今回は演奏会の感想でなく、別の話題を。
「一人レコード・アカデミー賞」のシリーズである(その記事はこちら)。
本家のレコード・アカデミー賞(こちらのページを参照)とはまた別に、自分一人で勝手に2020年発売の名盤を選んでみようと思う。
一部門につき5つの名盤を挙げ、そこからさらに一つ選びたい。
今回は室内楽曲部門。
順序は、発売日の早い順である。
シューベルト:八重奏曲
モディリアーニ四重奏団、ザビーネ・マイヤー、他
(NML/Apple Music/CD)
以前の記事にも書いたが(その記事はこちら)、最高度の繊細さとまろやかさとを兼ね備えたザビーネ・マイヤーのクラリネットは、余人の追随を許さぬ至芸である。
特に今回のシューベルトなど独墺系のレパートリーは彼女の独壇場。
まさに「クラリネットの女王」ともいうべき存在である。
『VIENNE 1900~20世紀初頭、ウィーンの室内楽』
樫本大進、エマニュエル・パユ、ポール・メイエ、ズヴィ・プレッサー、エリック・ル・サージュ(2CD)
(NML/Apple Music/CD)
以前の記事にも書いたが(その記事はこちら)、繊細さにおいてザビーネ・マイヤーに唯一比肩しうるクラリネット奏者ポール・メイエによる、ベルクの「クラリネットとピアノのための4つの小品」の名盤である。
その他、「フルートの王者」エマニュエル・パユ、ベルリン・フィルのコンマス樫本大進、フランスを代表するピアニストのエリック・ル・サージュら豪華な面々により繰り広げられる、世紀末ウィーンの饗宴。
Piano Trio, Op. 1: I. Allegro non troppo, con espressione - YouTube
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
https://www.youtube.com/watch?v=j9D3VZF4Md4&list=OLAK5uy_mlu3F7cy1UldiXGBSWP7JMUYC4fM0tr54
フランク:ピアノ五重奏曲(ヴェルビエ音楽祭2014)
マルカンドレ・アムラン、ジョシュア・ベル、パメラ・フランク、今井信子、スティーヴン・イッサーリス
超絶技巧で有名なアムランは、実はフランス風ロマンの持ち主。
アムランの弾くこの曲にはタカーチ四重奏団との旧盤もあるが、今回の新盤はヴェルビエ音楽祭らしい共演者の豪華さが魅力である。
ジョシュア・ベルやスティーヴン・イッサーリス、決してフランス風の味があるわけではないのだが、それでもやっぱり文句なくうまい。
常設団体も良いが、ソリスト一期一会型の室内楽、好きである。
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
https://www.youtube.com/watch?v=88UsPXVYfGE&list=OLAK5uy_liA_HMcGjpfnw_2nPmAkt4-gaMzuXNf8c
ラヴェル:ピアノ三重奏曲、ショーソン:ピアノ四重奏曲
マキャヴェッリ三重奏団、アドリアン・ボワソー
(NML/Apple Music/CD)
以前の記事にも書いたが(その記事はこちら)、気鋭のピアニスト、クレア・フアンチの明瞭なタッチとべたつかないロマン性が大きな魅力。
ヴァイオリンのソレンヌ・パイダッシ、チェロのトリスタン・コルヌもそれぞれ悪くない。
マキャヴェッリ三重奏団と名付けられたこのトリオ、今後の精力的な録音活動が望まれる(特にメンデルスゾーンの第1番をぜひ!)。
Piano Trio in A Minor (1914) : I. Modéré - YouTube
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
https://www.youtube.com/watch?v=244ganHFhLM&list=OLAK5uy_n1tVP-cOGxNmDRycON-z8YnelgNrjYxjc
モーツァルト:弦楽四重奏曲集 第3集
アルミーダ四重奏団
2006年にベルリンで結成されたアルミーダ四重奏団は、最近のカルテットの中では注目しているものの一つ。
ベートーヴェンはハーゲン四重奏団に限ると考えている私だが、モーツァルトについてはこのアルミーダ四重奏団もなかなかのもの。
ハーゲン四重奏団ほどの風格や緻密さはないが、そのぶん自然な歌があり、現代風の洗練や独墺風の味わいにも欠けない。
2021年予定というモーツァルト全集録音の完結が待たれる。
String Quartet No. 14 in G Major, K. 387: I. Allegro vivace assai - YouTube
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
https://www.youtube.com/watch?v=SSS2G43BXTY&list=OLAK5uy_lz22UbhWXjlTCnzUmKdLE_TfkbGmYUiPY
その他、小島燎&務川慧悟のラヴェルのヴァイオリン・ソナタ他(その記事はこちら)、キアロスクーロ四重奏団のハイドン弦楽四重奏曲第3集(その記事はこちら)、Miguel Pérez Iñesta&Mathias Halvorsenのベルクのクラリネット小品他、ウスタリン&グリューステンのブラームスのチェロ・ソナタ(その記事はこちら)、Dariusz Skoraczewski&Michael Sheppardのブラームスのチェロ・ソナタ、務川慧悟&反田恭平のラフマニノフ組曲第2番他(その記事はこちら)、チョ・ジンジョ(Jinjoo Cho)&キム・ヒョンス(Hyun-Soo Kim)のフランクのヴァイオリン・ソナタ他などが印象に残っているが、最終的には上の5盤を選んだ。
この5つの中から一つ選ぶとすると、世紀末ウィーンの空気感を極上の演奏で届けてくれるポール・メイエらということになろうか。
というわけで、一人レコード・アカデミー賞2020の室内楽曲部門は、
『VIENNE 1900~20世紀初頭、ウィーンの室内楽』
樫本大進、エマニュエル・パユ、ポール・メイエ、ズヴィ・プレッサー、エリック・ル・サージュ(2CD)
(NML/Apple Music/CD)
ということにしたい。
なお、実際のレコード・アカデミー賞2020の室内楽曲部門は、鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン団員によるJ.S.バッハ:音楽の捧げ物であった。
これは、輸入盤だと2017年発売であるため私は選ばなかったが、今更言うまでもない名盤である。
ちなみに、「一人レコード・アカデミー賞」のこれまでの記事はこちら。
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