(クルレンツィスの新譜 ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想でなく、別の話題を。

好きな指揮者、テオドール・クルレンツィスの新譜が今月8日に発売予定となっている。

オーケストラはムジカエテルナ、曲目はベートーヴェンの交響曲第5番「運命」(Apple MusicCD)。

まだ発売前だが、Apple Musicではすでに聴けるため、さっそく聴いてみた。

CDの詳細は以下の通り。

 

 

 

 

 

 

 


ベートーヴェン・イヤーにふさわしい、最高最新の『運命』はこれだ!

今、世界で最も注目を集める指揮者、テオドール・クルレンツィスと、その手兵ムジカエテルナが、ベートーヴェン・イヤーの2020年に放つ問題作にして最高の話題作。クルレンツィスとムジカエテルナのベートーヴェン交響曲チクルスの第一弾は『運命』交響曲!
 2019年の来日公演でのチャイコフスキー・プログラムで日本の聴衆を興奮のるつぼにたたきこんだこのコンビによるベートーヴェン、しかも『運命』と来ては期待せざるを得ないでしょう。もちろん、その期待をはるかに上回る出来になっていることは間違いありません。2020年4月には待望の再来日公演(しかもベートーヴェン・プログラム)も控えており、まさに待望のリリースです。(輸入元情報)

【収録情報】
● ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調 Op.67『運命』


 ムジカエテルナ
 テオドール・クルレンツィス(指揮)

 録音時期:2018年
 録音場所:ウィーン、コンツェルトハウス
 録音方式:ステレオ(デジタル)

 

 

 

 

 

以上、HMVのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。

 

 

ベートーヴェンの交響曲第5番というと、私が好きな演奏は

 

●フルトヴェングラー5種(1926年BPOセッション盤、1937年BPOセッション盤、1939年BPOベルリンライヴ盤、1947年5月27日BPOベルリンライヴ盤、1954年VPOセッション盤)

●トスカニーニ1種(1933年NYPニューヨークライヴ盤)

●カラヤン3種(1962年BPOセッション盤、1976年BPOセッション盤、1982年BPOセッション盤)

●C.クライバー1種(1974年VPOセッション盤)

 

あたりである。

いずれも40~100年ほども昔の、往年の巨匠たちによる録音。

基本的に新しい演奏スタイルを好むことが多い私だが、この曲に関しては、最近の演奏になかなか満足いかなかった。

上記10種の往年の演奏に聴かれるどしっとした重みや凄みと比べると、どうしても軽い印象を受けてしまうのだ。

 

 

しかし、クルレンツィスはやってくれた。

さすがの彼でもこの曲ではどうだろうかと心配していたが、杞憂だった。

才気煥発、切れ味抜群。

あらゆる箇所が、生き生きとした新鮮な表現力に溢れている。

上記10種の名盤に聴かれた重々しさ、悲壮感、ヒロイズムといった「贅肉」を全てそぎ落とした、スリムな演奏。

それでいて、ベートーヴェンにふさわしい力感が全篇に漲り、聴き手を高揚させてくれる(これが最近の多くの「軽い」演奏と最も異なる点)。

 

 

第1楽章冒頭の2つの「ジャジャジャジャーン」は、あのガーディナーでさえその後のメロディよりもわずかに遅めにしているのだが、クルレンツィスは本当に最初からインテンポで突き進む。

これは、楽譜に忠実というアカデミックな正統性があると同時に、強い推進力を得て生気に満ちた音楽表現を生んでいる。

また、第1楽章呈示部/再現部コデッタ(小結尾)や終楽章コーダ(結尾)など、曲想がどんなに激しく盛り上がっても音が団子にならず、木管の細かいパッセージが手に取るように明瞭に聴こえてくる。

ベートーヴェンの書いた一音符たりともおろそかにしないという信念を感じさせる。

 

 

往年のこの曲の概念を一掃するこうした名演を待っていた。

クルレンツィスは、前作のマーラー「悲劇的」(その記事はこちら)や、前々作のチャイコフスキー「悲愴」(その記事はこちら)ももちろん良かったのだけれど、やっぱり今作のようなバロック・古典派音楽、または近・現代音楽がよく合っているように思う。

 

 


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