害請求される可能性があります。※ちなみに、遺留分を持つ人を相続人から外す方法としては先に学んだ「相続の廃除」があります。“アウト、セイフ、ヨヨイノヨイ、ヨヨイノヨイ!”(By由香ちゃん/山形)H&Tの民法海浜合宿に参加したものの全然勉強にならない女の子たちです。【特別受益者(とくべつじゅえきしゃ)】以下事例で学ぶので次の人間関係図を参考にしてください。亡くなった方(被相続人)に子供2人と配偶者がいる想定です。しつこいですが、ポイントは「公平性」です。事例はパズル的、頭の体操的に考えてみてくださいね。 事例1: Xさんには妻Y、それに子供二人、兄で医者のZと妹で仏師(仏像を彫る人)のWがいるが、このほど財産1億2,000万円を残して天国へと旅立った。 生前Xさんは兄の医学部の学費4,000万円を支援している。 Xさんの残した遺産は誰がどれだけ相続することになるか。 ☞相続人の中に、生前、被相続人から支援(開業の資金、借金の肩代わり、不動産などの購入、結婚の時の支度金・持参金・嫁入り道具、入学金や留学費用など)を得ていたり、遺言で特別な財産を譲り受ける(遺贈を受ける)人がいる場合、他の相続人との公平の観点からその人の額は減額調整されます。まず、計算の出発点となる相続される財産の額(=みなし相続財産)の算出に際しては、1億2,000万円に生前に贈与した4,000万円を加えて相続財産を算出します(ただし、遺贈する額は1億2,000万円に含まれているので加算しない)。このことを「持ち戻し」といいます。相続される財産の額(=みなし相続財産):1億2,000万円+4,000万円=1億6,000万円妻Y:1億6,000万円×1/2=8,000万円兄妹二人:1億6,000万円×1/2=8,000万円*子供1人あたり:8,000万円×1/2=4,000万円と、ここまではいいですよね。ここから先が違ってきます。兄は、既に4,000万円をもらっているので、兄の相続分からこの額を差し引き(控除)します(ちなみに、遺贈があればこの段階で遺贈の額が控除されます)。よって、兄(Z):4,000万円-4,000万円=0円妹(W):4,000万円※ちなみに、20年以上連れ添った夫婦間で居住のための不動産が生前に贈与されている場合、例外的に、故人にはこの「持ち戻し」や差し引きをしない意思があったと推定(いわば思いやりの推定)されることになりました。(2019民法改正)【寄与分(きよぶん)】 事例2: Xさんには妻Y、それに子供二人、息子(兄)のZと娘(妹)のWがいるが、このほど財産6,000万円を残して天国へと旅立った。 生前Xさんが大病を患った際、Wは仕事を休み一手に父親の看護を引き受けた。Wが1,000万の貯金を父親の難病治療に使用したことはYもZも認めている。 Xさんの残した遺産は誰がどれだけ相続することになるか。 ☞このような財産の維持や増加への「限りなく無償に近い貢献」を寄与といいます。寄与は「特別な」寄与に限るので、ご主人が会社で稼いで家計を支えたお金や、専業主婦の奥さんの労働などは通常は寄与分とは考えません。まず、計算の出発点となる相続される財産の額(=みなし相続財産)の算出に際しては、6,000万円から生前のWの貢献分(寄与分)を控除します。相続される財産の額(=みなし相続財産):6,000万円-1,000万円=5,000万円妻Y:5,000万円×1/2=2,500万円息子と娘の二人:5,000万円×1/2=2,500万円*息子と娘1人あたり:2,500万円×1/2=1,250万円と、ここまではいいですよね。ここから先が違ってきます。妹は、生前1,000万円の貢献をしているので、この額を加えてもらえます。よって、兄(Z):1,250万円妹(W):1,250万円+1,000万円=2,250万円【特別寄与料(とくべつきよりょう)】 事例3: Xには妻Yさん、子供二人、そして寝たきりの母親Uさんがいたが、このほどUさんは天国へと旅立った。 Uさんの生前、息子のXも孫たち二人も、介護は姑であるUさんに任せきりであった。それでもYさんは献身的に姑を介護しその最期をみとった。 Uさんの残した遺産は息子のXが相続することになるが、Yさんが金銭的に報われることはないのだろうか。 ☞2019年の民法改正では、相続人(事例ではUさんの息子X)以外の被相続人の親族(例えば嫁のYさんは姻族の1親等の親族です)が「無償で」被相続人の療養看護等をしていた場合、その貢献度(寄与の度合い)に応じたお金(=特別寄与料)を相続人に請求できることになりました。この額は協議か、協議が整わなければ家裁の調停や審判で決まります。 ●ちょっと一言:内縁の妻(夫)の方は注意! 「寄与分」が認められるにはあくまでも相続権者であることが前提です。また、「特別寄与料」が認められるのも、被相続人の親族に限られます。したがって、親族でない内縁の妻(夫)には、いくらつくし、貢いでも、寄与分や特別寄与という考えは当てはまりません。ご注意くださいね。 “アウト、セイフ、ヨヨイノヨイ!あ~負けちゃった!”(By由香ちゃん)ご安心ください、まだタオルの下には水着を着ています。【(参考)総合事例】 事例4: Xさんには妻Y、それに子供二人、息子で医者(兄)のZと娘(妹)のWがいるが、このほど財産1億5,000万円を残して天国へと旅立った。 生前Xさんは長男の医学部の学費4,000万円を支援している。一方、生前Xさんが大病を患った際、Wは仕事を休み一手に父親の看護を引き受けた。Wが1,000万の貯金を父親の難病治療に使用したことはYもZも認めている。 Xさんの残した遺産は誰がどれだけ相続することになるか。 相続される財産の額(=みなし相続財産):1億5,000万円+4,000万円-1,000万円=1億8,000万円妻Y:1億8,000万円×1/2=9,000万円息子と娘の二人:1億8,000万円×1/2=9,000万円息子(兄):9,000万円×1/2-4,000万円=500万円娘(妹):9,000万円×1/2+1,000万円=5,500万円 ●法律は愛だ!:本当に内縁の妻(夫)を愛しているなら法律を知っておいてください! 今回の説明でお分かりの通り、相続の制度は、内縁の妻(夫)にとってかなり気の毒なものです。 そこで、もしあなたに内縁の妻(または夫)がおられるならば、生前から、1)入籍する、2)生前に贈与する、3)遺贈(遺言による贈与)する、などの方策を考えておくことも、残されるかも知れない愛する人への思いやりではないでしょうか。 ただし、内縁であっても、被相続人の親族なら特別寄与料を請求できます。また、相続人が一人もいなければ特別縁故者として相続財産をもらうことができますが、これは最後の最後です。 なお、相続以外、贈与に関しては課税額が違ってくる(高くなる)ので適宜税理士さんへもお尋ねくださいね。 ●次回は相続界の次なるテーマ、「遺産分割」に入りましょう。(はるなちゃん/千葉県)はるな:常連の伊藤さん、宅配で頼んだピザ、一人で食おうとしたんで言ったんだよ“ちょっと、イーさん、分割!”H&T係長:???ちょっと何言ってるのか分からない。いったい何の話してんの?●ヘッドライトとテールライトHead & Tailhttps://ameblo.jp/headtail/こちらもどうかよろしくお願い致しますね!!!●日本政府を通じた東日本大震災義援金受付日本政府を通じた東日本大震災義援金受付の御案内 - 内閣府日本政府を通じた東日本大震災義援金受付のご案内。受付手続き(義援金送付方法)、受付期間、義援金受付・送金状況のご報告、税制上の優遇措置について。www.cao.go.jp