
地上波番組で洋楽ネタを見つけると記事にするこのシリーズ。
今回は、テレビ朝日系「題名のない音楽会」においてジミー・ペイジ特集が組まれた話です。
地上波では5月26日(日)に放送されたそうですが、我が家ではBS朝日で録画し、昨夜、日本がサッカーW杯ブラジル大会出場決定してからゆっくりと観ました。
今回は誌上再録(紙じゃないけど)ということで、僕の感想も含めて話してゆきます。
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番組の司会は指揮者の佐渡裕。
佐渡さんは世界的に忙しいはずなのにこんな(といっては失礼だが)帯番組の司会をする時間があるのかい、といきなり場面にツッコミ(笑)。
僕は、札幌のPMFで佐渡さんのコンサートに行ったことがあります。
ハイドンのあまり有名ではない交響曲(番号を忘れました)、ブラームス交響曲第1番、それにアンコールでブラームス「ハンガリー舞曲」第5番(あの有名な曲)を演奏しました(他にもう1曲あったような)。
クラシックの指揮者がポピュラー音楽を好きかどうか、実は気になるところ。
佐渡さんはどうやら、あまり、ほとんど、聴かないらしい。
レッド・ツェッペリンをずっと"Red Zeppelin"だと思っていたと話していたくらい。
おそらく冗談ではなく本当のことなのだろうけど、かなり驚いた。
というのも、世界的に活躍している人だから、"L"と"R"くらい分かるのではないか、という疑念が浮かんだから。
推測ですが、若い頃にカタカナだけで名前を知り、日本人は"L"も"R"も発音が曖昧だから音としても正しく覚えることなく、世界に出るようになってもポピュラー音楽には興味がないので意識に入ってこなかった、ということなのでしょう。
ゲストは、ローリー、野村義男、佐野史郎、と、洋楽番組ではおなじみの3人。
ギターを持ってWhole Lotta Loveを弾きながら登場。
ローリーは3TSのテレキャスター、野村義男はダークチェリーレッドのレス・ポール、佐野史郎はレモンイエローのテレキャスター、3人揃って短いジャムセッション。
野村義男のレス・ポールは、ジョージ・ハリスンがRevolutionのプロモーションフィルムで演奏していたものと同じタイプであるところにロック愛を感じました。
あ、ビートルズのRevolutionです、僕がビートルズの曲を話す時は「ビートルズの」と書くのをついつい忘れてしまいますので、今後ともよろしくお願いします。
彼らは佐渡さんに、レッド・ツェッペリンは「鉛の飛行船」だと説明していました。
でも僕は10代の最初の頃は、"led"は"lead"の過去分詞で、「導かれた飛行船」だと思っていました。
"Led"は"lead"=鉛、ロックバンドではよくあるスペルを一部変えていることは、少し後に知りました。
前振りとして、「ギターの神様」エリック・クラプトン、「天才」ジェフ・ベックそしてジミー・ペイジの3人を(日本の)ロック界では「3大ギタリスト」という、と紹介。
ああ、またきたか・・・
まあ、音楽はひとりで聴くだけのものではなくコミュニケーションのツールでもあるから、そう言われていることを受け入れて先に進むとしますか。
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3人のレッド・ツェッペリンへのなれそめの話が面白かった。
日本一のツェッペリンファンを自称するローリーは、先輩に洋楽好きがいてキング・クリムゾン、ピンク・フロイドなどなどいろいろとすすめられた中でツェッペリンがいちばん気に入ったという。
最初に聴いたアルバムがPHYSICAL GRAFFITTI、そこで彼はCustard Pieのイントロをギターで弾く、彼はどの曲もすぐに弾けるのがすごいと思う。
In The Lightを聴いて、東洋風のイントロのとろっとした曲ですが、最初はどこがいいか分からなかった。
ところがその頃インフルエンザに罹り、朦朧とした中でその曲を聴いたところ、これがサイケデリックというのかと一瞬にして分かったという。
この話は興味深いですね。
インフルエンザということで、心身ともに健康な状態ではない時に聴くと良さが分かったというのは・・・それ以上は敢えて書かないでおきますが、分かりますよね。
野村義男は、まさに3大ギタリストを聴いてみようということになった。
先ずはエリック・クラプトンを聴くと、いわゆるレイドバック期で、紹介されたアルバムは461でしたが、どうもジジ臭いと。
次にジェフ・ベックのBLOW BY BLOW、間違ってB面から聴いてしまい、冗長な曲でいつまで経っても歌が出てこなくて、これはどうも・・・と。
ジミー・ペイジを聴こうと思ったところ、「ジミー・ペイジ」のレコードが見つからず、少ししてそれがレッド・ツェッペリンのギタリストであると知って漸くたどり着いた。
今では信じられないような笑い話だけど、当時はネット検索なんてないし、レコード店でも「ジミー・ペイジ」の棚はないし、すぐにはレッド・ツェッペリンと結びつかなかったのは納得できます。
そしてツェッペリンは気に入った。
佐野史郎だけリアルタイムで、糸居五郎のラジオでかかった1枚目の1曲目Good Times Bad Timesのイントロを聴いてノックアウトされたという。
彼もここでその曲のイントロを弾く。
1970年代は、かのウッドストックの流れから音楽映画が増え、音楽と映像の結びつきが強くなった時代であり、レッド・ツェッペリンも1976年に『レッド・ツェッペリン狂熱のライヴ』を映画として完成させた。
その年はちょうど佐野史郎が俳優業を始めた年であり、つまりは音楽から映像へと変わる転機だから、ツェッペリンは自分の人生と重ね合わせて見ているという。
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3人のレッド・ツェッペリンの自慢話。
佐野史郎は、自分が持っている1枚目の日本盤LPを披露。
これ、裏か中ジャケットのメンバーの写真が、ジミー・ペイジ以外の3人は名前が間違って入れ替わってしまっているというミスプリントもの。
マニアともいえる野村義男でさえ、存在自体は知っていたけれど実物を見たのは初めてとのこと。
でも、僕は実は、その話は知りませんでした・・・マニアの入り口くらいにZepは大好きだと自称しているのですが、大変お恥ずかしい話。
さすがはリアルタイムで聴いていた人だなあ。
野村義男は、ジミー・ペイジと会って話した思い出話。
数年前、NHKのある番組で、英語でジミー・ペイジに質問するという企画があり収録場所に行くと、ジミー本人はおらず、質問だけ録画して後でジミー・ペイジに見てもらうということで、意気込んでいた彼はがっかり。
数日後にNHKホールで音楽番組の収録があり、野村義男はバックで演奏していたところにジミー・ペイジが登場。
最後に一列に並んだ出演者を彼は後ろから眺めるだけだった。
しかし、終了後、ジミー・ペイジが振り向き、野村義男のほうに歩み寄り、自分から握手を求め、ビデオで質問してくれた人でしょと話しかけ、古いギターはどうしたなど質問にその場で答えてくれたという。
この話にはちょっと感動しました。
ところがローリーはNHKの番組でジミー・ペイジと共演したという。
その場にはマーティ・フリードマンもいた、3人の写真が紹介されていました。
ローリーが持っていたテレキャスターは特別仕様のもので、ストラップのテイル側に金属による部品が取り付けられ、ストラップを動かすと2弦のBの音だけトレモロをかけた状態になるという。
それもジミー・ペイジの発案だけど、僕はそのことも知らなかった・・・どうやらマニアからファンに降格かな(笑)。
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音楽に関する興味深い話を。
野村義男は、ひとりしかギタリストがいない中でいかに多くの音を出してやろうというジミー・ペイジの姿勢がいいと。
開放弦の音を常にどこかに入れ込んで鳴らしているのがみそで、Celebration Dayのイントロを例として弾いていました。
テクニックはもちろんだけど、ジミー・ペイジもやはりアイディアとやる気の人ですね。
ジミー・ペイジは、ステージでギターを構える位置が低いのがもはやトレードマークとなっているけれど、腰より低いのは弾きにくいと話題に。
だからステージでは前かがみになっていることが多いのでは、と。
しかし彼がステージでギターを構える姿は独特で、弾きにくいことを練習で解消したのであれば、やっぱりこの人はすごいプロ根性だなと。
高い位置のほうが弾きやすいという話で興味深かったのが、ローリーが「バタヤン」のような構え方と言ったこと。
バタヤンは先日亡くなられた田端義夫のことですが、映像を見ると「バタヤン」は、頷くとあごがギターに当たりそうなくらいギターを高く胸の前で構える姿が印象的。
「バタヤンのような」という言い回し、日本では結構広まっているのでしょうかね。
僕と弟は、昔から、ギターの位置が高い人を「バタヤンみたい」と表現しているのですが、他の人の口からそれを聞いたのは今回が初めてでした。
フィル・ライノット(ベースですが)、トム・モレロなどは「バタヤン」。
自分でやっても確かに弾きやすいのですが、でも、見た目あまりカッコいいものじゃないのかな。
ジミー・ペイジといえばGibsonのダブルネックギター。
実際に野村義男が持ち出して説明。
佐渡裕は知らなかったらしく興味津々、質問を次々と浴びせていました。
ちなみに上側が12弦、下側が普通の6弦ギター。
ただ、それはあくまでもステージ用で、スタジオ録音では使っていないはずで、事実、後に出てくるStairway To Heavenの解説でギターを何本も重ねたとテロップに書いてあったけれど、ここでのやり取りではスタジオでも使うような曖昧なものだったのがちょっと残念。
ジミー・ペイジは黒魔術の影響を受けていて、Mr. Crowleyことアレイスター・クロウリーの本とともに逸話が紹介されていました。
黒魔術はずっと昔から本を読んで知りたいと思ってはいますが、いまだ果たせず。
佐野史郎は、ジミー・ペイジと伊福部昭の共通点を話していました。
伊福部昭といえばなんといっても『ゴジラ』、北海道出身で、アイヌなど日本古来の音を表した曲を書いている。
一方ジミー・ペイジはケルトなどの影響を強く受けている。
ここでKashmirのイントロを弾き、確かに雰囲気が似ている、と、僕も以前から思っていて、なるほどやっぱりそうだったかとなりました。
どちらも、音楽は西洋も東洋もつながっていることを知らしめてくれた人。
そういえばジミー・ペイジは顔も東洋人っぽくなってきた、「ノッポさん」に似ている、とローリー、ここで笑い、確かに僕もそう思っていた。
ローリーが「ダッドガッド」の話を。
DADGADはギターの変則チューニングで、左から6弦→1弦の弦の音を表したもの、つまりが1弦、2弦、6弦を1音下げるというもので、それがあることは知っていましたが、「ダッドガッド」という言い方は初めて聞きました。
ローリーはさすがにバンドをやっている人で、音楽についての細かい表現のニュアンスがリアルで面白く、僕はバンドをやらない人間だから、その辺の感覚が新鮮でした。
番組内では文字でジミー・ペイジ伝説として幾つかの逸話がテロップで紹介されていました。
その中で興味深かったのは、「天国への階段」を、指揮者のカラヤンが「これ以上編曲に手を加えなくてもオーケストラで演奏できる曲」と評していたという話でした。
カラヤンはさすが広く名の知れた人だけあって、ポピュラー音楽も気にはかけていたのでしょうね。
どうりで、ロックからクラシックに流れた僕にはカラヤンは聴きやすくて分かりやすい人だと。
逸話ではもうひとつ、レッド・ツェッペリンが来日公演をした際に、広島の被爆被災者団体に約700万円を寄付したという話も感動しました。
3人の熱意が伝わったようで、佐渡裕も、番組の終わりにはツェッペリンに興味が湧いてきたらしく、今度音楽を聴けるバーなどに行った際にはレッド・ツェッペリンをリクエストしてみたいと話していました。
まあ、テレビだし多分に社交辞令的な面はあるでしょうけど、そうだとしてもやっぱりうれしいですね。
最後は、Stairway To Heavenをインストゥロメンタルで演奏。
佐渡さんはリコーダーで前半だけ参加。
ローリーは特注テレキャスター、野村義男はGibsonのダブルネック、佐野史郎はアコースティックギター、これがなかなかよかった。
演奏と同時に番組は終わりました。
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マニアからファンに降格になったとしても(笑)、僕はやっぱりレッド・ツェッペリンが大好きだと再確認しました。
純粋にそういう話を聞くのはうれしくて楽しいし、話から話に自分の頭の中でもつながってゆくし、なんといっても音楽が好きだから、断片的にでも次々と流れてくるZepの曲を聴くだけでも楽しくなる。
Misty Mountain Hopなんて曲名がテレビで聞けるなんて、ええまさかほんとか、といった感じ(笑)。
僕のレッド・ツェッペリン自慢、そうですね、自慢するようなものもこともないかな。
しょうがないので、今日の写真は、おそらく持っている方があまりいらっしゃらないと思われるボックスセットを用意しました。
THE COMPLETE STUDIO RECORDINGS、10枚組ボックスセットでもう20年近く前に出たもの。
ディスクはアルバムごとになっているけれど、ブックレットは2枚のアルバムが1冊に収められており、写真は確かにすべて使われてオリジナルに忠実だとしても、アルバムという感じが弱くてありがたみが薄い(ない)かな。
これを買ったのは、当時は未CD化だったImmigrant SongのシングルB面曲のHey Hey What Can I Doが入っていたから。
まあ、曲はB面曲の域を出ていないんですけどね、そのために15000円ほど出したので、やっぱり多少はマニアなのかな(笑)。
もひとつ、多少レアかもしれないものとして、PHYSICAL GRAFFITTIの最初の国内盤CDがあります。
In My Time Of Dyingの曲が終わった後に、「てれれれれ てれれれれ」というギターのお遊びの音が入っていますが、最初の国内盤CDにはその音が入っていません。
マスタリングのミスなのか、意図的なのかは分からないですが、いずれにせよ本来はあるべきものがないのは、やっぱり自慢にはならないですね(笑)。
ちなみに、僕がいちばん好きなZepの曲はThe Rover、ギターリフならHeartbreaker、ベースはRamble On、です。
久しぶりにレッド・ツェッペリンに浸った夜でした。
なんて、レッド・ツェッペリンの話をし出すと止まらなくなるので、今日のところはこの辺で強制終了させていただきます(笑)。