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不死細胞ヒーラ ヘンリエッタ・ラックスの永遠なる人生/レベッカ・スクルート/中里京子

HeLa細胞株の事は多少知ってはいたが、数十年前に黒人女性から採取されたガン細胞が今も世界中で培養され、本人が死亡して何十年も経った現在でも科学や医学の研究に計り知れない恩恵を与えてる、という程度のあいまいな知識しか無かった。

今回、手に取る前に本書に期待した事は、こうした、不死となり無限に増殖する人間の細胞の、培養や特性などにまつわる生物学的な詳細な情報と、この細胞株を用いて成された実験の数々、そしてその輝かしい成果とそれを成した人々について知見を得る事であった。

その意味では、本書はこうした期待にはあまり応えるものではなかった。
なぜなら、本書は不死細胞ヒーラとなった黒人女性、ヘンリエッタ・ラックスその人の物語であったからだ。

人工培地で無限に増殖する、人が初めて手にしたヒト細胞。それは子宮頸ガンに侵された黒人女性から同意無しに採取された。直後に死去した本人はもちろん親族にも何も知らされることなく世界中の研究室で、のべ5千万トンにも及ぶ培養が続けられ、ありとあらゆる医学や科学の研究に実験材料として供され、様々な成果を上げてきた。不死細胞ヒーラの誕生より数十年、今度は一転して、ヒーラとなった女性の素性を実名で発表。ヘンリエッタ本人と親族の、名誉と心の安寧に多大な影響を及ぼしたのである。
ヒーラ細胞を用いて研究を進める事により、細胞株の培養や輸送などの研究が驚くべき進展をみせ、今では誰でもカタログで注文すれば試験管に入ったヒーラ細胞を、安価な料金で手にする事ができる。
一方で、当時から変わらぬ黒人貧困地区に暮らすヘンリエッタの子孫達は、医療保険もなく医者にも満足にかかれない困窮生活を送っている。
こうした状況がどのようにして生まれていったのかをこの本ではじっくりと追いかけてゆく。

この本の主題は、ヒーラ細胞を巡り、登場する4人の女性の人生が交錯する、その有様にある。
科学的な事実でも、医学的な成果でもない。法的な議論、社会学的な分析、歴史的な記述、どれも含んでいるが、それらは本書では脇役に過ぎないのだ。
それは、ヘンリエッタ、ヘンリエッタの次女デボラ、精神疾患で幼少期に死亡したヘンリエッタの長女エルシー、そして著者のレベッカの、それぞれの人生を辿る物語なのである。

自身の欠片が自分の知らないところで自分の死んだ後に世のため人のために貢献する、と言う事の意味。幼い頃に亡くした記憶もおぼろな母が、今も細胞として世界中で貢献しているという誉れと恐怖。
数十年を経て、初めて顕微鏡の下で相見える、生きている「母」。
こうした人達を取材する過程で、ともに真実を見いだす喜び。そして同時に、真実の持つ重荷が当事者にのし掛かり軋みを上げる音を聞く辛さ。そうした事態を自分の取材が招いたという慚愧。

正直、最初は期待はずれと思った事もあり、詰まらなく感じていた。大昔の見ず知らずの黒人女性の人生を知っても仕方ない、それよりも科学や医学の解説が読みたい、と。

しかし、読み進むに連れ、人種差別の色濃く残っていた往時のボルティモアで極貧の中に辛酸を舐め、それでも前向きに自身の人生を生き、若くして没したヘンリエッタとその親族達の物語に引き込まれていった。

終盤、ヘンリエッタの三男ザカリヤのすさんだ心に光が差す逸話では胸が熱くなった。ヘンリエッタはザカリヤ(本名はジョーゼフ)を産んで4ヶ月で亡くなった。彼は母を知らないのだ。彼は荒んだ少年時代を送り、そのまま荒んだ大人になった。怒りをぶちまけ、暴力を振るい、ドラッグや酒に溺れ、ついには殺人で投獄される。出所後も仕事は長続きせず、親族でさえはれ物に触るように持て余していた。もちろんそうして身を持ち崩すような人間は、黒人貧困地区では大して珍しいものではなかった。それでも、ザカリヤの度を超す異常は、胎内にいた頃ちょうどヘンリエッタが癌を患っていた事と関係があるのではと考えるものもいた。
そんな50を超えても相変わらず荒れたままのザカリヤを、著者はデボラと共に取材で訪ねる。取材の最後に、デボラはザカリヤに写真のパネルを手渡す。これは、ジョンズ・ポプキンス大の若い癌研究者がデボラに贈ったものである。彼は彼の心血を注いだ研究を支えるヒーラ細胞の由来を知り、ラックス家に対する謝罪の気持ちをもった。そこで蛍光塗料で細胞の染色体を塗り分けるという彼自身が開発した技法を用いて、ヒーラ細胞を美しく撮影し引き延ばしたパネルを謝罪の言葉と共に贈ったのだった。それを、誰よりも持つ資格があると、デボラはザカリヤに渡す。
「これがおふくろの細胞だって言うのか?」と言ったきり、言葉を失って、幻想的な写真パネルに見入るザカリヤ。彼はそれまでとは打って変わって、緊張が取れ、優しい口調で、ありがとう、と感謝を述べる。

彼は母を求めていたのではないだろうか。辛い境遇は母親の不在だけが招いたものではないし、彼自身の責任もあるだろう。それでも、ただ母がいない、と言うだけならまだ納得できる。そんな境遇は珍しくもない。しかし、世界中の研究者に文字通り身を挺し、世界中で無数の人々の役に立っていると言われている母親が、その一方で、息子である彼自身には何の救いの手も差し伸べてくれないという事実はどう受け止めたらよいのだろうか。そんな満たされない気持ちにはどう折り合いを付けたらよいと言うのか。
そんなザカリヤの持って行き場のない想いが、すっと写真パネルに注がれたように感じたのだ。そこには、死してなお生きるという業の功罪が入り交じっているようだった。

ヒーラ細胞による汚染の話など、知らなかったトピックスもあり、細胞培養の発展の歴史もよく分かる。
結局は読んでよかったな、と思った本であった。

レベッカ・スクルート/中里京子
不死細胞ヒーラ ヘンリエッタ・ラックスの永遠なる人生

絶対平和大作戦 3巻/小椋アカネ

停戦のための偽装婚約をしたメテオラの王子ヨハネとカナンの王女ユーダ。
ツンデレ大作戦は、とうとうデレデレ大作戦になってしまった。

初めはヨハネ様なんて大嫌いと冷えた目をしていたユーダが、何があってもヨハネ様と離れたくないとまで思いこむ。ストレートに気持ちを出す事は性格上苦手なので、相変わらずドキドキとぎこちないすれ違いも多いが、その想いの方向はもう揺るがない。さぞやヨハネも感無量だろう。
バラが舞うような二人が急接近のコマも増えてきた。

が、それと並行して、戦争の悲惨さをも描く。少女誌としてのバランスを崩すようなリアルな視覚表現こそ抑えているものの、内容自体はかなりエグく陰惨である。
また、二人のキズナが深まるにつれ、様々な思惑渦巻く背景の物語がだんだん浮かび上がってくる。
その核となるのはメテオラの王位をめぐる実兄ヨシュアとの確執。そして己の野望のためそれを利用しようと企む者達が虎視眈々と二人を狙う。
ユーダにヨシュアとの和合を諭されたヨハンであったが、陰謀に巻き込まれるユーダを守らんが為、返ってすれ違った兄との距離は広がってしまう。

次巻で完結なのだが、この辺り上手い事大団円に持ってゆくのだろうか。
いずれにせよもう一波乱はあるだろう。

今巻のテーマは、両家への挨拶ということで、代わり番こに両王室へ二人で挨拶にゆく。
しかし、いくら珍しく正装したからって、「今日のヨハネさま まるで王子様みたい なんだもの…!!!」はないだろう。相変わらず王族の雰囲気が皆無の二人だが、まあそこが魅力なのかもね。

絶対平和大作戦の過去エントリ

小椋アカネ
絶対平和大作戦 3巻

カラクリオデット 3巻/鈴木ジュリエッタ

もし、「その年に読んだ漫画」の中でベストを決めるマンガオブザイヤーなるものを個人的に行ったとしたら。
今年はもうオデットの受賞に決めちゃって良いです。

そんな感じの非常にヤバいハマり方である。ちなみに去年は君届で、一昨年はフルバかな。

今巻、ぐっとクローズアップされるのが前巻末より引き続きの「恋愛感情」である。
オデットに恋した1年生の柚木村が、友達のミカちゃんに尻を叩かれながら、果敢にオデットにアタックする。
相変わらず「好き」が分からないオデットは、洋子を真似て消しゴムのおまじないをしてみるが、もちろんそれで恋愛に目覚める訳もない。想い人の名を書けない、無記名のおまじない消しゴムを誰にも見せないよう必死で守るオデットがいじらしい。
しかし、思い詰めた柚木村に消しゴムを取られ見られてしまう。「俺は あなたが 好きなんだ ちゃんと 言ったよね?」「自分のライバルの 名前を知っておく 権利がある!」と真剣な柚木村の眼差しから、オデットは逃げだした。自分の気持ちが分からない不安。「好き」が理解できない。柚木村の言っている事が半分も理解できない悲しさ。真剣な瞳にどう応えたらいいのか。オデットは柚木村を避け始める。

また、オデットは「ごめんなさい」も知る。洋子が1年に告白された事がきっかけだ。好きな人は、ただ一人。それ以外の人には「ごめんなさい」のルール。朝生と共に洋子が「ごめんなさい」する場面をたまたま見てしまったオデットは、そこで、その1年生の落胆と、その裏返しである洋子に対する失望の態度を目撃して衝撃を受ける。

単純な「好き」しか知らないオデットに襲いかかる複雑な心理の荒波。
好きと言ってくれた柚木村は、もしオデットがロボットだと知ったら失望するのか。好きって何なんだ。どう応えたらいいのだろう。

オデットの心理回路はこうした過負荷に耐えかねたのか、異常な速度でバッテリを消費するようになる。
もはや携帯型充電器では追いつかず、オデットはずっしりと重いフル充電器を、鋼鉄製のリュックよろしく背負って通学するハメに。また、同じようなバッテリ問題が発生したクリスは、その繊細さ故か、早々に活動を停止してしまった。

朝生の妹の花梨にアドバイスを受け、なんとか柚木村と仲直りできたオデットだが、バッテリ問題でしょっちゅう朝生に頼るようになった彼女を、苦々しく思うものがいた。柚木村の友人でアドバイザーのミカである。
ミカと買い物に付き合わされた柚木村に、偶然出くわしたオデット。これ幸いとミカが詰め寄る「あなた 黒瀬朝生と どーゆー関係 なの?」。「オデットは 朝生のこと 好きだよ」「柚木村の ことも好き」「皆好き」と、ミカの意図は汲めないオデットは、逆鱗に触れられ飛び出したミカを追い、逆に無意識にミカを追いつめる「ミカは 朝生のこと 好きなんだね」。覚悟を決めたミカは、もし私が柚木村に近づくなと言ったらどうするかとオデットを試すが、理解できないオデットは反応無し。婉曲はやめ、朝生に近づくなとミカが言いかけると、オデットは突然その場を後にする。柚木村との仲直り以来調子の良かったバッテリが、また急速に減り始めたのだ。

柚木村への「好き」と、朝生への「好き」は違う。自身はまだ気づいていないオデットのこの感情をミカは悟る。「アンタ… 可哀想な 奴だよ…」と迎えに来た柚木村に流す涙は、本当は、強力なライバルの出現したミカ自身への憐憫であった。

「好き」が分からないと悩むオデットの心理回路にも、本人の気づかない「好き」の萌芽が進んでいた。
オデットの悩みをよそに岡田との仲を順調に進める洋子はついに週末二人でピクシーランドへデートに漕ぎ着ける。洋子と一緒にピクシーランドへ行きたいオデットに、洋子は引きつつもWデートならと譲歩。何とか朝生を引っ張り出して、ピクシーランドではしゃぐオデットの、その生き生きとした表情はどうだ。この「心理回路の発達で最近表情が人間っぽくなってきたが、あくまで表情の乏しいアンドロイドが、しかし普段に増してはしゃいで楽しんでいる様子」という極めて複雑な状況を、完全に表現しきっている描写力には、本当に感服して心酔した。

とにかく、オデットのアンドロイド臭さが最高なのである。表情、行動、台詞、そしてポーズや構図、どれも素晴らしい筆致だろう。
見えてはいるがピントの合っていない瞳。聞こえてはいるが理解できない言葉。幾重にも制限されるヒトとは異なる体。そして、難しくてさっぱり分からない人の気持ち。

しかし、そうしたオデットのもつ弱みや悩みは、取りも直さず、私たち自身の弱みや悩みである。例え他人とは違っていても、ひたすらに人を信じ、人を求め、人にぶつかってゆく、そんなオデットから目が離せないのは、複雑な社会で他人との関係性に悩む青年期の人間を、このアンドロイドの振る舞いがとても勇気づけてくれるからだろう。

巻頭の迷子猫チロロを探すエピソードも良い。猫を飼い始めたという著者の体験が活かされている。

と言う事で、第4巻にも期待大だが、全6巻と言う事が分かってしまっているこの辛さはどうだ。後3巻しか読めないなんて残念すぎる。

カラクリオデットの過去エントリ


鈴木ジュリエッタ
カラクリオデット 3巻

文明を変えた植物たち コロンブスが遺した種子/酒井伸雄

決して人間の持つポテンシャルを卑下する訳ではないが、ただ、努力すれば叶うとばかりに、自分たちの築いてきた繁栄の成果が、あたかも腕一本で為し得た必然の如く思いこんでしまうのはよろしくないだろう。
人間は弱く儚い生物種である。現在の繁栄があるのは、たまたまそれをお膳立てする環境が整っていたからに過ぎない。そして、自分たちの身の回りを見渡して、当然の如くに感じる見慣れた風景や習慣も、人類の歴史に比してほんのごく最近広まったものである事も多いのだ。

この本では私たちに馴染みの深い植物を取り上げ、その利用の歴史を紐解く事で、現代社会の繁栄がどのような要石によって支えられてきたのかを理解する事ができる。
以前読んだ、サラダ野菜の植物史 という本とも被る点が多いが、こちらの本では、特にコロンブスによって新大陸よりもたらされた6つの植物に焦点を当てている。

それは、ジャガイモ、ゴム、カカオ、トウガラシ、タバコ、トウモロコシ、である。
これらの植物は全て、コロンブスの新大陸到達以後に、旧世界へともたらされたものたちである。

つまり、15世紀末より以前、ヨーロッパを始め、アジア、アフリカなど、南北アメリカ以外にはこれらの植物は存在しなかったのである。もし、この事実を初めて聴いたとしたら、勘の良い人はひっくり返るだろう。

ドイツにも英国にも、フライドポテトはなかった。ベルギーでは誰もチョコレートを作ってなかった。消しゴムの代わりにパンを使っていた。ゴムタイヤではない馬車は振動が激しすぎてスピードを出せなかった。インドのカレーにも韓国のキムチにも唐辛子は入ってなかった。ピーマンもパプリカもなかった。旧世界には一本の紫煙も立っていなかった。トウモロコシを食べる人がいないのはもちろん、飼料がないので、肉食は非常に限られていた。などなど、この辺はぜひ本書の詳細で目から鱗を落として欲しい。

本書では上記6つの植物毎に章を分け、その伝播から社会に根付き利用が促進されその効果が及ぶ様を詳解している。
特にインパクトが強いのは、やはり基本的なエネルギー源となる、ジャガイモとトウモロコシである。

現在の先進国は、もしこの2つの植物がなければ、全く成り立たない砂上の楼閣であったろう。

中世、育ちの悪い麦類に依存していたヨーロッパの栄養事情は悲惨であった。4人に1人は餓死したという。人口も増えず、日々の糧を求める事が生きる事と同義であるような社会では、文化もなかなか発展しない。
それを、新大陸から来た1本のナス科の植物が根底から変えた。原産地と同じような、寒冷で痩せた土地でもよく育ち、麦よりエネルギー効率が高く、栄養、特にビタミンCの含有量と保存性に富んだジャガイモは、その後のヨーロッパ繁栄の基盤を築いた。
これは本書では言及していないが、現在、先進国と呼ばれる国が高緯度地域に集中し、低緯度地域に困窮や紛争が多い遠因には、ジャガイモは熱帯雨林では育ちにくい、という事実が影響しているのではないかと私は考えた。実際、アンデス原産のジャガイモを、北アメリカに伝えたのは新大陸の先住民ではない。目祖アメリカの熱帯雨林がそれを阻んでいるからである。USAのジャガイモは、ヨーロッパ特にアイルランドの移民により持ち込まれたものなのである。

トウモロコシも新大陸から伝わったが、現地でのトルティーヤのような洗練された加工法が伝わらなかったという点は興味深い。その為主食としては定着しなかったが、そのエネルギー効率の高さから、革命的家畜用飼料として普及した。細々と少ない麦をすすっていた人々は、ジャガイモによってたっぷりとエネルギーを得、食べなくて済むようになった雑麦とトウモロコシで家畜を養う事で、初めて、いつでも屠畜して新鮮な肉を手に入れる事ができる環境を手に入れた。それまでは、肉と言えば、繁殖用のつがいを残して晩秋にまとめて屠畜した豚の塩漬けを細々食べるだけだったという。
トウモロコシはエネルギー効率の点では他の作物の追随を許さないが、タンパク質が少ないと言うのは目から鱗であった。とくにリジンが少ないらしい。

つまり、今後100年を見据え、必ず訪れるであろう人口増による食糧危機に備え、高温多湿でも育つジャガイモと、リジンを始めアミノ酸に富んだトウモロコシを遺伝子操作により品種改良する事が、人類の命運を担っていると言っても過言ではないだろう。もちろんこれぐらいの事は誰でも考えるだろうから、既に世界中で研究されているであろうが。
しかし、あくまで食糧供給は対症療法であって、人口減という根治が無い限り焼け石に水である。

他の章も同様に興味深い話が多く、文章も読みやすい。精気溢れる生き生きとした筆致は若い著者かと思わせるが、じつはかなり高齢の著者であり感服した。
しかし、多分著者は愛煙家であろう。タバコの章で、ぐちぐちと喫煙援護を述べている点が玉に瑕であった。


酒井伸雄
文明を変えた植物たち コロンブスが遺した種子

新・光神話 パルテナの鏡:任天堂公式ガイドブック

ゲーム攻略本である。
攻略のための攻略本が欲しいという欲求はないが、データブックは欲しいと思うゲームも多い。
特にSLG系などではユニットの性能一覧を眺めて戦略を練りたいし、やはりこうした膨大なデータを扱うゲームでは情報の精度がプレイを左右する事もあるからだ。
便利な時代になったもので、今ならどんなゲームでも、ネットに攻略サイトができる。実際、私もそうした攻略サイトに情報提供する事もあるし、サイトを立ち上げて攻略情報をまとめたゲームもある。
ただ、やはりPCで見るのは面倒だ。リビングでゲームをしながらその場で情報を見たい時には、紙に印刷して脇に置くしかない。が、もちろんそうしたサイトの情報は印刷用にレイアウトされている訳ではないので、印刷しても見辛い事も多い。場合によっては、一旦ExcelやWordで整形してから印刷する事もあるが面倒である。

パルテナはシューティングだが、武器である個性豊かな神器が9系統108種類もあり、とても覚えきれない。
よって、さくっと攻略本を購入した。やはりゲームをしながらさっと手を伸ばせるのはよいし、布団やソファで寝っ転がって見られるのはメリットだ。
ただし、義弟は、攻略サイトをiPadで閲覧する事で、こうした紙の本と同じような使い勝手を実現しているという。時代は進むね。

本書の内容については、細かい数値データなどは必要としていないので、あまり意識しておらず何とも言えない。ただ、若干見辛いような気はした。ホンキ度システムによる調整のため、まとめにくいゲームだろうなあとは思う。攻略情報は当てにはしていなかったが、宝物庫解放のために意外と重宝する。

パルテナの鏡の過去エントリ

新・光神話 パルテナの鏡:任天堂公式ガイドブック

新・光神話 パルテナの鏡 ミュージックセレクション/任天堂

書くのを忘れていたが、GW直前に届いた。
クラブニンテンドーのプレゼント品である。ソフト登録者は低ポイントで交換という例の仕組みだ。
ここひと月ぐらいの間、ずっと聴いている。

パルテナは非常に忙しいゲームで、本気度システムなど、常にプレイヤーのギリギリを求めてくるような所があるので、正直、プレイ中はあまり音楽を意識できない作りになっている。それは、場面進行に応じて演じられる登場キャラのスキットも同様で、何周かするまでは、今ストーリーどうなってるの?と把握できてない事もあったほどだ。特に難所にさしかかるともはやキャラ会話など聴いている暇など無いし、まして字幕など読む事は不可能。音楽とスキットを楽しむなら、一度本気度ゼロで1周すると良いと思う。

このCDは全曲収録でなくセレクションであるが、めぼしいところは網羅してある。ネタバレになるが、ナチュレHOMEをちゃんと収録している点は、ちゃんと分かっているな、と感心した。

パルテナ楽曲の特徴は、2つある。
一つは、強制進行ステージである空中戦では、完全に場面演出と一体化したオペラや映画音楽のような楽曲になっているという点。
もう一つは、著名な作曲家を多数擁して、パルテナ特有のモチーフを使用した競作という点。これはディレクターの桜井さんの前作、スマブラXでも取られた手法である。
作家の個性を引き出す非常に豪華な手法であるが、逆に言えば、全体の統一感が失われるデメリットもある。プレイが選択ステージ毎に分断する対戦ゲームであるスマブラとは異なり、連戦するシューティングであるパルテナでは、個人的にはこうした手法は若干不向きではないかと思う。
まあ、いずれにせよ細かい点である事に変わりなく、どうでも良いと言えばどうでも良い点である。

収録された全25曲中で好きな曲は、中盤のフレーズが印象的なメインテーマ、同様にアレンジのナチュレHOME、アコギが格好良いブラックピットのテーマ、管楽器が勇ましいマグナのテーマ、ヒーロー物風のギターが良い電光石火の激突、叙情的なアコギの三年後街(犬)、などか。ギター物に良作が多い気がする。

まだ宝物庫を全て開けてないので、ソフトのサウンドテストに全曲は来ていない。
と言う訳で、また宝物庫解放の作業に戻る事にしようか。

絶対可憐チルドレン 1・2巻/椎名高志

この著者は、昔、20年ほど前にサンデーを読んでいた時には4コマなどを連載しており、割合好きだった。
代表作のGS美神も連載で最初の方は読んでいたが、サンデーを買わなくなってからの消息は知らなかった。
特徴ある涙目や描き込んだ濃いめの画風で体を張った主人公のギャグが持ち味だった様な印象。

この作品は、近未来のSF風アクションコメディだろうか。
超能力者が増え大きな力を持つ時代。軍事・外交・経済と、あらゆる場でエスパー達の活躍が国際競争の鍵となっていた。しかし本当に優秀な能力者は貴重なのである。
内務省特務機関超能力支援研究局、通称バベルに所属する、日本屈指の最強能力者は3名。レベル7を誇るエスパー達は、いずれも10歳の少女であった。
このお話は、日本の行く末を背負って立つであろう彼女たち「ザ・チルドレン」を指揮管理する現場運用主任、皆本光一(20)の苦労を偲ぶマンガである。

基本的には、少女キャラ×ポップな超能力アクション×やられキャラの主人公×時々ほろり、という様な感じだろうか。
頻発するエスパー犯罪や、強行派のエスパー排斥団体「普通の人々」とのバトルがメインで話が進む。
ベテランだけあって、それだけでも結構読ませるとは思うが、1巻末で早々と意外なプロットを出してきた。
それは、数年後、エスパーと反エスパーが大規模な争いを繰り返す世界で、ザ・チルドレンと皆本が対決し、ザ・チルドレンのエスパー薫を皆本が射殺する、という強烈なビジョンを皆本が予知能力者に見せられた事だ。これまで外した事のないという予知能力者のこの予言は当たってしまうのか。それとも悪夢の未来は変えられるのか。
そういう事になると、どうなってゆくのか気にならないと言う訳にも行かず、機を見て続きを読んでみようかと。

才ある故の迫害。皆本はエスパーではないが、18才で学位を2つも取った天才である。普通には生きられないチルドレン達が小さな胸に秘めた苦悩を分かち合える。こうしたテーマは割合好きだ。

椎名高志
絶対可憐チルドレン1・2巻

カラクリオデット 2巻/鈴木ジュリエッタ

と言う訳で、いそいそと続きを買ってきて読んだ。

最高に素晴らしい。

月二回の連載で作業量が多いためか、時折、作画のキレが落ちていると感じるような絵も一部ある。
しかしそれを補ってあまりある、匂い立つような魅力は本当に素晴らしいの一言だ。まあ、いわゆるハマったな、という感じだろう。

2巻ではまず、クリスが本格的に登場する。1巻で吉沢博士暗殺のために送りこまれたアンドロイドである。爆弾を抱えたボディを改造し、オデットと一緒に暮らす事になったのだ。
自らの意志が乏しく、好き嫌いの判別もできないクリス。しかしそんなクリスにも大事な物があった。オデット(と博士も)と一緒にいたいという気持ちである。クリスはオデットと一緒に学校に行きたいと願い出る。オデットと関与したい、オデットの関心でいたい、というクリスのささやかな願いが胸を打つ。学校で二人して泣き崩れるシーンはなかなかよい(アンドロイドだから涙は出ないが)。
オデットとクリスのAI同士の会話も非常に味わいがあって素晴らしい。多分感覚一本で描いているのだろうが、機械(アンドロイド)と人間の間に横たわる深い溝の存在を、目を凝らしてもよく見えないが、確かに感覚ではそこにあることが分かる、という絶妙な印象に描いており、非常に素晴らしいバランスだと思う。
クリスを回収しようとする業者から逃げるため、朝生の家へ向かう車中での二人の会話など傑作だ。
お泊まりセットでお気に入りゲームなど荷物をたっぷり持ってきたオデットにクリスが尋ねる。
クリス「オデットは 決めるのが 早いね」「どうやって 選んでるの?」
オデット「簡単だ」「好きな方を 選べばいい」「みんな そうしてる」
ク「…好きな方って どれ?」
オ「クリスの好きなものだ」
ク「僕の好きなものって どうやって 決めるの?」
オ「どうやって 決めるんだ? 博士」

咀嚼するとなかなかに深く味わいのある会話だと思う。

知識とルールベースに富み言語処理系の強いクリスに対し、オデットは映像や色彩の処理が得意だ。
例え味覚は分かったとしても「おいしい」が分からないオデットは、相手の「嬉しい」を「おいしい」に感じることで人の感覚に近づこうと努力する。
「おいしい」に少しでも近づくため、自分で分かる「きれい」を応用して、色とりどりの食材を使い弁当に仕上げる。ご飯に油を塗ってキラキラさせ、イチゴジャムでワインポイント。卵焼きにはフルーツグミを入れ、グリーンピースにはヨーグルト醤油。朝生に人間の食べ物じゃないと突っ返されたオデットは、洋子を呼び出し、おいしい弁当の作り方を教えて欲しいと乞う。
一方ではもちろんギャグでありながら、こうした感覚のズレや強い思いこみといった、明るくゾッとする感覚の表現を盛り込んできたのは素晴らしいと思う。人間に似たアンドロイド特有の「不気味の谷」の表現であるだろう。

そして物語はいよいよ複雑な問題を正面から取り上げる。
恋愛である。
今巻ではオデットに惚れた柚木村という1年が登場し、いきなりオデットに告白する。
朝生の喧嘩のごたごたに巻き込まれたオデットは暇な人質役のさなか、自問するようにつぶやく。
「好きにも 種類があって 洋子は岡田が 好きだけど オデットの言う 好きとは違う 好きなんだって」
洋子に問われて、自分にはそういう好きな人がいない、という事に気づき悩むオデットに柚木は告げるのだ。
「俺は あなたのことが 好きです そういう 好きです」
自分を人間として扱ってくれ、「そういう好き」になってくれる人がいたという驚き。そして喜び。それはもちろん、恋愛感情ではないが、柚木村によって、オデットの心はまた一回り成長を遂げるだろう。
と言う事で、今後の展開から目を離せない。

しかし、相変わらず表情が素晴らしい。オデットはもちろんの事、出番の多い洋子なども幅の広い表現で魅了する。ポーズも構図も多彩で、本当に見飽きない絵だと思う。

キャラも豊かになってきた。主役級はもちろんのこと、多少あざとさの強いガブリエルは抜くとしても、朝生の妹の花梨や、朝生の連れの岩崎など、今後が楽しみなキャラが増えてきた。

カラクリオデットの過去エントリ

鈴木ジュリエッタ
カラクリオデット 2巻

絶対平和大作戦 2巻/小椋アカネ

停戦のための偽装婚約をしたメテオラの王子ヨハネとカナンの王女ユーダ。
ツンデレ大作戦も第二巻に。

ヨハネ様など本当は嫌い!、と思っていたユーダが、そのドキドキは「好き」の裏返しと意識し始め、ゆっくりと自分の気持ちを見つめてゆく。
交換日記や切り抜きのほのぼのエピソードが微笑ましい。
停戦した二国の政情や、婚約、そしてヨハネ王子の存在そのものを疎む輩の暗躍など、背景もこつこつ丁寧に描いており、ストーリーの厚みが増してきた印象。相変わらず王族の匂いというか雰囲気は皆無だが、まあ、その辺は諦めよう。
血を流す事、平和を語る事、人を赦す事、人を愛する事。そうしたテーマの表現にどこまで迫れるか、次巻以降(といっても全4巻なのであと2巻しかないが)楽しみである。

絶対平和大作戦の過去エントリ

小椋アカネ
絶対平和大作戦 2巻

スラムダンク 24巻/井上雄彦

さて、全国大会初戦、大阪は豊玉との激闘も後半戦へ。

安西先生が授ける後半戦の作戦に耳をすます。
「ボールを奪う 走る リングに入れる」…ですと?

つまり、真っ向勝負、豊玉の得意のランニングゲームを受けて立つと言うのだ。相手の土俵で相手をねじ伏せる事ができないようでは、次の山王戦で勝つ事など覚束ない、というのがその心らしい。そりゃ、そうかも知れませんがね、優勝かゼロかじゃなくて、普通は一つでも勝とうとするモノじゃ無いですかね、と読んでいて心配になる。逆に言えば、湘北にはそれだけのポテンシャルがあるという安西先生の自負なのかも知れない。

得意のラン&ガンで、豊玉は水を得た魚のように跳ね、得点差は一気に10点まで広がる。ただ、花道のアリウープおとぼけは流石にどうかなと思うが。
しかし、湘北も食らいつく。チームを引っ張るのはやはり流川だ。目が見えなくても、体が覚えている。速攻のシュートを決め、チームのムードを乗せてゆく。
「何百万本も うってきた シュートだ」流川のつぶやきに反応する花道。対抗心に火のついた花道は、ついに公式戦で合宿シュートを決める。
この1年コンビの活躍で湘北は完全に勢いづいた。ゴリもリョータも周りが見え始め、ミッチーは3Pを決め出す。ついには残り5分で試合を振り出しに戻した。

一方で、苦戦の豊玉。エースキラーの南は、負傷にもかかわらず一歩も引かない流川に完全に呑まれてしまった。ワルに見えても高校生らしいこうした真っ直ぐな描写は好印象だ。
南の不振に苛立つチームメイト、そしてチームの不振に業を煮やした監督と、チームは崩壊寸前。
完全に湘北ペースで突き放されつつある焦りから、南は再度流川にラフプレイを仕掛け、そして自傷した。
それは、自らの迷いに追いつめられた捨て鉢の行為であると同時に、流川の勇気を確認し、また、ある種のケジメ、そして贖罪のための飛翔でもあった。
南の負傷を見てくれたのは、夢にまで追った前監督の北野さんだった。「バスケットは好きか…?」北野前監督の言葉を思い出した豊玉選手は、ゲームに集中し始め、南を筆頭に湘北を猛追する。
しかし、残念ながら、そこまでだった。こうして湘北は初戦突破を成し遂げた。

さて次は高校王者の山王戦なのだが、最強チームには隙をついて食らいつくしないだろうな、と思っていると…。
なんと!山王には隙がなかった。王者の癖に、驕らず湘北を徹底研究し、OB扮する仮想湘北相手にみっちり特訓を行う始末。
元々の実力差に加え、これでは流石に湘北に勝ちの目は無いのでは…。と読者は不安になってますが、安西先生!本当にいけるんですか?!

次巻刮目して待て。

スラムダンクの過去エントリはこちら

井上雄彦
スラムダンク 24巻