さき「いよいよ、数学的に魔法陣をつくるんだね。ええと、N進数を使うんだっけ」
ひろじ「じゃあ、4×4の魔法陣で考えてみようか。一列に4マスあるから、四進数を使う。全部で16マスだから、1〜16の数字が入る。十進数なら0〜9の十種の文字、四進数なら0〜3の四種の文字で数字を考えるのが、本質的だから、ここでも、0〜15の16個の数字で考えよう。この場合、合計は34じゃなく、1マスにつき1ずつ数が減るから、合計は30になる」
ひろじ「まず、0〜15の数を、4進数に直しておこう。0から順に4進数に表すと・・・」
さき「ええと、この間教えてもらったようにすると、0、1、2、3までは同じで、4から先は、4が10(イチゼロ)、5が11(イチイチ)・・・」
ひろじ「そうだね。0〜3も、00〜03と書くことにすると、次のようになる」(※)
【10進数】【4進数】【4進数→10進数の変換】
【 1】 【01】 【0×10+1=1】
【 2】 【02】 【0×10+2=2】
【 3】 【03】 【0×10+3=3】
【 4】 【10】 【1×4+0=4】
【 5】 【11】 【1×4+1=5】
【 6】 【12】 【1×4+2=6】
【 7】 【13】 【1×4+3=7】
【 8】 【20】 【2×4+0=8】
【 9】 【21】 【2×4+1=9】
【10】 【22】 【2×4+2=10】
【11】 【23】 【2×4+3=11】
【12】 【30】 【3×4+0=12】
【13】 【31】 【3×4+1=13】
【14】 【32】 【3×4+2=14】
【15】 【33】 【3×4+3=15】
(※)スマホ用の表示だと上の数表が見づらかったので、修正しました。
ひろじ「たとえば4進数の32なら、2桁目(4の位)の数が3で、1桁目(1の位)の数が2という見方をする」
さき「じゃあ、16だったら、どうあらわすの? 33の次は・・・あっ、桁上りだ」
ひろじ「そう。16は100となる。3桁目(4^2の位)が1で、2桁目と1桁目が0」(4^2は4の2乗という意味の記号)だよ。でも、この魔方陣では16以上の数はでてこないから、今回はこのくらいにしておこう」
さき「それで、0〜15を4進数で表してから、どうするの?」
ひろじ「4進数で表した0〜15、つまり、00〜33の16個の数を、空白の4×4の表にあるルールに基づいて配置するんだ」
さき「あるルールって?」
ひろじ「合計して同じ数になるようにするのがルールだけど、それだと抽象的だね。一番簡単なケースを紹介しよう。列ごと、あるいは行ごとに、4進数の1桁目、2桁目それぞれ、0〜3の4つの数字を重複しないように配置すればいい。そうすれば、列ごと、行ごとの数字の合計は0+1+2+3=6で、おなじになるからね。でも、これはこれでなかなか難しいパズルになるから、もう少し楽な方法を取ろう。1桁目も2桁目も合計が6になれば、4つの文字を重複しないように配置したときと同じ合計になる。数字がダブってもいいから、各列、各行の1桁目、2桁目の和がそれぞれ6になるように数字を配置してみよう。実際に作ったものを見てもらったほうが早いから、完成品を見てもらおう」(*)
さき「1列目は、1桁目が0、3、3、0で合計6、2桁目が0、2、1、3で合計6。2列めは、1桁目が2、1、1、2で合計6、2桁目が3、1、2、0で合計6。ホントだ。一行目も桁ごとの合計が6と6で同じだね。あっ、そうそう、斜めはどうかな・・・これも、6と6だ」
ひろじ「これを十進数に戻すと、こうなるね」
さき「あーっ、ホントだ」
ひろじ「念のため、列、行、斜めの合計を取っておこう」
さき「上の表の計30はわかるけど、下の4進数表の6/6って、何だっけ?」
ひろじ「さっき、さきが計算したじゃないか。4進数の2桁目と1桁目の数字の和だよ。どの列もどの行も、斜めも、みんな、それぞれ6と6になっている」
さき「あっ、そうか!」
ひろじ「4進数を使うために0から始めたから、1から始まる魔法陣にするには、十進数の魔法陣の表全てに1を足せばいい。そうすると、合計も4増えて34になり・・・」
ひろじ「うん、同じものができるね。でも、今度のやり方だと、前回教えた古典的なやり方と違って、列ごと、行ごとに、0〜3の数字が重複しなければいいから、数字を入れる自由度が高いよ。もっと別の数字の配列にした魔法陣が、いくらでもできる」
さき「うん、たぶん、やれると思う」
ひろじ「宿題の魔法陣も4進数で表して見てみようか? このルールに従っているはずだよ」
さき「うん、これだね?」
ひろじ「このままだと1から始まっているから、4進数で表すために、どれも数字を1減らして・・・それを4進数にすると・・・」
さき「あれ? 列と行は合計が全部6/6になっているけど、斜めが違うよ。5/10と7/2だから、これはまずいんじゃない?」
ひろじ「一見、合計が違うように見えるけど、これでいいんだ。6/6とか7/2というのは、4進数の和を2桁目と1桁目の数それぞれの和で示した便宜上のものだからね。これを十進数に直すと、次のようになる」
6/6=6×4+6×1=30
7/2=7×4+2×1=30
5/10=5×4+10×1=30
ひろじ「最初に4進数での魔法陣の作り方を教えた時、<一番簡単な方法>として、列、行ごとに0〜3の4つの数字を重複しないように配置する方法を教えた。でも、魔法陣は縦、横、斜めの和が同じならいいので、0〜3の4つの数字を1つずつ使わなくても、例えば合計が6/6になるように配置すればいいんだ。斜めが6/6にならなくても、(2桁目の数×4)+(1桁目の数×1)が同じ値になればいい。これが2番めに簡単なやり方になるかな。このやり方は最初のやり方より難しくなるけど、4進数として合計を取ることで、見通しが立てやすくなるんだ」
さき「なんだか、すごいね」
ひろじ「うん。さきがいっていたように、魔法陣を理屈も含めてきちんと理解しようとすると、N進数を使って考えざるをえない。N進数は高校生以上の数学で習う概念だから、一般の小中学生には難しいかな」
さき「そうだね」
ひろじ「でも、19世紀には中学生のときに数学の論文を書いたウィリアム・トムソンみたいな人がいた。そのくらいの年令で大学にいってるからね。これは小学生向け、これは高校生向き、なんて仕分けは、個人個人が問題に当たる場合は関係ないんじゃないかな。興味を持てることがあったら、そういう世の中の<常識>を超えて挑めばいいと思うよ。理系にこだわった話じゃないけどね。さきだって、もうクトルフTRPGのキーパーやってるじゃん」
さき「あ〜、それはそうだけどね」
ひろじ「本当は、魔法陣のことは数学者の人に本格的に解明してもらいたいよ。お父さんのなんちゃって数学じゃなくてね。もっとも、お父さんが知らないだけで、専門の人はもう、解決しちゃってるかもしれないけど」
さき「なんだか、夏休みの宿題やってただけなのに、とんでもないことになっちゃったね」
ひろじ「本当にね。どうして小学校中学校で魔法陣なんか扱うんだろう・・・」
【追記】
(*)4進数を使って最初の例をつくるときの説明文で、重要な箇所が抜けていたので、補足しました。
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