物理ネコ教室120-1光の反射と屈折演習(抜粋) | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 物理ネコ教室では、原則として演習問題は公開していないのですが、オンライン講座の期間中に講座で取り上げる演習問題は、ここにもアップすることにしています。

 今回は、講座で扱う、120光の進み方の演習問題の一部を抜粋して取り上げます。

 さまざまな事情で、演習問題は講座で扱って少し経ってから扱うこともあり、この演習はまさにその例です。オンライン講座にするという決定が急だったため、その頃配ったこの演習プリントで扱う問題の書き込みをブログにアップすることができず、後回しになりました。

 オンライン講座では、光速の測定の内容の次、干渉に入る前に、この問題を扱う予定です。

 あとの説明文にも出てきますが、この問題は近似計算がはじめて出てくるので、光の干渉のところで登場する種々の近似計算の入り口とするためです。

 

 水の中にあるものが浮き上がって見える現象です。

 もちろん、屈折現象ですが、真上近くから見たときの浮き上がった見かけの深さは、本来の深さを水の屈折率で割った値になります。これを、扱ってみましょう。

 

 

 

 

 

 (2)が浮き上がりの問題。

 学生はまだこの問題を解く時点では、物理特有の近似計算になれていません。

 のち、光の干渉でわんさか出てくる近似計算の練習として、この問題を解いておくとよいでしょう。

 近似に関する考え方も含め、書き込みのところで詳しく論じたいと思います。

 

 (3)はまったく違う問題ですが、屈折の問題としてはよく見るタイプの問題です。センター試験にも出題されています。

 

 では、見ていきましょう。

 

 

 (1)は、普通の屈折の法則を用いた問題。(2)(3)で使う基本式です。これは、書き込みの通り。

 注意することは、光の場合、屈折率が2種類あることです。

 波動の基礎理論で学んだ「相対屈折率」と、光の屈折で初めて登場する「絶対屈折率」です。

 「相対屈折率」「絶対屈折率」のどちらで問題を作るかは、出題者の気まぐれみたいなもの。

 この問題では「相対屈折率」がnとして与えられていますが、空気の「絶対屈折率」を1とみなせば(これは通常の場合は問題なく1としてかまいません)、水の「絶対屈折率」をnとすることができます。

 せっかく光の屈折の問題を解くのですから、より扱いやすい絶対屈折率を用いた屈折の法則の方がラクチンですね。

 

 (2)いよいよ、近似計算です。

 問題文に「真上から見るとき」とありますが、問題によっては「真上近くから見るとき」と書かれている場合もあります。どちらの場合も、入射角θと屈折角φがとても小さい場合ですね。

 

 数学的には、sinθ=QP/SPとtanθ=QP/S'Pを等しい値と見なすことはできません。

 

 しかし、物理も含め、自然科学では、現象を扱う範囲でほぼ同じ数値と思われる値を入れ替えてもかまいません。これが「近似」という考え方です。自然科学は測定値を用いて有効数字の範囲で計算していくので、有効数字の範囲で等しい値なら、等しい値として置き換えても、なんら問題はないのです。

 

 書き込みの答は、問題文に与えられている近似式「αが小さいとき、sinα=tanαとしてよい」を用いて計算しています。入試問題でも、こういう近似につかう式は与えられていることが多いので、それをうまく用いて計算すればいいのですが、どうしてそういう近似ができるのかを理解しておくのは、意味のあることでしょう。

 

 角度θが小さければ、図の三角形SPQの辺SPと辺SQはほとんど同じ大きさとみなせます。

 (θが小さいとき、SP=SQ)

 

 したがって、この近似ができる場合は、

 

 sinθ=QP/SP=QP/SQ

 

 とすることができます。

 

 QP/SQ=tanθですから、結局、sinθ=tanθとしてよい、ということになりますね。

 

 つまり、この近似は、三角形の頂角が非常に小さいとき、頂角をはさむ三角形の2辺の長さがほとんど同じとみなせるという、実際の測定に当たっての考え方を使っているのです。

 

 この例に限らず、物理の近似計算は、一見、なぞの数式で表されますが、実際の測定の範囲で同じと見なしてもかまわない量を近似しています。

 近似式が出てきたら、ぜひ、その背景にある考え方を理解するようにつとめてください。

 

 物理を含め、自然科学は「近似の学問」ですので、近似計算を自分で考えてやれるようになることが、将来的に物理を理解する重要なポイントになるのです。

 

 さて、これだけわかれば、書き込みの計算を追うのはラクですね。

 

 (1)の屈折の法則はsinで表されますが、近似的にこれをtanに置き換えることで、水中の物の実際の深さhと浮き上がって見えるみかけの深さh'を用いて、屈折の法則を表すことができます。

 ここから、h'=h/nという、みかけの深さが実際の深さの1/nとなることを示せますね。

 

 なお、書き込みの式では、どこで近似したかわかるように、わざわざ「ほぼ等しい」を表す「=」に点々をつけた記号を使っていますが、そもそも物理学の計算はすべてが近似計算なので、本当はぜんぶ普通の「=」を用いてかまいません。

 

 (3)は、単純ですが、計算がちょっと特殊なので、センター試験で出題されたとき、計算ができなくて問題が解けなかった高校生がたくさんいました。

 

 物理現象としては次のような発想で考えてください。

 

 光源Sから円板の縁Rに向かって進む光の屈折角が90度になれば、空気中のどこから見ても光が目に入ることがなくなります。

 

 これを(1)の屈折の法則の式と、図の三角形SRQの3つの辺の長さを用いて計算すれば、Sが見えなくなる最小の円板の半径が求まります。ただし、この場合は真上から見るという条件は外れているので、(2)で用いた近似計算を用いてはいけません。

 

 あとは、書き込みの計算を見てください。

 

 等式の両辺を2乗して式を変形して円板の半径rを求めるという計算は、一度見ておけば、誰でも再現することができるでしょう。

 

 演習プリントの他の問題は、各自で、必ずやっておいてください。

 

 

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