(務川慧悟の新譜 ラヴェル ヴァイオリン・ソナタ ツィガーヌ) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想でなく、別の話題を。

好きなピアニスト、務川慧悟のデビュー盤が出たことはつい先日書いたばかりだが(その記事はこちら)、早くも次の新譜が発売された。

CD本体がどこかで買えるかどうかはよく分からないけれど、少なくともオンラインでは聴くことができる(Apple Music)。

ヴァイオリニスト小島燎との共演で、曲目はラヴェルのヴァイオリン・ソナタ第1、2番、ツィガーヌ、ハバネラ形式の小品、外山雄三の「廣島のうた」である。

さっそく聴いてみた。

 

 

 

(画像はこちらのページよりお借りしました)

 

 

ラヴェルのヴァイオリン・ソナタ(いわゆる第2番)というと、私にとってはフランクやルクーやドビュッシーの名曲を差し置いてでも、「好きなフランス=ベルギー系ヴァイオリン・ソナタ3選」に入れたいほど好きな曲である(ちなみにあと2つはフォーレの第2番とプーランク)。

同曲の録音の中では

 

●イブラギモヴァ(Vn) ティベルギアン(Pf) 2010年11月26-28日セッション盤(CD

 

が圧倒的に素晴らしく、研ぎ澄まされた「軽み」が聴ける(第1楽章コーダでの、柔らかな朝の陽光のような美しさ!)。

今回の盤での小島燎のヴァイオリンは、イブラギモヴァほど細身のすっきりした音ではないが、それでもロシア系の多くのヴァイオリニストたちの分厚い音に比べるとすっきり爽やかな、フランス音楽に合った音である。

音が柔らかな分、シャープで切れ味鋭いイブラギモヴァの音より好む人もいるだろう。

技巧もなかなかのもので、終楽章、無窮動的な音の連なりがあまりに滑らかで継ぎ目を全く感じさせないイブラギモヴァと比べるとやや綻びやささくれがあるけれど、それでもかなり少ないほう。

また、この終楽章、ピアノの務川慧悟もうまい。

第1主題の対旋律の三連符だとか、再現部での第2主題の付点リズムの扱いが、イブラギモヴァ盤におけるティベルギアンは少し甘いのに対し、務川慧悟はシャープで正確。

 

 

次のツィガーヌも大好きな曲で、録音としては

 

●五嶋みどり(Vn) マクドナルド(Pf) 1990年10月21日ニューヨークライヴ盤(Apple MusicCD

 

が最高の名盤だと思う。

今回の小島燎の演奏はやはり爽やかで、この曲でやりがちな濃厚に過ぎる解釈よりもずっと良い。

ただ、少しおとなしすぎる感はある。

五嶋みどり盤のようなラプソディックな妖艶さだとか、コントロールされた雑音性、あるいはコーダでの熱狂的な高まり(まるで「ボレロ」のような)、こういったものが聴かれるとなお良かった。

とはいえ、例えばピッツィカートの箇所では、和音で書かれた音と、一音ずつバラバラに書かれた音とが交互に現れるのだが、こういった音の違いを正確に弾き分けており、芸の細かさは好感が持てる。

同じくピアノの務川慧悟も、グリッサンドの弾き方など勢い任せでなく繊細で好印象。

 

 


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