(一人レコード・アカデミー賞2020 その3 協奏曲部門) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想でなく、別の話題を。

「一人レコード・アカデミー賞」のシリーズである(その記事はこちら)。

本家のレコード・アカデミー賞(こちらのページを参照)とはまた別に、自分一人で勝手に2020年発売の名盤を選んでみようと思う。

 

 

一部門につき5つの名盤を挙げ、そこからさらに一つ選びたい。

今回は協奏曲部門。

順序は、発売日の早い順である。

 

 

 

 

 

 

J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲第1番、C.P.E.バッハ:チェロ協奏曲イ短調、他

ルカ・グリエルミ、ヨハンネス・ロスタモ、オルフェウス・バロック・ストックホルム

NMLApple MusicCD

 

セリーヌ・フリッシュやクリスティアン・ベズイデンホウトと並んで、40歳代の中堅チェンバロ奏者の代表的存在であるルカ・グリエルミ。

彼が満を持して録音したバッハのチェンバロ協奏曲第1番は、奇をてらうことのない王道のアプローチによる、大変味わい深い演奏。

レオンハルトの新旧の古典的名盤はあるものの、鈴木雅明の録音のまだないこの曲において、現代を代表する名盤と言えるだろう。

併録のC.P.Eバッハのチェロ協奏曲がこれまた鮮烈な演奏。

 

 

 

 

 

 

ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番、第2番

アリーナ・イブラギモヴァ、ヴラディーミル・ユロフスキー&ロシア国立交響楽団

CD

 

以前の記事にも書いたが(その記事はこちら)、ショスタコーヴィチの計り知れない苦悩や峻烈なる闘争に真正面から対峙しそれらを体現した、正攻法の名演。

有名な第1番はオイストラフ、五嶋みどり、ハーンの名盤に並ぶ出来、第1、2番併せた全集録音としては他の追随を許さぬ最上のもの。

特に、第1番の第3楽章後半のカデンツァにみなぎる異様な集中力が聴き物である。

 

 

 

 

 

 

 

メンデルスゾーン、シューマン:ヴァイオリン協奏曲

アリョーナ・バーエワ、ペルシムファンス

Apple Music

 

以前の記事にも書いたが(その記事はこちら)、演奏機会の少ないシューマン晩年の傑作に真摯に取り組み、劇的な表現をしながらも派手な演奏効果は求めず、晩年の作品にふさわしい節度を保った演奏。

イザベル・ファウストほどのこだわりの表現は聴かれないが、丁寧さでは劣ることなく、また音がふくよかで堂々としており、細身の軽やかな音を持つファウストとは別の魅力がある。

なお、初版を用いたメンデルスゾーンの方もなかなか悪くない。

 

Violin Concerto in E Minor, Op. 64: I. Allegro con fuoco - YouTube

 

※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。

https://www.youtube.com/watch?v=-PVSZHknyGM&list=OLAK5uy_lb0nvYvmyEwTLagIWDjJX52NjydFiw1t0

 

 

 

 

 

 

フンメル:ヴァイオリンとピアノのための二重協奏曲、他

ミリヤム・コンツェン、ヘルベルト・シュフ、ラインハルト・ゲーベル&ケルンWDR交響楽団

Apple MusicCD

 

ヴァイオリンとピアノのための二重協奏曲としては、ハイドン、メンデルスゾーンと並んで三大名曲に数えられる(と私が勝手に考えている)、若きフンメルのさわやかな佳曲。

今回のコンツェン、シュフ、ゲーベル&ケルンWDR響盤は、S.ラウテンバッハー、M.ガリンク、A.パウルミュラー&シュトゥットガルト・フィル盤、またH.シャハム、H.シェリー、ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズ盤、この2つの名盤に匹敵するもの。

特にピアノのシュフがうまく、終楽章のタッチの確かさはトップクラス。

 

 

 

 

 

 

 

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲、ロマンス(2曲)

五嶋みどり、ルツェルン祝祭弦楽合奏団

NMLApple MusicCD

 

以前の記事にも書いたが(その記事はこちら)、神童時代ではない、今の彼女だからこその、この曲にふさわしい柔らかな円熟の表現が聴ける。

クライスラー、シゲティ、ハイフェッツ、オイストラフ、ハーン、ベル、フィッシャーと古くから名盤の多いこの曲に、また一つ新たな決定盤が加わったと言えるだろう。

 

Violin Concerto, Op. 61 in D Major: I. Allegro ma non troppo - YouTube

 

※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。

https://www.youtube.com/watch?v=Ao0TdiDs1uo&list=OLAK5uy_m5f5IfZcmUB6MCsTyUVupST8AMXCzq8Wc

 

 

 

 

 

その他、リシャール=アムランの弾くモーツァルトのピアノ協奏曲第22・24番、マツーエフの弾くショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番(その記事はこちら)、アルゲリッチの弾くベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番(その記事はこちら)、コルティの弾くバッハのチェンバロ協奏曲集(上記のグリエルミよりもやんちゃな演奏)、グロメスの弾くシューマンのチェロ協奏曲などが印象に残っているが、最終的には上の5盤を選んだ。

 

 

この5つの中から一つ選ぶとすると、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲において最高の全集を打ち立てたイブラギモヴァということになろうか(彼女は全集録音を好む傾向があり、それが私には大変嬉しい)。

というわけで、一人レコード・アカデミー賞2020の協奏曲部門は、

 

ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番、第2番

アリーナ・イブラギモヴァ、ヴラディーミル・ユロフスキー&ロシア国立交響楽団

CD

 

ということにしたい。

 

 

なお、実際のレコード・アカデミー賞2020の協奏曲部門は、ベザイデンホウト、エラス=カサド指揮フライブルク・バロック・オーケストラによるベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番であった。

録音が多いため耳が肥えてしまい、ちょっとやそっとの演奏では印象に残りにくい曲だが(好きな録音についてはこちら)、このベズイデンホウト盤もなかなか悪くない(大きなインパクトはないにせよ)。

指揮者エラス=カサドは、交響曲部門、管弦楽曲部門、協奏曲部門の三冠である。

 

 

ちなみに、「一人レコード・アカデミー賞」のこれまでの記事はこちら。

 

その1 交響曲部門

その2 管弦楽曲部門

 

 


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