物理ネコ教室255交流 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 交流といえば、テスラ。テスラといえば、交流ですね。

 

 エジソンと同時代の科学者(というより、工学者かな)、ニコラ・テスラはオーストリア(現在はクロアチア)出身の工学者。最初はエジソンのところにいましたが、エジソンが直流に傾倒するあまり、ニコラの交流の研究を軽視し、たもとを分かったといわれています。テスラを支援したウェスティングハウス社とエジソンの間で、熾烈な電力ビジネス競争がありました。

 二相交流、三相交流など、現在の交流技術に関わる基礎的な研究を一人で成し遂げていますが、エジソンとはまた違った意味で変わった人。ウェスティングハウス社内でも孤立し、1年ほどで社を離れてしまっています。

 

 テスラは独特な性格の人で、人と話をするのが苦手で、いつも公園でハトと話していたと伝えられています。

 

 他の人がやらない不思議な研究を真面目にやっていたことでも有名です。地震を起こす研究は、あのオウム真理教のスタッフがその原論文を読むためにロシアまで行ったといわれています。教祖の「予言」を現実にするための研究をするスタッフだったのでしょうね。

 

 エジソンが交流でなく直流に固執したわけは、じつにエジソンらしい。電力料金を測定する仕組みを電気分解を利用してやろうとした結果です。これは直流でないとうまくいきません。「金にならない発明は発明ではない」というエジソンの信念が、失敗を生んだ典型的な例ですね。

 

 高校の物理でよく扱われるように、送電のときのジュール熱によるロスを減らすためには、送電を高電圧にするしかありません。

 当時の技術では、高電圧の送電を可能に出来るのは電磁誘導を利用した変圧器のシステムだけで、これには交流を使わないといけません。直流では、送電電圧を高める方法がなかったのです。

 

 そこで、エジソンは小さな発電所をたくさんつくって送電するシステムを考えましたが、エネルギーロスの問題は解決できず、結局採用されたのはエジソンの影響力のあるニューヨーク市だけ。そのニューヨーク市も、2007年に直流システムの送電が終了しました。

 

 世界で最も進んだ年ニューヨークが、いつまでも古くさい直流システムを採用していたのは、皮肉です。対抗勢力の評判を落とすため、政治的なコネクションを利用して、死刑椅子に交流を採用させたエジソンの「呪い」とでもいうべきなのでしょうか。

 

 前回の記事で書いたように、プリントのナンバーは「9」となっていますが、その後「10」に変更しました。交流と交流回路の理論をつなげて説明するためです。

 

 

 基本的に交流の発生のメカニズムは、ファラデーの電磁誘導の法則の応用に過ぎません。が、まともに計算するには微積分の知識が必要です。

 

 このプリントでは、電磁誘導の法則の法則V=ーNΔΦ/ΔtのΔΦ/Δtが、Φtグラフの傾きにマイナスをつけたものになるというイメージを利用して、起電力Vのグラフを推測する形で授業プログラムを組んでいます。こうすると、微分方程式を解かなくても答が推測できるからです。(本当に、この分野は微積分抜きで教えるのは大変です)

 

 

 

 交流と直流の簡単な関係を押さえておくことは、基本であって、もっとも重要なポイントです。この基礎ができていないと、交流回路の理論をいくら学んでも、勘違いばかりが起きます。

 

 ここでも、あまり微積分計算に深入りせず、感覚的にグラフから結果がわかるように、授業を組んでいます。詳しくは、のちの描き込みプリントをご覧ださい。交流の実行値と最大値は常識敵に知っていないと日常生活に支障を来す内容です。

 

 4の送電と変圧の仕組みは、まさにエジソンとテスラ(ウェスティングハウス社)との電力戦争を左右したものです。よく理解しておきましょう。歴史的にも文化的にも重要ですが、受験する人にとっては、センターや大学入試で頻繁に問われる題材であることを指摘しておきたいと思います。

 

 では、書き込みプリントをどうぞ。

 

 

 1の最後に書いたトリビアは、物理教師でも知らない人がいますので、要注意。コンセントの少し大きめの穴の側が、アースしてある側です。こちらに金属を突っ込んでも、何も起きません。でも、小さめの穴の方はマイナス140ボルトからプラス140ボルトまで、60ヘルツで変動している端子です。こちらは危険なので、うっかり触らないように気をつけましょう。

 

 2の交流発生の仕組みは、先ほど書いたように、電磁誘導の法則のよい応用例ですので、センターや入試問題でよく出題されます。きちんと理解しておきましょう。

 

 

 

 交流の場合の平均電力を求めるのも、積分を使えば簡単ですが、ここでは積分を使わずにイメージだけで求められるように工夫してあります。さらに、交流の「実行値」が直流で用いる式との比較で決められていることを説明しています。これも、実生活では必須の知識ですね。

 

 4の送電システムの問題は、さきほどまで長々とエジソンvsテスラ(ウェスティングハウス社)の電力戦争で書いてきましたので、くり返しません。

 

 変圧器では、ファラデーの電磁誘導の法則から1次コイルと2次コイルの電圧の比が巻き数の比になることと、エネルギー保存則から1次コイルと二次コイルの電力が等しくなることを学ぶことになります。

 

 なお、この二つの式を合体させることで、第三の関係式を導くこともできます。それを言葉で書くと、「1次コイルと2次コイルの電流の比は、巻き数の逆比になる」となります。

 

 が、こうしたルールを逐一覚えていくと、きりがなくなりますから、覚えない方が利口ですね。

 

 

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