今回は演奏会の感想でなく、別の話題を。
色々あった2020年ももうすぐ終わろうとしている。
今年はコロナ禍で演奏会にもなかなか行けなかったし、演奏会自体も中止や延期が相次いだ。
国際コンクールもほとんど開催されず、予選のネット配信を楽しむことができなかった。
しかし、そんな中でも新譜は良いものが続々と発売された。
というわけで、突然だが「一人レコード・アカデミー賞」というのをやってみたい。
音楽之友社が毎年選定している「レコード・アカデミー賞」、これは30名近い音楽評論家によって選ばれる由緒ある賞で、今年分は先日発表されたが(こちらのページを参照)、それとはまた別に、自分一人で勝手に2020年発売の名盤を選んでみたいと思う。
本家のレコード・アカデミー賞があるのに、なぜ一人で勝手に選ぶのか、と叱られそうだが、本家のほうは国内盤しか選べないという縛りがあるのに対し、私の場合は輸入盤も選べるため選考範囲が広がる、というメリットはある。
ともあれやっていきたい。
一部門につき5つの名盤を挙げ、そこからさらに一つ選びたい。
今回は交響曲部門。
順序は、発売日の早い順である。
リスト:ダンテ交響曲、シラー祭によせる芸術家祝典行進、タッソー
キリル・カラビツ&シュターツカペレ・ワイマール
(NML/Apple Music/CD)
同じ東欧の同世代の指揮者ソヒエフの華やかさとは対照的な、ずっしりと重い音楽性を持つカラビツ。
そんな彼の特質が曲にマッチした、どすの利いた名演。
「ファウスト交響曲」と違ってバーンスタインの録音のない「ダンテ交響曲」においては、当盤が現状最良の出来かもしれない。
Künstlerfestzug zur Schillerfeier, S. 114 - YouTube
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
https://www.youtube.com/watch?v=vlTQ0DqGZpo&list=OLAK5uy_nID7uv2d87sb9-8BxarIVt2KCoaxU_POw
ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』
テオドール・クルレンツィス&ムジカエテルナ
以前の記事にも書いたが(その記事はこちら)、やっぱり彼は期待を裏切らない。
ずっと往年の録音にしか満足できなかったこの曲においてやっと現れた、洗練と情熱とを併せ持つ現代最高の名盤である。
ニールセン:交響曲第1番、第2番『4つの気質』
トーマス・ダウスゴー&シアトル交響楽団
(NML/Apple Music/CD)
ダウスゴー&シアトル響によるニールセン交響曲チクルス第2弾。
お国ものであるためか、またライヴ録音ということもあってか、前回の第3、4番同様かなりの熱演。
今後全集が完成すれば、ブロムシュテットやP.ヤルヴィのそれを超えるものになりそう。
Symphony No. 1 in G Minor, Op. 7, FS 16: I. Allegro orgoglioso (Live) - YouTube
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
https://www.youtube.com/watch?v=upXTuTmRC40&list=OLAK5uy_kBmvPFHu103lqaEkIQUGYdsI6OV2kc3j4
フランツ・シュミット:交響曲全集、『ノートル・ダム』間奏曲
パーヴォ・ヤルヴィ&hr交響楽団(3CD)
(NML/Apple Music/CD)
彼得意の独墺系レパートリーということで、悪かろうはずはない。
有名な交響曲第4番はヴェルザー=メスト盤やK.ペトレンコ盤に勝るとも劣らないし、全集としては現在これに並ぶものはないのではないか。
Schmidt: Symphony No. 1 in E Major - I. Sehr langsam - Sehr lebhaft - YouTube
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
https://www.youtube.com/watch?v=n1KXG0CHlRw&list=OLAK5uy_ni8KeS37rJMI5AA0BFIEezEe0z6N56ehA
マーラー:交響曲第7番『夜の歌』
アレクサンドル・ブロック&リール国立管弦楽団
(NML/Apple Music/CD)
溌剌とした若々しい演奏。
マーラー晩年の様式に足を踏み入れかけたこの曲にしては明るい雰囲気だが、決して勢い任せではなく、楽曲理解も十分に感じられる。
ラトル盤やブーレーズ盤にも迫る出来だと思う。
Symphony No. 7 in E Minor: I. Langsam - YouTube
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
https://www.youtube.com/watch?v=FU3HMvYjLkQ&list=OLAK5uy_n0Sf4svoeqbHI7gzq1cPl_39X42OhAfhM
その他、ソヒエフ&トゥールーズ・キャピトール国立管のショスタコーヴィチ交響曲第8番(その記事はこちら)、ブロムシュテット&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のブラームス交響曲第1番などが印象に残っているが、最終的には上の5盤を選んだ。
この5つの中から一つ選ぶとすると、やはり最も強いオーラを持つクルレンツィスということになろうか。
というわけで、一人レコード・アカデミー賞2020の交響曲部門は、
ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』
テオドール・クルレンツィス&ムジカエテルナ
ということにしたい。
なお、実際のレコード・アカデミー賞2020の交響曲部門は、エラス=カサド&フライブルク・バロック・オーケストラ他によるベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》であった。
これは、今年の全部門を通じての大賞(金賞)をも受賞した盤だが、まぁそこそこの出来かなと私は感じた。
第九にはもっと怒涛のような勢いが欲しい、というのは贅沢だろうか。
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