(一人レコード・アカデミー賞2020 その6 オペラ部門) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想でなく、別の話題を。

「一人レコード・アカデミー賞」のシリーズである(その記事はこちら)。

本家のレコード・アカデミー賞(こちらのページを参照)とはまた別に、自分一人で勝手に2020年発売の名盤を選んでみようと思う。

 

 

一部門につき5つの名盤を挙げ、そこからさらに一つ選びたい。

今回はオペラ部門。

順序は、発売日の早い順である。

 

 

 

 

 

 

ガーシュウィン:『ポーギーとベス』全曲

デイヴィッド・ロバートソン&メトロポリタン歌劇場、エリック・オーウェンズ、エンジェル・ブルー、他(2019 ステレオ)(3CD)

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ガーシュウィン晩年の大作「ポーギーとベス」は、初演指揮者スモーレンズの他、マゼール、ラトル、マウチェリ、アーノンクールといった指揮者たちが全曲録音を残している。

ブーレーズの弟子であり、アンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督も務めた指揮者ロバートソンによる今回の盤は、快活にして明晰、上のどの盤をも上回ると言っていいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

ヘンデル:『アグリッピーナ』全曲

マクシム・エメリャニチェフ&イル・ポモ・ドーロ、ジョイス・ディドナート、フランコ・ファジョーリ、他(2019 ステレオ)(3CD)

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以前の記事にも書いたが(その記事はこちら)、クルレンツィス率いるムジカエテルナのフォルテピアノ奏者を務め、最近は指揮をメインに活動しているエメリャニチェフによる、ヘンデル初期の傑作「アグリッピーナ」の颯爽たる演奏。

ガーディナー盤やマルゴワール盤、ヤーコプス盤にも勝る強いインパクトを持っている(若きカウンターテナー、オルリンスキの歌唱も魅力)。

 

Agrippina, HWV 6: Sinfonia - YouTube

 

※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。

https://www.youtube.com/watch?v=J3npeavHF1c&list=OLAK5uy_nam9jUfufAImqqIq15_YSAUh3kqOojk0E

 

 

 

 

 

 

チマローザ:『オリンピアーデ』全曲

シモーネ・ペルジーニ&Fête Galante Baroque Orchestre、他

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以前にも書いたイタリアの気鋭の指揮者ペルジーニ(その記事はこちら)により現在進行中のチマローザ録音シリーズの一環。

「ドン・ジョヴァンニ」のシャンパン・アリアに似た序曲からして躍動感に溢れ、曲の浮き立つような気分がひしひしと伝わってくる。

この頃のイタリア・オペラの勢いがモーツァルトにも強い影響を与えたであろうことがよく分かる演奏。

 

L'Olimpiade Act I: Ouverture - YouTube

 

※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。

https://www.youtube.com/watch?v=E_fKr1PKpwU&list=OLAK5uy_k47OIKF8izFMKJOPQqTEkaXWMQ9Nkd2HA

 

 

 

 

 

 

サン=サーンス:歌劇『銀の鈴』全曲

フランソワ=グザヴィエ・ロト&レ・シエクル、エレーヌ・ギュメット、エドガラス・モントヴィダス、他(2017 ステレオ)(2CD)

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以前の記事にも書いたが(その記事はこちら)、サン=サーンスの書いた最初のオペラ「銀の鈴」の記念すべき世界初録音である。

マイアベーアなどの影響を感じさせつつも、すでにサン=サーンスならではのロマンティックな和声感のよく出た、なかなかの佳曲。

カラリと乾いたロトの音運びが小気味よい。

 

Le Timbre d'argent, Acte I: I. Ouverture - YouTube

 

※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。

https://www.youtube.com/watch?v=ffwAhtcHkWc&list=OLAK5uy_mf0maaPxpDH_dR9FUGzs-yAEDHyAwMHhk

 

 

 

 

 

 

ブリテン:『ピーター・グライムズ』全曲

エドワード・ガードナー&ベルゲン・フィル、スチュアート・スケルトン、エリン・ウォール、他(2019 ステレオ)(2SACD)

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以前の記事にも書いたが(その記事はこちら)、名匠ガードナーによる、ブリテンの代表作「ピーター・グライムズ」の全曲録音である。

完成度の高さといい、表現主義の極みともいえる劇的な表現といい、ブリテン自演盤やコリン・デイヴィス新旧盤を凌ぐ最高の名盤。

2021年よりロンドン・フィルとの契約が決まっているガードナーは、ロンドン響のラトルと並ぶイギリスきっての巨匠的存在になっていきそう。

 

Peter Grimes, Op. 33, Prologue: Peter Grimes! Peter Grimes! - YouTube

 

※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。

https://www.youtube.com/watch?v=vDY55QKDvo0&list=OLAK5uy_n_hk-FEpeW7elAchjjd9EvVa_Bp5-Imr4

 

 

 

 

 

その他、リノフ&グラーツ・フィルのマスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」&レオンカヴァッロ「道化師」、ティーレマン&ウィーン国立歌劇場管のR.シュトラウス「影のない女」、アンドルー・デイヴィス&トロント響のマスネ「タイス」、パッパーノ&ローマ聖チェチーリア国立音楽院管のヴェルディ「オテロ」(その記事はこちら)、ラトル&ロンドン響のヤナーチェク「利口な女狐の物語」、ニケ&ミュンヘン放送管のアーン「夢の島」、ヤノフスキ&ドレスデン・フィルのプッチーニ「外套」などが印象に残っているが、最終的には上の5盤を選んだ。

 

 

この5つの中から一つ選ぶとすると、ベルクの「ルル」以後の最大のオペラの一つ「ピーター・グライムズ」において決定的な演奏を実現したガードナーということになろうか。

というわけで、一人レコード・アカデミー賞2020のオペラ部門は、

 

ブリテン:『ピーター・グライムズ』全曲

エドワード・ガードナー&ベルゲン・フィル、スチュアート・スケルトン、エリン・ウォール、他(2019 ステレオ)(2SACD)

NMLApple MusicCD

 

ということにしたい。

 

 

なお、実際のレコード・アカデミー賞2020のオペラ部門は、バルトリ、アントニーニ指揮イル・ジャルディーノ・アルモニコ他による「神の声」(ファリネッリのためのアリア集)であった。

ルツェルン音楽祭で実演を聴く機会があったバルトリは(その記事はこちら)、このアリア集においてもそのとき同様の芸達者ぶりがよく出ている(声自体の魅力はそれなりだが)。

 

 

ちなみに、「一人レコード・アカデミー賞」のこれまでの記事はこちら。

 

その1 交響曲部門

その2 管弦楽曲部門

その3 協奏曲部門

その4 室内楽曲部門

その5 器楽曲部門

 

 


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