イギリスのウィリアム・ギルバートはガリレオと同時代の人で、ガリレオより20年前に生まれています。もともと医師をしていたのですが、『磁石について』(原題はもっと長い)で発表した磁力に関する研究で、ガリレオたち同時代の科学者にショックを与えました。
ガリレオやケプラーにとっては、太陽、地球、月の間に働く力のヒントとなりました。なにしろ、磁力は、空間を隔てて働く力ですから、後の万有引力につながる力なんですね。
イギリスで、一番最初に地動説を支持した人としても知られてます。
ギルバートは地球を巨大な磁石と考え、吊した磁針が水平より傾くこと(伏角)を発見しています。
イラストは、バストアップは帽子をかぶっている画像しか残っていないので、ちょっとしたイタズラで、他の画像からわかったギルバートの髪型を用いて、帽子を取ったらこんな感じだろうという絵を描きました。
今『いきいき物理マンガで冒険』(10月刊行予定)の最終校正に入っています。7月8月と原稿の仕上げをし、8月末から今まで、校正を続けています。いつもなら夏休みには実験の記事をたくさん書いているのですが、今年の夏はブログ記事は滞り勝ちでした。すみません。
そのぶん、『いきいき物理マンガで冒険』は読み応えのある面白いものになっていますので、ご期待下さい。うちの娘にもすらすらと読んでもらいたいので、小学生3年生以上で習う漢字にはすべてルビをふりました。小3から大人まで楽しめると思います。かんたんに読めるように書きましたが、内容はわりと深いと思いますので、物理に詳しい方でも楽しめると思います。
というわけで、ブログもしばらくは、ちょっとずつ休み休み更新するかな・・・と思っていたのですが、つい先日、とある方面から強い要望がありましたので、物理ネコ教室の続きをアップすることにしました。
いよいよ、磁気です。
一般的に「磁性」といえば、鉄が磁石にくっつくという「強磁性」のことです。
驚くことに、理系に進む高校生の中にも「磁石にくっつく物は何?」という問に「金属!」と答える人がいます。
もちろん、磁石に強く引かれるのは、鉄、ニッケルなど、強磁性体と呼ばれる物質です。強い磁石を使うと、お札も引っぱられますが、これはお札の印刷に鉄分の入ったインクが使われているからですね。
本来の紙や木は炭素が主成分で、炭素は反磁性体ですので、強い磁石を近づけると遠ざかります。シャーペンの芯の2Bは高密度の炭素の塊ですので、けっこう強く反応します。
1(3)(4)の実験は、演示実験としていつも見せています。
2以降は、電気と磁気を比較しながら、静磁場の理論のアウトラインを紹介しています。
電気と磁気の世界はあまりにも似ているので、不思議な感じがしますが、それもそのはず、両者は親戚関係にあります。それがわかったのはもっと後の話ですが、このプリントではそこまで深入りせず、3の磁気と電気の違いにだけ言及しています。
ちなみに、4はちょっとした遊び問題。じつは、小学生向けの学習内容だったり、クイズだったりします。でも、間違う人もいるんですよね。
(問2)は特に「コンパスはぐるぐる回る」なんて答をいう人も多い。
あなたは、どうでした?
では、書き込みを見ましょう。
プリントに「常磁性」「反磁性」なんて書いてあると、難しいことまでやっているなあと思われる人もいるかもしれませんが、反磁性はファラデーが発見した現象で、ファラデー自身も「物質の基本的な性質だと思う」と見抜いた現象です。その本格的な理解はムリでも、高校生でも現象自体を知っておく必要がある内容です。
粉磁石による強磁性体の実験は有名な実験ですが、実際にやる人は少ないようです。フェライト磁石を金槌で叩いてコナゴナにしてつくるのですが、できるまで時間がかかりますので、根気よくやってください。ぼくは、大きな試験管に粉磁石を入れ、ゴム栓をして使っています。
加熱により強磁性を失う実験は、さらにやる人は少ないようです。でも、加熱することで強磁性が一時的に消えるのは、重要な事実ですね。
ぼくは、この授業のとき、かなり時間を割いて、海底の岩石や火山の岩石がどうやって磁化したのか、そして、その磁化の向きが順次入れかわってきたという地学の話をしています。物理の授業や、まして受験にはまったく関係ありませんが、マントル対流による大陸移動の重要な証拠が、磁気の研究から見つかったことは、科学の横断的交流の成果として、重要な逸話ですからね。
静電気と静磁気の相似には、本質的な意味があります。
でも、決定的な違いもあります。
電気では正電荷だけ、負電荷だけという塊を考えることができますが、磁気ではN極だけ、S極だけの磁石はありません。
この決定的な違いが、電磁気の世界の理解にのちのち絡んできます。
さて、4の答はどうだったでしょうか。
冒頭で紹介したように、ギルバートは地球全体を磁石と考えたときの磁場が図のように立体的になっていることを予想しています。図を見れば明らかなのですが、磁針は磁力線の方向を向きますから、北極や南極では地面に垂直に立っている磁力線と同じ向き、つまり、上下方向を向くのですね。
では、このへんで。
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