宇宙人と遭遇したら、どう意思疎通するか〜未知への挑戦 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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【Question】

 事故で孤島に流れ着いたあなたは、宇宙線の事故で不時着した宇宙人と遭遇した。お互い、言葉は異なるし、文化も常識も異なるだろう。いつも使っている科学機器は手元にはない。孤島なので、インターネットなどの通信手段もない。

 どうやって意思疎通をはかればよいか、おもいつけるだけ、たくさん書いてみよう。図をつけてもかまわない。

 

 これは、未知への挑戦シリーズ「宇宙人との会話」の問題文です。

 

 もちろん、正答のない問題ですから、解答してもらうのはたいへんです。昔、質問リレーをやらなかった時期にこの問題にチャレンジしてもらったときは、1、2行しか答が書けない学生がたくさんいました。

 

 ところが、1年間、物理ノートの質問リレーをやった学生だと、ほとんどの人が、興味深い解答をきちんと書けるようになります。「自然科学に強い」能力が備わるのです。何事も練習、ということでしょうか。

 

 冒頭のイラストはマンガ版「これ、科学?」より。宇宙人を扱った回です。

 

 では、学生のみなさんの回答から、いくつかを抜粋して紹介します。

 

【Aさんの意見】

 まず、簡単なジェスチャーは、通用しない。日本やアメリカでは、首を縦にふることは「Yes」を示すが、インドなどでは、その行為は「No」となる。地球人同士で通用しないジェスチャーは、宇宙人に通用する可能性が低いと考えられる。

 案としては、伝えたいものを見せて(指さして)私たちの言葉で言う。そして、すこし強引になるが、宇宙人にその言葉を覚えてもらう。私が6歳で海外の現地の学校に通っていたときは、フィーリングで同級生がいっていることを理解できたので、知能の高い宇宙人なら可能だと思う。

 次の案としては、昔、どこかの国が宇宙のどこかにいる宇宙人に送ったメッセージを参考にする。0と1で表して伝える方法である。

 

【ひろじのつぶやき】

 ジェスチャーが、共通のコミュニケーション手段にならない可能性があることを判断しているのがすばらしい。国が違うことでジェスチャーの意味合いが異なることに気がついたのは大きいですね。

 最後の「0と1」の話は、故カール・セイガンがアレシボ電波望遠鏡から球状星団M13にむけて送ったメッセージのことですね。Aさんは、よくこんなことを知っていたものです。

 送る信号は「0と1」で、モールス信号の「トン、ツー」という信号に当たります。これを全部で1679個送ります。

 M13に電波文明を持つ知的生命体がいれば、この1679という数が2つの素数23と73の積であることに気がつくでしょうから、この信号を23×73のマスでできた長方形に並べ直すでしょう。そうして、トンとツーを2色で色分けすれば、図形が現れます。

 この図形については、また別の機会に紹介させていただきます。

 この図の先頭には、1〜10の数字の表記(アラビア数字ではなく、二色の色分けにより規則性をもった二進数的な表記です)を順に並べてあります。さらに、その次には代表的な元素の原子番号、DNAの化学式と二重らせんの図、人の片樋や太陽系の図などが描かれています。

 

 

【Bさんの意見】

 まず、日本語や英語で話しかけてみる。たぶん通じないので、地面に絵を描いたり、指をさしたり、身振り手振りで伝えてみる。

 それで反応がなければ、もしかしたらその宇宙人は目が見えないかもしれないし、耳が聞こえないかもしれない。または、虫や魚のように、人間とは違う見え方、聞こえ方をしているかもしれないから、まず、少し観察をしてみる。

 たとえば、犬やネコの場合、なれてくると少しは意思疎通がとれるようになる。だが、人間は昆虫と意思疎通がとれるのか・・・

 Twitterなどで、ハチを手に乗せて遊んだり、餌をあげたりしている人を見たことがある。犬やネコより時間がかかるかもしれないが、ずっとふれあっていると少しは意思疎通がとれそうな気がする。宇宙人とでも、時間をかけて関わっていけば(関わろうとする勇気があれば)、意思疎通がとれるようになるのではないだろうか。

 目が見えないなら触覚と聴覚など別の感覚で意思疎通をはかればいいと思うが、人間とは別の感覚を持っているかもしれないし、急にアクションをとれば敵と思われるかもしれない。最初はやはりよく観察することが大切かもしれない。

 さきほど「触覚」といったが、もしかしたらその宇宙人は人間にとっては有害な物質からできているかもしれないので、触らない方がいいかもしれない。

 

【ひろじのつぶやき】

 虫との意思疎通と比較する発想は論理的。ある程度大きさのある生物で、人間とはもっとも異なる生物となると、虫でしょう。犬猫などのほ乳類だと、ある程度の感情の交流が可能なことは、動物好きな人ならおわかりと思います。しかし、虫はかなり異なりますね。

 また、前半部分で、宇宙人の視覚や聴覚が人間とはかなり異なるのではないかと指摘していますが、これもするどい。当然、考えられることです。

 

 

 こんな、ウェルズの火星人みたいな宇宙人だったら、交流しない方が得策かもしれません。

 宇宙人の体が有害物質でできていたら、ふれあうコミュニケーションが命取りになるという指摘は、なかなか思いつかない発想です。すばらしいと思います。

 

 

【Cくんの意見】

 宇宙人が地球の孤島に不時着したとすると、その宇宙人よりも自分の方が、ずっと地球にくわしいことは確実である。よって、その宇宙人の言語で地球にあるものをあてはめるより、地球での言葉をまず宇宙人に伝える方が効果的だと思う。よって、二人だけの新しい言葉を作るよりも、宇宙人の言葉を覚えるよりも、地球の言葉を教えることがよい。リンゴを見て「リンゴ」というようにして、宇宙人に言葉を教える。

 しかし、地球の中だけでも、文化は様々なため、星が異なるとなると、地球人が当たり前だと思う常識が通用しない。まずは様子をうかがい、お互いの体のつくりや文化を知り、その上でジェスチャーで思いを伝え合ったり、地球のことを教えてあげられるとよいと思う。

 

【ひろじのつぶやき】

 じつは、宇宙人といっしょに「新しい言葉」をつくって意思疎通する、という解答は、意外に多いのです。

 Cくんはそれを見越して、冷静に状況を分析し、地球の言葉を用いて意思疎通するのが、もっとも現実的という判断をしています。論理的ですね。

 

 

【Dくんの意見】

 孤島に流れ着いたとき、必要なものは、水や食料、雨と日光をしのぐための拠点。意思疎通をはかりにくい相手だったとしても、人数が多い方が生存確率が上がる。言葉は通じる訳がないし、ジェスチャーも地球上の生物とは認識が異なるかもしれない。

 そこで、自分は、絵で示すことを考えた。

 言葉が発達していない古代の文明でも、壁画や石碑というものが多く存在しているのだから、有効手段になるのではないか。

 たとえば、自分が食料が必要だということを示す場合は、立っている人の絵と倒れている人の絵を砂浜に描いて、食料を用意する。食料を持っていないジェスチャーをして倒れている人の図を示す。つぎに、食料を食べて、立っている人の図を示す。これで、伝わるのではないか。

 

【ひろじのつぶやき】

 孤島で生き延びることを最優先に考えた発想で、こういう発想をする人は、案外少ないのです。たとえ意思疎通がしにくくても、チームを組んだ方が生き残れる、という発想ですね。

 絵を用いることについては、宇宙人が絵の認識ができるかどうかを疑問視する意見の人もいるのですが、Dくんは、古代の壁画などと比べることで、絵が有効な情報伝達手段になると判断しています。これもすばらしい。

 

 

【Eさんの意見】

 孤島に事故で流れ着いたのだから、「帰る手段」を聞くことを意思疎通のゴールとする。外国人に尋ねるときと違い、文化や常識が違う可能性が高いから、まずは「安全の確保」をし、自分の身を最大限守ることが必要だと思う。

 そのため、「障害の多い場所で距離をとる」とよい。熊を見たときは死んだフリをすると聞いたことがあるが、動物は目を合わせるだけでケンカを売っていると思う種類のものも存在する。決して振り返らず、少しずつ後ずさりして距離をとるとよい。もし周りに障害物がなければ、森の近くに行って攻撃を避けるようにする。

 次に「相手に敵意がない」と伝えることが必要だと思う。だから、相手に何かものをあげるとよいと考える。しかし、使えないスマホを渡しても意味がない。赤ちゃんや犬猫は光るものに興味を示す。鏡やボタン、ベルトの金属など、反射するものを、距離をとりながら渡す。

 

【ひろじのつぶやき】

 Eさんの解答は「どうやって宇宙人とコミュニケーションをとるか」という問題の出題意図と一見違うように見えますが、これはひょっとすると、もっとも利口な解答かもしれません。

 遭遇する相手が人間から遠いほど、意思疎通は困難になります。

 出会いが友好的になるとは限りません。

 自分の身を守るための方策を考えた上での行動が重要になるでしょう。

 人間の歴史でも、相手の方が文明度が高い場合、戦いになった場合に敗北するケースがほとんどです。「新大陸発見」当時の中南米の人々が、ヨーロッパから帆船でやってきた小数の人々に敗北し、支配されたのが、典型的な例です。

 コミュニケーションとは何かを、深く考えさせられますね。

 

 では、今回はこのへんで。

 

 

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