魔法陣を作る〜その1古典的な方法 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

マンガ・イラスト&科学の世界へようこそ。

 

 

 毎回、自然科学のテーマを扱う「ミオくんと科探隊」、今回はさきの夏休み宿題編。ひろじとさきによる、「ミオくんと科探隊」数学・特別編、その第1回です。

 

さき「ねえねえ、夏休みの数学の宿題に、魔法陣があるの。小学校でもやったんだけど。これ、どうやって解くのかなあ」

ひろじ「ちょっと見せて。へえ、今は小学校で魔法陣とか教えるんだ。お父さんが子供の頃は、学校では教えてもらえなかったよ。お父さんも、小学生のとき、子供向けの学習雑誌で見た。たしか、小学校5年か6年のときに自分で書いていたメモ帳に、魔法陣の作り方を記録しておいたはずだ」

さき「?・・・小学校で習ったのとは、違うよ。こんなふうに、なんもないところから作るんじゃなくて、何箇所か数字が書いてあって、残りを自分で考えて埋めるっていう」

ひろじ「それはそれで、頭の体操になって、いいんじゃないかな。『数の歴史』(*1)によると、1514年デューラーの絵に4×4の魔法陣が描かれている」

 

(*1)『数の歴史』ドゥニ・ゲージ著藤原正彦監修(創元社)

 

 

ひろじ「これとはちょうど上下を逆にしたものだけど、同じ魔法陣だよ。魔法陣の中に、絵を描いた年の年号<1514>が隠されている」

さき「たて、よこ、ななめ・・・どれも、足すと、ホントに同じ数になるね。この魔方陣は、どうやって作ったの?」

ひろじ「小学生の時に作り方を覚えたっていっただろ。じゃあ、ちょっと教えてあげようか」

 

 

ひろじ「たとえば、いきなりこういう3×3の魔法陣を、1〜9の数字で作れっていわれたら、どうする?」

さき「うーん・・・ヒントの数字とか、書いてくれないの? 小学校の時見たのは、いくつか、数字が書いてあったよ」

ひろじ「まあ、それも頭の体操としてはおもしろいけどね。ここでは、まっさらな状態から、魔法陣をつくるやり方を見ていこう」

さき「そんなやり方、あるのかなあ」

ひろじ「今から教えるのは、さっきいった通り、お父さんが小学5〜6年生のときに、なんかの雑誌の記事で読んだやり方だよ。昔から伝えられている、いわば古典的なやり方だ。一度覚えれば簡単だけど、欠点が2つある」

さき「欠点って、何?」

ひろじ「1つめは、奇数の魔法陣と、偶数の魔法陣で、基本的なやり方が違うということ。だから、二通りのやり方を覚えないといけない」

さき「そうなの?」

ひろじ「具体的に3×3のときと4×4の魔法陣を比べれば、すぐにわかるよ」

さき「2つめの欠点は?」

ひろじ「そのやり方を行うと、どうして魔法陣になるか、という数学的な理論が見えてこない。これは探究心のある人には耐えられないだろう。魔法陣は数学的なものだから、数学理論が背景にあるはずだ」

さき「魔法陣の理論があるの?」

ひろじ「それはどこかにあるさ。そっちは、第2回で扱うことにするよ。じゃあ、さっそく、古典的なやり方を見てみようか」

さき「うんうん、はやく教えて!」

ひろじ「じゃあ、下の図を見て」

 

 

さき「なにこれ。はみ出してる〜!」

ひろじ「この図のように、魔法陣の四角枠の外側に十字形にマスを追加して、数字を順に、斜めに入れていくんだ」

さき「じゃあ、わたしもやってみる・・・1、2、3・・・と・・・」

ひろじ「そしたら、四角枠の外にはみ出した数を、反対側の空欄に書き込むんだ」

 

 

さき「ああ、こういうことか。オッケー」

ひろじ「3×3の魔法陣は、解答が1通りしかないのが、残念かな。まあ、この表の数字を上下や左右対称に移動させれば、一見違った魔法陣になるけど、数学的には同じものだからね」

さき「じゃあ、覚えちゃえばいいのかな」

ひろじ「それじゃあ、つまんないと思うけど。でも、3×3の魔法陣は有名で、昔から暗記する呪文があるよ。ぼくが教えてもらったのは<憎しと思えば七五三、六一坊主に蜂が刺す>というやつ。この暗記呪文は、いろんなバージョンがあるみたいだよ。でも、六一坊主ってなんだか、今でもよくわかんないなあ」

さき「ええと、<憎し>が294で、<七五三>はそのまま753、<六一坊主に蜂>が618ってことね。なんか、オヤジギャグよりひどいよ。意味分かんないし。はみ出した十字架で書くほうが、まだなんとなく、わかる」

ひろじ「ほう、どういうふうに?」

さき「一番小さな数1は、表の中で大きな数の組8と6の間に入るでしょ。一番大きい数9は、表の中で小さな数の組2と4の間に入るよね。つまり、大きな数に小さな数を足すようにすれば、全部の合計の数が似たような大きさになるんじゃない?」

ひろじ「なかなか、的を射た考えだね。理論的なことがうっすらでもわかってきたのなら、今度は5×5の魔法陣をやってみようか?」

 

 

さき「わあーっ、これはおっきいな〜! こんなのも、魔法陣、作れるの?」

ひろじ「外側に十字のマスを追加する。今度は、5マスあるから、3マスのときより、複雑な絵になるけどね」

 

 

さき「あ、でも、3マスのときとよく似てる。この後、外側にはみ出た数字を、遠い側の空白に埋めるの?」

ひろじ「うん、そうだよ。やってみる?」

さき「ちょっと待って。もう始めているから・・・枠の外の数字を、向こう側の空きマスに入れて・・・」

 

 

さき「あっ、わりと簡単にできた」

ひろじ「正解だね。5×5の魔法陣の場合は、正解は何通りもあるよ」

さき「このやり方なら、7×7でもやれそう」

ひろじ「じゃあ、次はいよいよ、偶数の魔法陣を見てみようか。4×4の魔法陣」

 

 

ひろじ「これを見ればすぐにわかるけど、奇数の魔法陣のときの、外側に十字のマスを追加する、というのができない」

さき「あ、ホントだ」

ひろじ「偶数のときは、まず普通に数字を順番に描き込んでから、特定の対象的な場所のマスの数字を入れ替えるやり方を使うんだ。下の図の最初の図を見て。小さい数字で書いてあるマスは魔法陣の中心点のこっち側とあっち側で対称になっている。その数字を、入れ替えるんだ」

 

 

さき「赤字の数字が入れ替えたやつね。これを足してみると・・・あっ、どれも合計が34になってる。斜めのもそう」

ひろじ「どう? わりと簡単だろ」

さき「6×6も同じ?」

ひろじ「それは、さきが自分でやってみて」

さき「うーん・・・でも・・・」

ひろじ「どうしたの?」

さき「夏休みの数学の宿題の魔法陣、これと違うなあ・・・」

 

 

ひろじ「へえ、見せてごらん・・・あっ、本当だ。これは、さっき教えた古典的なやり方では解けない魔法陣だね」

さき「そうなの?」

ひろじ「さっきのやり方だと、1〜5みたいな小さい数字は、表全体にバランス良く広げるんだけど、この魔方陣は、1〜5が表の左下の方に固まっているだろ?」

さき「うん」

ひろじ「それにしても、今の中学校は、こういうのが数学の宿題で出るんだ」

き「魔法陣は、小学校の算数でもやったよ」

ひろじ「なるほど、それはそれで面白いな。まあ、頭の体操の、パズルみたいな問題という扱いだろうけど。合計して34になることから、空白に入れる数字を予想して入れていくんだろう」

さき「予想の仕方ってあるの?」

ひろじ「たとえば、一番左の列には1と2があって、残り2つが空マスだね。1〜16の数字の中で、もっとも小さい数1と2が使われているから、空マスにはもっとも大きい数の16と15を入れないと、他の列と合計値のバランスが取れないでしょ?」

さき「そうだね。1+2+15+16=34だから、合計が34になるし。でも、15と16、どっちをどの空マスに入れるか、わからない」

ひろじ「それは頭の体操になる。とりあえず、どっちかを入れてみて。他の列も同じようにして入れていって、どこかで合計が34にならないところが出たら、そのとき、数字の場所を入れ替えればいい」

さき「じゃあ、つぎは3と4が入っている列だね。1と2の次に小さい数だから、16と15の次に大きい数を入れてみようかな。そうすると、14と13だから・・・3+4+13+14は・・・34だ!」

ひろじ「そうだね」

さき「これも13と14、どっちをどっちに入れたらいいのかわかんないから、適当に入れるね。次は・・・横の行。これはどうやって数字を選ぶのかな」

ひろじ「やっぱり、合計が34になる組み合わせで数字を選ぶんだ。もう、残りの数字が6〜12までの7つしかないから、合計して34になる組み合わせは限られてくる。試しに適当な数を選んで、残りの空マスに入れてごらん」

さき「縦横はぜんぶ合計34になったけど・・・斜めの合計が34にならない・・・」

ひろじ「じゃあ、最初の15、16や次の13、14の位置が逆だったんだね。斜めの数が34になるように、これらの数字を入れ替えて、他のマスもそれに合わせて数字を入れ直してみて」

さき「・・・できた! 斜めの合計も34になったよ!」

 

 

さき「えっへん!」

ひろじ「お見事!」

さき「でも、なんだか、すっきりしないな。いきあたりばったりみたいな感じで」

ひろじ「そうなると、あとは数学的なやり方で、魔法陣を根本から見直すしかないよ」

さき「そんなやり方、あるの?」

ひろじ「うん。大学の頃、魔法陣の数学的な仕組みを考えたことがある。そこそこ使えるやり方だから、それを教えてあげようか。でも、それには、三進数とか四進数とか、別のタイプの数字の仕組みを使わないといけないんだよね」

さき「なに、それ?」

ひろじ「ぼくたちが普通に使っている数字は、人間の両手の指の本数が10本あることが元になっていて、1〜10までの数を基本にしているよね。11から先は10+1、10+2・・・というふうに、1〜10の数字の組み合わせで表している。これが十進法で、この方法で扱う数を十進数という」

さき「そっか、じゅういち、じゅうに・・・っていうもんね」

ひろじ「英語でも13はthirteen、14はfourteen・・・っていうだろ。あれはthree+ten、four+tenで、じゅうさん、じゅうしと同じ作り方になっている」

さき「でも、11と12はぜんぜん違うよ」

ひろじ「それはお父さんにとっても、すごく長い間の謎だったんだけど、もう解けたから、そっちの記事を読んでみて」(*2)

 

(*2)12の秘密〜なぜeleven、twelveなのか

 

さき「うん、あとで絶対読む!」

ひろじ「内容的には1から10の10個の数の組み合わせですべての数字を表すのが十進法だけど、記号的には0から9の10個の数字記号の組み合わせになる。だから、十進法を数学的に考える時は1〜10じゃなく、0〜9を使って考えるんだ」

さき「あ、そうか。それなら、10個の数が全部ちがう記号になるね。10だと、1と0の組み合わせになっているもん」

ひろじ「その通りだ。だから0、1、2・・・9となって、次の数十は、記号が繰り上がって0と1で10と書く。ここからがいわゆる2桁の数だ。十進法だと、数字の桁が繰り上がるまで、10個の数字が使われることになる」

さき「それ、当たり前だと思ってた。人間の指が10本だったから、今みたいな数字を使っているのね」

ひろじ「じゃあ、たとえば、人間の指が2本しかなかったら、どうなっていたと思う?」

さき「ええと、1と2だけだから・・・あれ? 3はどうなるのかな」

ひろじ「使える記号は0と1の2つだけになるから、2を表す数は桁が繰り上がって・・・」

さき「あっ、わかった! 10(イチゼロ)だ! これが2ね!」

ひろじ「そう。そのあと、11(イチイチ)、100(イチゼロゼロ)、101(イチゼロイチ)・・・と続いていく。十進法の3、4、5に当たる数だね」

さき「本当に、2種類の記号しか使わないんだね」

ひろじ「そう、これが二進法だ。0と1の組み合わせで表した数字が二進数だよ」

さき「三進数だと、0と1と3の3つ?」

ひろじ「その通り。すこしわかってきたかな。」

さき「だいたい。でも、それが魔法陣と、どう関係するの?」

ひろじ「それは、次回までの、お楽しみ、ということで。数学では、二進数とか三進数とかをまとめて、N進数とか呼ぶらしい。次回は、N進数をうまく使って、より数学的な魔法陣の扱いを見てみよう。次回になれば、N進数と魔法陣がどんな関係になっているか、わかるよ」

さき「待ちきれないなあ・・・」

 

 

関連記事

 

魔法陣を作る〜その1古典的な方法

魔法陣を作る〜その2「N進数」で考える

魔法陣をつくる〜その3「N進数」魔法陣続編

 

12の秘密〜なぜeleven、twelveなのか

 

数のはなし〜森じゅんの孫に語る数の話

数のかぞえ方〜森じゅんの孫に語る数の話

百科事典棒

なぜ平方根がわかるのか〜開平筆算の謎

ヴォイニッチ手稿の謎と二項分布

 

 

〜ミオくんと科探隊 サイトマップ〜

このサイト「ミオくんとなんでも科学探究隊」のサイトマップ一覧です。

 

 

***   お知らせ   ***

 

日本評論社のウェブサイトで連載した『さりと12のひみつ』電子本(Kindle版)

Amazonへのリンクは下のバナーで。

 

 

 

『いきいき物理マンガで冒険〜ミオくんとなんでも科学探究隊・理論編』紙本と電子本

Amazonへのリンクは下のバナーで。紙本は日本評論社のウェブサイトでも購入できます。

 

 

『いきいき物理マンガで実験〜ミオくんとなんでも科学探究隊・実験編』紙本と電子本

Amazonへのリンクは下のバナーで。紙本は日本評論社のウェブサイトでも購入できます。