今回はオマケ的な内容なのですが、干渉を本質的にとらえるやりかたなので、(補)とせず、通常のプリントにしてあります。イラストは、波動理論の祖、ホイヘンス。あのスネルの屈折の法則も、ホイヘンスが自分の本で紹介したので知られるようになったとか。
では、プリントを見ていきましょう。
1は、光学的距離の差、つまり、「光路差」を使わないと、解けません。今まで習ってきた通常の行路差を用いた計算ができないのです。
その理由は単純で光1と光2が、途中、違う媒質を通っているからです。薄膜干渉のときも、似たようなことがありましたね?
こういうケースを通常の行路差で調べるのには工夫がいります。薄膜干渉のとき、かなりテクニカルな工夫をしたことを思い出してください。
でも、「光路差」を使えば、こういうケースもカンタンに解けます。
だから、干渉の問題は全部「光路差」を使って解く、と決めている学生もいます。
問題ごとにあれこれ迷わなくて済みますからね。
(別解)では、より本質的な「波数」で考える方法を解説します。
2は、実際にセンター試験で出題された問題です。
選択肢を見ると、出題者がどんな糸で問題を作ったのか、明白にわかります。
干渉条件を波の数の差で判断するという、大学での干渉の取り扱いを持ち込んでいる問題だからです。
高校では通常、「波数」の差で干渉を教えませんから、こういう問題は困りますね。「波数」を使えば、一瞬で解ける問題なのですが・・・
光学距離、つまり「光路差」を用いて計算し、それを変形させれば、選択肢の数式になります。
では、描きこみを見ていきましょう。
1は、まず、「光路差」で解いています。
薄膜より先は、光1も光2も経路に変わりがありませんから、光1と光2の「光路差」は、薄膜の幅Dの距離で生じています。
光1は薄膜内を通っているので、光路長はnDになります。光2は空気中なので光路長は1D。したがって、光路差はnDーD=(nー1)Dとなります。
これが弱めあう条件になったので、(n−1)D=(m+1/2)λ。
この問題では、もう少し簡単な条件なので、書き込んだ計算のようになります。
さて、これを波数で考えてみましょう。
書き込んだ計算を追いかけていただくとすぐにわかりますが、それぞれの波の数を引いたものが(m+1/2)λになります。(この問題ではm=0の場合です)
どちらの場合も、同じ結果になりますね。
2は、波数を用いて解いています。それは、選択肢を見ると、波数の差が並んでいるからです。
この薄膜干渉は、高校では前のプリントでやったように、数学的なテクニックを用いた工夫をすることで、2dcosr=mλなどの計算をさせるのが一般的です。
しかし、センター試験の出題者は、この式を使って問題を考えさせるのはやめ、光1と光2の光の波数を比べさせています。
波数の計算はカンタンで、距離を波長で割るだけです。
光1は空気中を距離b進んでいるので、光1の波数は距離bを空気中の波長λで割った、b/λです。
光2は水中を距離2a進んでいるので、光2の波数を距離2aを水中の波長λ’=λ/nで割った、2a/λ’となります。
光1は反射のさい位相が反転していますから、この波数の差がmλのとき、光1と光2は弱めあうことになります。
したがって、2a/λ’ーb/λ=mのとき、弱めあう、という結果になります。
これを高校レベルの光路長を使って計算してみましょう。(別解)を見てください。
反射のさいの位相のずれを考えて、さきほど同様、弱めあう条件は光路差=mλとなります。
光路差を使って計算するときは、波長は必ず真空中の波長λを使い、λ’は使いません。それは、すべての距離を光にとっての真空中の距離に換算しているからです。
光1は空気中を進むので光路長は1b。
光2は水中を進むので光路長はn2a。
したがって、光路差はn2aーbです。
よって、弱めあう干渉条件は、n2aーb=mλ。
これを変形すると、書き込みのようになり、λ’=λ/nを用いて、2a/λ’ーb/λ=mと書き直せます。
波数を使うのは、なかなか難しいでしょうが、光路長は高校生にも使えますし、複雑な問題になると光路長を使わないと解けません。干渉の問題は、意識して光路長を使うようにすると、ラクでしょうね。
これで、光については、一通りのプログラムが終了です。オンライン講座の期間も終わりますので、あとは通常運転に戻りたいと思っています。
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