こんにちは。園庭研究所の石田です。
前記事1〜7では、望ましい園庭環境として文部科学省が示している『幼稚園施設整備指針 園庭計画』で取り上げられている物理的環境15要素について、どのような育ちがあるのかについて先行研究を元にご紹介してきました。→「園庭ではどのような育ちがある?」1, 2, 3, 4, 5, 6, 7
これらからは、園庭の様々な環境が、実に様々な子どもの育ちを支えていることが分かります。(参照:以下の表)
例えば、‘幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿’(文科省、厚労省、内閣府, 2018)のうちの「健康な心と体」に注目してみると、指先等の細やかな動きの「微細運動や感覚」から「ストレス緩和」「食への関心」など、各環境の特性が活かされた様々な育ちが見られます。
また、「園庭」というと「体を動かす」ことに目が向きがちですが、決してそれだけではなく、「自立心」「思考力」「数量や図形」など様々な育ちが存在することが分かります。
ここで、もう一つ興味深い研究をご紹介したいと思います。
『幼稚園施設整備指針 園庭計画』で示されている15の物理的環境の状態について得点化し「園庭(地域)環境多様性指標」として、保育者への質問紙調査について分析を行ったところ、以下が明らかになりました。
(1)戸外環境が子どもにとって「充分」と保育者(園長・理事長含む)が捉える施設は、「充分でない」と捉える施設よりも園庭環境多様性指標の得点が高い。(これは、園庭を有する施設では、園庭の物理的環境について、園庭を有さない施設では地域環境について回答を得たものですが、園庭・地域環境ともに、子どもにとって「充分」と捉える施設はその多様性スコアが高い、という結果となりました。)
(2)園庭での取り組みについての自由記述回答では、園庭環境多様性指標の得点が高い施設ほど、物的環境に関する単語の種類が多く、具体的である。
<参考文献>辻谷真知子他 2017. 「保育・幼児教育施設の園庭に関する調査~子どもの育ちを支える豊かな園庭とは?~」/秋田喜代美他 2017.「 園庭環境の調査検討 : 園庭研究の動向と園庭環境の多様性の検討」(こちらは東京大学CedepHPからのダウンロード頂けます。http://www.cedep.p.u-tokyo.ac.jp//projects_ongoing/entei/)
このように、各物理的環境についての先行研究からも、園庭環境多様性指標についての分析結果からも、園庭・地域ともに多様な物理的環境があることが、子どもにとっての環境として重要であることが示されています。
「遊具があるからいい」「砂場があるからいい」ではなく、多様な環境を取り入れていけると良いですね。^^
写真:スウェーデンUtsikten就学前学校
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【園庭や幼児と自然のについての著書】
園庭を豊かな育ちの場に:質向上のためのヒントと事例
園庭園庭全国調査に基づいて、園庭での保育・教育の質をより高めるための視点や工夫をご紹介しています。面積が小さな園や制約がある園での工夫や、地域活用の工夫もご覧いただけます。
ひかりのくに
森と自然を活用した保育・幼児教育ガイドブック
石田は以下を担当させていただきました。→第1章5「幼稚園施設整備指針と園庭調査を踏まえた屋外環境のあり方と自然」東京大学Cedep園庭調査研究グループ/第1章8「幼稚園教育要領等の5領域に合わせた先行研究」北澤明子, 木戸啓絵, 山口美和, 石田佳織
保育内容 環境 第3版
石田は第6章4節「自然環境と持続可能な社会」を担当させていただきました。