【最終回】僕のお気に入り映画BEST200~第1位 | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

僕のお気に入り映画BEST200。

本日で最終回になりました。

僕のお気に入り映画BEST200 (2位から200位まで)

 

やっぱり1位の作品は単独でご紹介したいので、

ちょっと引っ張りました。

 

長い間い付き合いいただいてるブロガー様には、

大体予想がついてしまう1位作品だと思うのですが参ります!

 

1位

ハンナとその姉妹』(1986)Hannah and Her Sisters

数々の名作、傑作を押しのけて1位になったのは本作です。

極上のヒューマン・コメディ。

初見から40年近く経ちますが未だに僕の中のBEST1の位置は変わりません。

ここからは完全ネタバレですがぜひ読んでください!

ニューヨーク。

長女のハンナ(ミア・ファロー)はしっかり者の女優。

妹想いで両親の面倒も見ています。

 

次女のホリー(ダイアン・ウィースト)はぐうたらで、

しょっちゅう姉から金を借りたりマリファナやったり、

どこから聞きつけたのか姉夫婦の不仲の暴露本を書いたりする。

 

三女のリー(バーバラ・ハーシー)は女子大生。

俗世間からずれたような画家(マックス・フォン・シドー)と付き合っており、

その関係にちょっと疲れている模様。

 

物語は、この三女リーに、

ハンナの旦那エリオット(マイケル・ケイン)が惚れてしまったようだと告白するシーンから始まります。

 

実はハンナは再婚で、

最初の結婚はミッキー(ウディ・アレン)としていたのだが、

彼の無精子症が原因で離婚してしまっていたのです。

 

このミッキーはテレビのディレクターをやっているのですが、

大変な病気恐怖症で、

最近聴力が落ちてきたのを気にしています。

 

これらの登場人物が、

生き馬の目を抜くニューヨークであやとりのように交錯しながら物語が進行していきます。

 

ハンナの紹介で、ミッキーは次女のホリーと付き合うように勧められるが、

二人の性格、趣味嗜好などが正反対で、

最初のデートは散々な結果に終わる。

 

ハンナの夫のエリオットの三女リーへの思いはますます深くなっていき、

一線を越えてしまう。

それと同時に妻ハンナとの関係も冷え込んでくる。

 

ミッキーの病気恐怖症はますますひどくなっていき、

聴力の衰えの原因を知るために精密検査を受けるのだが、

CTスキャンで脳の一部に影が見えて、最悪の場合脳腫瘍かもしれないと宣告されてしまう。

 

もともと人生悲観論者の彼は絶望の淵に追いやられてしまう。

 

が、再検査の結果はシロ。

つまり脳腫瘍ではなかったのだ。

 

喜び勇んで病院から飛び出し、

大丈夫だったと歓喜の声をあげながら走りだすのだがふと立ち止まる。

 

「今は結果がシロでも結局僕は死んでしまう。ということは今生きているということはどういうことなのだろう」

と、さらに深刻な悩みに突入してしまう。

 

いろんな宗教にすがり答えを求めようとしても、

どんな哲学書を読んでみても、

誰も“死”に対する答えを出していない。

ミッキーの言葉を借りるなら、

すべての宗教の死への答えはすべて死後払いなのであります。

 

生きている意味を完全に失って虚無的になってしまった彼は、

猟銃を使って自殺を計画する。

 

生ける屍のようになってしまったミッキーは、

ふらりと映画館に入る。

何度も観たことがあるマルクス兄弟の映画だ。

 

その画面で繰り広げられているシーンのばかばかしいこと。

あまりのばかばかしさにミッキーは我に返る。

 

「俺の悩みなんてなんだ。スクリーンの中の人物のあのバカな仕草を見てみろ。明日がどうなるかなんて誰にも分らない。わからないことに悩むなんて無意味だ。ばかばかしいけど笑って今日を生きよう」

 

悟りにも似たものを得たミッキーは、

ふらりと寄ったレコード屋で前に酷い喧嘩をして別れたハンナの妹のホリーと偶然出会う。

いろいろあってすっかり穏やかになった二人。

前回のデートは酷かったねなんて懐かしそうに話しだす。

ホリーは脚本を書くようになっており、その批評をミッキーに頼みます。

その脚本をミッキーは多少直したいところがあるけど傑作だよと褒める。

そして二人は親密になっていく。

 

ハンナの夫エリオットと三女リーの不倫関係も解消し、

リーは新しい彼を見つけ、

エリオットとハンナの仲も元に戻ります。

 

これらのエピソードが感謝祭の日に始まり、

1年後の感謝祭の日に終わります。

 

その1年後の感謝祭の夜、

ホリーにうしろから近づくミッキ―。

ホリーはミッキーにつぶやきます。

「私、妊娠したみたい」

 

つまり、ミッキーのコンプレックスだった無精子症というのは誤診であり、

あれだけ人生に悩んでいたミッキーに新しい生きる希望が生まれたのです。

 

そして、ミッキーは言います。

「ハートって本当に強い筋肉なんだね」と。

 

何と素晴らしいハッピーエンドでしょう。

いろんなことを考えさせてくれて、

すべてがハートウォーミングな結末を迎える奇跡のような作品。

 

ウディ・アレンはこの素晴らしい作品のエピソードのそれぞれにタイトルをつけて、

チャップリンの短編映画のような運びにしている。

 

この作品はコメディです。

双葉十三郎先生によると、

その意味はアメリカ映画のコメディではなく、フランス語のそれに近いということです。

つまり、悲劇の形をとらない人生のドラマということ。

 

僕の中で、

発想、脚本、音楽、俳優の演技、カメラ、幸せ度、

すべてにおいて満点の作品。

これが、ぼくのお気に入り映画の永遠のBEST1です!。

 

今、舌の腫瘍で精密検査を受けている僕の今の不安な気持ちは、

劇中のミッキーの心情にダブります。

でも、悲観的にならずに元気に生きていこうとこの作品は思わせてくれます。

 

鑑賞後、

「ありがとう」と心から言える作品でした。

 

ということで、

結構長い期間やって来た僕のお気に入り映画BEST200の企画は完結です。

お付き合いありがとうございました。

 

今後、他の作品のレビューをしながら、

この企画のスピンオフのようなこともしていきたいと思いますので、

よろしくお願いいたします。

ありがとうございました!