物理ネコ教室254電気振動と電磁波 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

マンガ・イラスト&科学の世界へようこそ。

 

 マクスウェルが予言した電磁波の存在はヘルツによって確かめられました。その詳しいいきさつは『いきいき物理マンガで冒険』の第7章「歪んだ世界」に描きましたので、そちらをご覧ください。

 

 プリントのナンバーが「10」となっていますが、描き込みプリントのナンバーは「9」になっています。次の交流の発生のプリントを後でやったほうが交流回路の話と連続してやれるので、順序を変えたためです。描き込みプリントの方が最新の授業の流れになります。

 

 より厳密にいうと、電気振動の振動数は微分方程式を立てて解くか、後にやる交流回路の理論を学ばないと理解できません。どちらも、この時点で理解するのは不可能なので、そのへんをわりきって正直に話した方が、授業の進行はうまくいきます。

 

 では、見て行きましょう。

 

 まず、コンデンサーとコイルでつくる振動回路の説明から入ります。これも微妙な内容ですが、微分方程式を知らなくても、なんとかイメージをつかむことはできます。コイルを電流に慣性を与える役割、コンデンサーを位置エネルギーを蓄えるバネと考えるようなアナロジーです。

 

 あまり成功しているとは思えませんが、たいていの教科書では、このアナロジーを用いて、コイルとコンデンサーのエネルギーの和が一定になることを説明してます。

 

 ひとことでいってしまうと、コイルがあると電流の変化に逆らうように誘導起電力が生じるので、電流に「慣性」が与えられるという発想ですね。

 

 エネルギー保存則を使う方法は、共振回路に流れる最大電流を求めるのに有効です。

 

 この回路では、電気振動の振動数(したがって周期も)は、コンデンサーとコイルの値で決まりますが、正確に求めるためには微分方程式が必要です。それほど難しくないものですが、今の高校では学ばないので、残念ながら説明は省略せざるをえません。

 

 冒頭のイラストに描いたマクスウェルが、ファラデーの「場の理論」を数式化し、そこから電磁気の波(電磁波)が存在することを予言し、その速度まで理論計算したという話は、物理関係者の間ではあまりにも有名な逸話です。

 

 が、あまり知られていない話をちょっとだけ書くと、ファラデーと文通していたマクスウェルは、ファラデーからの手紙に「磁力が伝わるのにかかる時間を測定する実験をやろうと思っている」と書いてあるのを見て、電磁波の存在を考えるようになったのであって、純粋に方程式の結果から予測したわけではありません。

 

 マクスウェルが最初に考えた電磁場と電磁波の理論は、空間に謎の渦がぐるぐると渦巻く不気味なもので、この渦理論に基づいて電磁波の存在を論じてます。(ちなみに、現在の電磁気理論の数式に登場するcurl(カール)やrot(ローテション)は、マクスウェルがこのときに考えた「渦」を意味する言葉が、記号として残ったものです)

 

 マクスウェルの電磁方程式から電磁波の速度が出たのはもう少し後の話ですが、それをヘルツが実験により実証したことで、ファラデーとマクスウェルの場の理論は、正しいことが証明されます。

 

 高校の物理でも電磁気に関する「場の理論」は、学習内容の中心的存在です。数式をいくら覚えても場の理論はわかりません。イメージを豊かに持つことが大切ですね。

 

 ヘルツの実験は、プリントには書いてありませんが、定常波を作ることで電磁波の存在を立証しています。このへんの議論を深く知りたい方は、前掲書『いきいき物理マンガで冒険』第7章とその解説をご覧ください。

 

 金属すだれで電磁波がどのように遮蔽されるかについては、教科書にもその原理が書かれていません。このプリントでも結果だけをまとめてありますが、どうして電磁波が金属内部に侵入できないかを理解しておくことは、好奇心の強い人(つまり理系の人)には重要でしょう。

 

 自由電子は受け取った電磁波のエネルギーで揺れて再び電磁放射を行い、電磁波が四方八方へ放射されます。金属表面の自由電子が受け取った電磁波のエネルギーは、半分は反射され、半分は奥へ(つまり金属内部へ)進みます。奥へ進んだ電磁波はそこで次の自由電子が吸収して再び電磁放射が起こります。ここで、半分が反射され、半分が奥へ進みます。こうして単純にエネルギーを計算すれば、金属内部へ進む電磁波のエネルギーがほとんどゼロになることがわかるでしょう。

 

 金属すだれが自由電子の揺れやすい方向に配置されているとき(図の左側)は、電磁波のほとんどすべてが反射されてしまい、奥へは進行しません。 しかし、金属すだれが自由電子の揺れにくい方向に配置されているときは、自由電子が揺れにくくなるので、電磁波が突き抜けて進むようになります。

 

 ところで、3.で書いたのは、電磁波放射を行うメカニズムです。コンデンサーにアンテナをつけないと電場の変動はコンデンサー内に止まり、電磁波として発信されません。

 

 

 ヘルツの装置は有名ですが、教科書に図だけが描かれているため、空間をへだてて火花がとどくことで電磁波の存在が確かめられたと誤解している人も多いですね。『いきいき物理マンガで冒険』に書いたように、それだけでは電磁波の存在証明にはなりません。ヘルツもそれをわかっていて、電磁波が存在することをはっきり示す実験を行っています。

 

 7.の金属光沢の話は、教科書にはほんのちょっと書いてあるだけですが、日常生活では重要な内容です。金属光沢は自由電子の電磁波反射により見える「色」ですので、金属っぽい色をしているものは、自由電子を持っていることが多いのです。

 

 例えば、折り紙の銀紙や金紙は、金属光沢を持っていますので、自由電子を持っています。したがって、銀紙、金紙は電流を通すんですね。銀紙はアルミです。

 

 ただし、金紙は銀紙の上に黄色い半透明のプラスチックを貼りつけてあるので、そのままでは通電しません。貼りつけてある黄色いプラスチック紙をはがすと、ちゃんと電流が流れます。

 

 なお、あの「ジンタン」も、銀色をしている昔ながらのジンタンは丸薬の表面に酸化防止のために銀を塗ってあるので、やはり通電することができます。

 

 

関連記事

 

電磁気<物理ネコ教室3年>

241磁気

242電流のつくる磁場

243電流が磁場から受ける力

244ローレンツ力

245ローレンツ力・フレミングの力の応用

249電磁誘導

250電磁誘導の原因

252自己誘導

253コイルとコンデンサーのエネルギー

254電磁振動と電磁波

 

255交流

 

 

〜ミオくんと科探隊 サイトマップ〜

このサイト「ミオくんとなんでも科学探究隊」のサイトマップ一覧です。

 

 

***   お知らせ   ***

 

日本評論社のウェブサイトで連載した『さりと12のひみつ』電子本(Kindle版)

Amazonへのリンクは下のバナーで。

 

 

 

『いきいき物理マンガで冒険〜ミオくんとなんでも科学探究隊・理論編』紙本と電子本

Amazonへのリンクは下のバナーで。紙本は日本評論社のウェブサイトでも購入できます。

 

 

『いきいき物理マンガで実験〜ミオくんとなんでも科学探究隊・実験編』紙本と電子本

Amazonへのリンクは下のバナーで。紙本は日本評論社のウェブサイトでも購入できます。